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目を覚ますとそこは知らないベッドの上だった。すぐ横には少年の母が顔を手で押さえて泣いていた。

「お母さん……?」

「まあ! 起きたのね! 大丈夫、どこか痛いところはない? ちょっと先生、目を覚ましたみたいです! すぐに来てください!」

 少年の母がけたたましく呼びたてると、奥の方から恰幅のよい初老の男性が重い腰を上げたようにやってくる。そんなに大事じゃないですよ、とでも言いたげだが、めんどくさそうにしながらも一つ一つ少年の容態を確認していく。

「まだ少し熱中症の症状が残ってはいますが、安静にしておけばすぐによくなるでしょう。今日のところは家で一日寝かせてあげて、明日まだ体調が悪いようだったらまた来てください」

 医者は淡々と事務的に説明をすると、再び奥の方へと戻っていった。

「よかったわ……」

 医者の話を聞いてようやく落ち着きを取り戻す。すると今度は母の説教の時間が少年を苦しめた。

 一通り説教が終わり、少年の方もボーっとしていた頭が回り始めたところで、少女が同じ部屋にいないことに気づく。

「お母さん、あの子は……?」

「あの子?」

 少年の問いに、母は全く心当たりがないかのように首をかしげる。

「僕と一緒に倒れてた女の子だよ!」

「あぁ、あれね」

 母の目が急に蔑んだようなものに変わった。

「あんなゴミは捨ててきたわよ。汚らしい。あんなのがいなければ……」

 その顔は思い出すのも不愉快だと言わんばかりだった。

「あんなゴミ、砂漠じゃ肥料にもなりゃしない」

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