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「あ、ごめん」

 そんな少女の声で、少年は自分が眠ってしまっていたことに気づく。もう少年の年齢ならまず起きていることはない時間だった。寝てしまうのも無理はない。

 少女はどうやらまた体調が悪いらしかった。いつも白くて弱々しい彼女が一層青白くなっていた。その白さはいつもの透き通った美しい白ではなく、病院の壁のような、人を不安にさせる白さだった。自分の体を支えることもできないようで、少女は度々少年の肩にもたれる。そんな少女の体は心なしか前よりも軽く感じられた。

「寄りかかっててもいいよ?」

 さっきまでは恥ずかしがっていた少年だったが、少女のつらそうな顔を見て優しい声をかける。それを聞くと、少女は無言のまま少年に身を任せて目を瞑った。

 二人は静かに星が流れるのを待った。空には小さな星たちが一面に散りばめられ、まるでケーキに振りかけられた粉砂糖のようだった。どんなに小さな星も自分を主張するように確かに輝いていて、その輝きは強く、けれど淡くて儚い。

「なんかこうやって首を上げてボーっと空を見てると、あの図鑑に載ってたペンギンみたいだ」

 少年がふとそんなことを口にすると、ずっと元気のなかった少女が嬉しそうに目じりを下げて彼の方を向いた。

「砂漠はね、空気が綺麗だから星がよく見えるんだって。ペンギンが住んでる『南極』ってところも、空気が綺麗だから星空も綺麗なの。だからたぶんペンギンも夜はこうやって星空を眺めてるんだと思うよ」

「ペンギンは何をお願いするんだろうね」

 少年がそんなことをつぶやくと、少女はおかしそうに笑った。

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