応用

どうやって個性を出す?

 ここまでお読みになった方は、このような感想をお持ちになるかもしれません。「こんなにガチガチにテンプレートが決まっているなら、どうやって新しいストーリーを作ったらいいのだろう?」

 実際には、世の中には新しい名作はまだまだたくさん生まれているので、作者は何とかして自分の個性を作品に込めているはずです。今回はそれを考察してみましょう。


1. 「面白さ」の組み合わせや発展

 個別の記事でも述べましたが、「面白さ」には組み合わせて一緒に使いやすいものや、発展させやすいものがあります。よくある使い方を下に挙げます。新しい組み合わせを発明できれば、それが個性になるでしょう。


 一緒に使う

  「敵を倒す」と「勝負に勝つ」

  「友達になる」と「取りに行く・会いに行く」

  「和解させる」と「取りに行く・会いに行く」

  など


 発展させる

  「やりすごす」から「敵を倒す」

  「奪い取る」から「パートナーを得る」あるいは「関係を維持する」

  「取り戻す」から「敵を倒す」

  「認めさせる」から「敵を倒す」あるいは「勝負に勝つ」

  「解放する」から「敵を倒す」

  「やりすごす」から「受け入れる」

  など


2. キャラやシチュエーションに独特の因果を組み込む

 物語の「面白さ」は「人に類するものが困難なことをやる」ということです。自明なので書きませんでしたが、成功にしろ、失敗にしろ、困難なことをやったが必ずストーリーの中で語られます。打ち切り漫画ですら、無理やりにでも結果を描きます。何が言いたいかというと、すべての「面白さ」は因果関係だということです。


 キャラやシチュエーションにも因果を組み込むことができます。例えばキャラの属性として、宇宙人であるとか、非力な子供であるとか。シチュエーションなら、現代とは違う時代や社会環境の設定をするとか。このような設定によって特殊な因果を導入します。


 次にキャラやシチュエーションに由来する因果と、選択した「面白さ」に述べられている因果を比べ、キャラやシチュエーションに足りないものや「面白さ」の因果を邪魔しているものがあれば、変化させます。これが葛藤や成長になり、作品の個性になります。


 くれぐれも「面白さ」の方の因果関係を曲げてはいけません。変化するのはキャラやシチュエーションの方です。例えば戦いを恐れる主人公と「敵を倒す」という「面白さ」の組み合わせの場合、主人公が恐れを乗り越えて成長することにより、「敵を倒す」の因果関係に適合させます。これを逆にするとストーリーが破綻する危険性が上がります。(これを計算ずくでやる作家もいます。例えば「敵を倒す」を遂行するのを主人公が諦めて「受け入れる」に移行する、など。ただし「敵を倒す」に割かれた部分が無駄になってしまうなど、かなりリスキーです)


3. 「ルールブレイカー」を導入する

 「面白さ」とキャラやシチュエーションの設定が矛盾し、どうしても解消できない場合、それを無理矢理なんとかするブラックボックスのようなもの、すなわち「ルールブレイカー」を導入することができます。例えば少女が「敵を倒す」という困難を覆すために、魔法少女に変身する力を与える存在を導入する、などです。注意すべきところは可能な限り初期に導入すること。それと一貫性を持たせること。そうしないとご都合主義になります。


●今後の予定

 上記の説明はあまりに抽象的になりすぎてしまいました。ネタバレをできるだけ避けつつ、「面白さ」の組み合わせや発展を解説するのは、やはり難しいようです。次回からはケーススタディとして、一つの作品を取り上げて、その作品がどのように「面白さ」を取り扱っているか、分析していきたいと思います。


●落ち穂拾い

 その他、一つの記事にまとめきれなかった「面白さ」候補を以下に挙げます。


 団結して何かをする。ある組織や友達グループが抱えるさまざまな問題を解決しながら、最後に何かを成功させる、という「面白さ」です。例えば文化祭の出し物とか修学旅行の準備などがあります。日本文化に根差しているものが多いので、おそらくストーリーの面白さではなく共感する面白さなのかもしれません。日常もの作品の最終回付近で多くあります。


 育てる。シミュレーションやRPGなど、ゲームならこの「面白さ」はよくありますが、小説・漫画・映画・アニメならどのようにこれを処理すればよいか、ちょっとパターンを思いつきませんでした。未熟なロボットとの交流ものや「源氏物語」など、これを扱っているものは確かにあるのですが……。


●謝辞&募集 

 ケーススタディでは、一つの作品に焦点を当てて分析してみたいと思います。そこで分析してほしい作品(勝手ながらすぐ手に入る映画作品に限らせていただきます)を募集します。コメントで教えてください。


 最後まで一貫して応援くださった、あきのななぐささん、この作品を続ける励みになりました。ありがとうございます。お礼としてシリーズものを1つ(26話まで)リクエストしていただければ分析します。いつでも構いませんのでぜひどうぞ。

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