友達になる

 文化や価値観が違う相手と交流することです。


●コンセプト


 宇宙人と友達になる(E.T.)


 人種の違う相手と友達になる(縞模様のパジャマの少年)


 罪滅ぼしのために努力する(ごんぎつね)


●ハイ・コンセプト


 兵器ロボットと友達になる(ターミネーター)


●考察

 そもそも友達になるということは比較的困難ではないことではないでしょうか。いえ、もちろん簡単だと言っているのではありません。日本においては一人しか許されない「パートナーを得る」や生死をかけた戦いである「敵を倒す」に比べて困難ではない、ということです。従って「はじめに」で述べた「面白さ」の定義、「人に類するものが困難なことをやる」に沿って考えると、困難さが少ない=「面白く」ない、となってしまいます。それなら困難さを上げればいい、というのがシンプルなアプローチになるでしょう。


 まず、困難な相手を設定する、という方法が考えられます。コンセプトの項目にもいくつか例が挙がっています。地球人と宇宙人、ドイツ人とユダヤ人、人間と動物、人間と兵器ロボット。このように文化や価値観が非常に異なっている相手を設定するのが良いでしょう。他にも男性と女性、金持ちとホームレス、泥棒と探偵など、対義語を探す感じで発想するといいかもしれません。


 相手には二つの要件があります。まず知能の問題です。もちろんI.Q.のことではなく、こちらの「友達になりたい」という気持ちを少なくとも分かってもらえる可能性がある相手でなくてはなりません。不条理SFでもない限り、勉強机と僕の友情、なんていう設定はあり得ないでしょう。


 次に、常識的に友達になることが奨励されている相手ではいけない、ということです。これは「困難な相手」という前提を崩してしまうからです。クラスメイトや愛玩動物などがこれに当たります。ロボットも「ロボット三原則」という設定があらかじめプログラムされていることが多く、人間に危害を加えないことが強制されているため、困難な相手からは外れてしまいます。ただし、追加の設定を導入することによってこれを覆すことはできます。愛玩動物ではなく、凶暴な猛獣だったら。家事ロボットではなく殺人ロボットだったら。その場合は十分可能になるでしょう。


 相手を設定したら、次は友情を阻む困難さを考えます。これは相手の設定から自然に生まれてくることが多いでしょう。例えば第二次大戦中のドイツ人とユダヤ人の友情であれば、自然にナチスの迫害という困難さを思いつきます。E.T.は知的で性格もおとなしく、とくに宇宙人との交流が法律で禁止されているわけでもないので、このままでは困難さが不足しているように思えます。そこで制作者はE.T.と交流する内に思考などが同期してしまう、という嫌悪感をもたらすような設定を追加したのでしょう。ごんぎつねの場合は、自分のいたずらが原因で相手の母親が死んでしまったという罪悪感や人間側の誤解がこれに当たります。


 ストーリーの中の出来事として友達になった、というのではなく、それがストーリーの「面白さ」になるためには、友情を維持したい、あるいは分かってほしいという感情を強調し続けないといけません。この部分は「関係を維持する」と似ています。しかし結末は違います。「関係を維持する」場合は関係の維持に成功する、という結末が多いのですが、「友達になる」は悲劇の割合が顕著に増えてきます。前者は結婚から永遠の愛を誓って死ぬ、という範囲にほぼ収まるの対し、後者は卒業など、友情を維持しながら離ればなれに暮らす、が一番ハッピーで、全くわかり合えずに死ぬとか外的要因に問答無用で殺されるなどのラストも珍しくありません。これはおそらく達成感の違いによるものだと思います。たくさん可能な相手では、たった一人の相手を得る達成感にはかなわない。逆に考えると、たった一人の相手の愛を失うのは耐えがたいが、たくさん可能な相手を失うなら、まだ娯楽として成立するかもしれない。そんな計算が働いているような気もします。


 類似の「面白さ」として「認めさせる」(後述)との違いを考えてみましょう。「認めさせる」は組織の中でのし上がってゆく「面白さ」です。定義上、上下関係と切っても切り離せないのですが、「友達になる」の方は対等になる努力であるというところが大きな違いです。友情を維持したい、分かってほしいという感情に動かされ、両者の違いを乗り越えて、対等になる努力を続けるというのが「友達になる」をメインとしたストーリーの骨子となります。


 「関係を維持する」や「パートナーを得る」が男女間のストーリーに限定されやすいのに対し、多様性のあるコンセプトやテーマを作りやすいのがこの「面白さ」の利点です。また切ないエンディングや鬱エンドが好みの方におすすめです。

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