竜滅魔人 斬龍

未来超人@ブタジル

序章 開戦

 死を厭うが故に不死を望むか?


 永遠を求めるが故に力を求めるか?


 それらの質問に対する回答は一つしか持たない。


 不死も、永遠も人の世には無用。故に滅ぼさねばならぬ。

 この道を宿命とするものこそが、この呪われた物語の主役たる資格を持つ。


 ならば今一度だけ問おうか。

 愚者よ。

 儚い命を持つ者の、一縷の望みを踏みにじり正義を貫く覚悟があるのか?


 「死こそ現世における人の唯一の救い。なればこそ、その願望は砕かれなければならぬ。認めてはならぬ。人の命は一度だからこそ美しいのだから」


                  ◆


 腕から生えた三枚に重なった刃が輝きを取り戻す。これらは悪名高き不死の竜の三本の爪から作り上げた不死の者を殺す為の武器だという。

 ウロコだらけの腕から生えた刃は脈動し、実に艶やかに可動する。

 それからその凶器の持ち主は一歩、また一歩と死にぞこないの化け物の元に詰め寄った。

 月の下に横たわる化け物の姿はひどい有り様だった。胸から腹に切り裂かれ、両腕は無し。脚は右は膝下、左は足首から無くなっている。

 要するにこの上ないほどズタズタに切り裂かれていたというわけだった。

 口をパクパクさせながら化け物は声に為らない呪詛を吐き続けた。


 ズダン!


 柔らかそうな下腹を踵で踏みつける。化け物の耳まで裂けた口が開き血を吐き出した。しかし、化け物の赤い瞳はしっかりと相手を睨みつけている。

 戦う意志だけは奪われまい、と。


 「大の男の死に様が恨み節だらけじゃあ可哀想だと思ったんだがな。まあ、月並みのセリフだがこれも運命だ。悪く思うなよ?」


 ギラり!

 月光を受けて輝く処刑刀。

 その刃は無常を映し、俗塵の無慈悲を謳う。


 「じゃあな、何とか」


 ズドン!

 ごろりごろりと地面を転げまわるそっ首を見ることも無く処刑人は姿を消した。


 これが幕開け。

 これが全ての始まりだった。

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