第23話 馴染めない

私は周囲と馴染めないという性質がある。

子どもの頃、クラスに馴染めないのを心配して精神科へ連れて行ったのは親だった。

そこでアスペルガー障害だと診断されたそうだが、学校側へいうほどでもない、通院で十分だという見解だったという。


たとえば、授業中突然立ち上がり、廊下の壁を蹴りだす女の子がいたとしたらどう思うだろう。

卒業記念の集まりで、親がいる前で「私は親の操り人形ではありません」なんていう子がいたら周囲はどう思うだろう。


そういう、一般常識ではしない行動をしてしまっていたから馴染めなかったかもしれない。


私は中学は不登校だった。

制服が暑いという理由だと個人的には思っているのだが、小さな教室に詰め込まれるのが窮屈だったのかもしれないと今なら思う。

ちなみに給食をひっくり返して怒られたりもした。

そういうことをするたびに返ってきてしまった。

母親には「途中で帰ってくるなら行かなくていい」と怒られた。


高校は昼間定時制だった。

中学で色々あった人たちの集まりでもあったので、私の突飛な行動も馴染んでいた。

正確には、奇異の目がなかったというだけなのかもしれないが。


大学はもっと個性的な人たちがいたのでむしろ霞んだ。

ただ、アルバイトでは泣き喚いたりする場面があったので、不思議そうな目をされることはあった。


社会人になってからは、馴染めないことが続いている。

最初の職場だけは、優しい人たちばかりで、突飛な行動をしたり泣き喚いたりしても、お客様相手でなければ特に何も言われなかった。励まされたりしたこともあった。

しかし仕事をやめて、自分の障害に気づきだして、自分は普通の人が簡単にやっていることも満足にできないんだなという事実を目の当たりにした。


できないんだから仕方がないなんて許されない。

改善する手段もないんだから、結局、周囲に馴染めないというのは私に一生ついてまわることなのだ。


馴染む努力をしてないからじゃないかと言われるかもしれない。

確かにそう思うときもある。

でも馴染むことを頭が体が拒否しているのだ。


自分でも不思議なのだが、馴染もうとすると疲れるし後悔する。

なぜそうなるのか。

周囲と違う存在でいたいからなのかもしれない。

でもそうだとしたら、その考えが私を苦しめている根源のようなものなのだ。


結局、私が普通の人になることはないし、普通の人と馴染むことはないのだろう。

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