777回転生してやっと最強の勇者になれたのに、遊者(ゆうしゃ)のご都合で冒険が全く進みません‼︎

アーリーレッド

第1話 777回の転生にて勇者になったにも関わらず。怒

 俺は、神にこう言ったんだ。


『次、転生する時は勇者にしてください』


 神は優しく頷き、俺に【生】を与えた。


 だが、俺は勇者になれていなかった。


 また神に会った時に


『次こそは勇者にしてほしい』


 神は優しく頷き、俺に【生】を与えた。


 だが、勇者ではなかった。村人の入り口に立っているやつだった。


 俺は魔王の手下にやられ、また神に会えた。


『なあ三度目の正直って言葉があるんだが、次こそは勇者にしてくれ』


 神は(うわ、こいつ覚えてやがるよ)みたいな顔をしながら、俺に【生】

 を与えた。


 ......宿屋だった。


 その宿屋の店主となり寿命で一生を終え、神にまた会えた。


『おい、神よ。いつになったら勇者にしてくれるんだ?』


 神はとても面倒くさそうな顔をした。そして俺に【生】を与えた。


 武器屋だった。


 防具屋だった。


 道具屋だった。


 井戸の中に住んでいる住人だった。


 その記憶はずっと残り続け、神に会うときに何度も言い続けた。


『おい、いい加減にしろよ。俺は勇者になりたいって言ってるだろ』


 神は、一瞬にして俺に【生】を与えた。


 魔法使いだった。


 次は戦士だった。


 その次は僧侶だった。


 武道家だった。


 勇者と旅が出来るパーティーに入ることが出来る職業を何度か繰り返し、魔王を倒しにも行った。


 だが、俺がしたいのは魔王を勇者となって倒しに行きたいんだ。


 すべての記憶が残っている。だから俺は言ったんだ。


『神、わかっているだろうな』


 と。


 その時、大体500回くらいは転生したくらいだと思う。

(神は俺に嫌気が指したのか、何度も遊び人にしてくれやがった)


 まあまあ根に持っていることも気づいてはいるだろう。


 神は俺に【生】を与えようとしたが、俺はそれをキャンセルした。


『おい、神よ。そろそろ腹割って話そうじゃねえかよ』


 神はとても面倒くさそうだった。


『わかっているよな? こっちは全部覚えてるんだよ!』


 神はやっと重い口を開けた。


『どうして覚えとるんじゃ? 人は一度転生すれば記憶がリセットされるはずじゃが』

『どういうわけか、執念深くてね。ありがたいことに。さあ、言い逃れはできねえぞ。俺を勇者にしろ』

『実は......』


 神は言いにくそうに俺にこう言ったんだ。


『勇者になりたい人がたくさんいて順番がまだまだなんじゃよ』

『ほほう。順番がくれば俺も勇者にしてくれるんだな?』


 神は墓穴を掘ったのだろう。俺の勇者への執念に負け、出た言葉が自分の首を絞めることをなるとは


『もう少し待ってはくれないか? そしたら絶対、絶対、勇者にしてやる』


『言ったな。神に誓えよ』

『神に誓う......いや、ワシ神だけど』


 俺はその言葉を聞いて安心して【生】を授かった。

 そして何度も何度も転生をした。神に会うたびに睨みを利かせ、【生】を受け

 、人生を全うして【生】を受け、とうとう俺は777回目にして勇者になることを神の口から吐かせることに成功した。


 神は俺に【生】を与えるときにこう言った。


『勘弁してください』


 と、そして俺は念願の勇者として生まれたのだ。


 アリナイハンという城下町の一般家庭に生まれた俺は物心がついたことにステータスを見ると


【勇者(ゆうしゃ)】と書いてあることを確認する。

 その下に小さく「許してください」と神のコメントが書いてあった。


 まあ777回も転生させやがってという気持ちはあったものの、そのおかげで全てのスキルをマスターしたも同然だった。ある意味長い下積みだ。

 俺は今世の勇者としてふさわしい男になろうと、城下町から出て、レベル上げをすることにした。と言っても今はまだ5歳。レベルも体力も低くスライムさえも倒せないだろう。

 だからこそ、冒険者が弱らせ、一撃で仕留められるだろうスライムを倒し、レベルを上げていった。

 この手は初めだけ大変なだけで、MP(マジックポイント)さえ増えれば魔法使いの時に覚えた魔法が使える。


 俺はレベル3になり炎(ファイヤー)の呪文を一度使えるMPとなり、まあそこからは楽にスライムを倒してレベルを上げた。


 王様に呼ばれるのは16歳の誕生日の日。俺は11年という歳月をひたすらスライムを倒し続け、その時を待った。


 そして......


「セブン、セブン、起きなさい。今日は王様に呼ばれているでしょ?」


 おきまりのセリフで俺の母は起こしてくれる。ここでやっと名前が言える。

 俺の名は【セブン】

 この世界の設定上、4文字しか名前を打ち込むことが出来ないらしい。名前がセブンとは神め、やってくれたな。だが、名前は諦めてやろう。身長185cmの8頭身、細身、イケメン。見た目は何も文句の付けようのないようにしてくれたことに感謝する。俺は今世、勇者としてしか興味がないため、道行く女性全員に見つめられていたのは気づいていたが、そっとしておいた。


 さあ、これから俺の勇者としての冒険の始まりだ!


「あら? 何だか外が騒がしいわね」


 確かに外では笛や太鼓やらの大演奏が聞こえる。


「まあ気にせずに王様に会ってきなさい。滅多に呼ばれるもんじゃないんだから」

「そうするよ。ママ」


 そうさ、俺は神に認めさせた今世の勇者なのだから。

 俺は11年のスライムを倒し続けたおかげでレベルが上限にあと1と迫る98まで上がっていた。もはや最強である。体術、魔法、顔。天は二物を与えず。

 いや、俺に勇者を与えなかった結果、今世では与えすぎる結果になってしまったのだ。


「神よ。俺を勇者にしなかった自分を恨め」


 俺は足早にアリナイハンの王に会いに行くと、王の椅子に座り俺を待ち構えていた。


「おうよく来たな。セブン」

「本日はお呼びいただき光栄でございます」

「そうか」

「本日はどのようなご用件で」

「実は、この世界は悪に染まろうとしておる」


(来た、これだよ。これ)


「魔王も復活したとのことでお主に頼みがある」

「勇者の私に頼みですか? その先の言葉、ずっと前より心待ちにしておりました」

「そうか。では」


 アリナイハンの王は咳払いをし、俺に真剣な眼差しでこう言った。


「我がアリナイハンの王子、ライトをサポートしてほしい」

「かしこまりました。その使命ありがたく......今なんと?」

「だから、アリナイハンの王子のライトのサポートを」

「なぜ? 俺はこの生(せい)では勇者ですよ。分かってますか?」

「分かっておる。だが王子がどうしても勇者になりたいというもんだから、先ほど送り出してしまった」


 ......先ほどの大演奏はそれだったのか!


「おい、ちょっと待て、お前」

「ワシ、王だけど、お前って」

「俺のステータス見るか? 勇者って書いてあるだろ?」


 俺はステータスを表示する。


【名前】  セブン

【称号】  勇者(許してください)

【レベル】  98

【体力】   999

【魔力】   780

【力】    255

【防御】   255

【素早さ】  255

【格好良さ】 イケメン過ぎ


【使える魔法】 

 ほぼ全部


【武器】     銅の剣

【防具】     旅人の服

【盾】      木の盾

【兜】      皮の帽子

【アクセサリー】 勇者の証



 俺は勇者の証を王に見せる。


「俺はこれを握りしめながら生まれてきたんだ。今更、普通に生きろとは言わせないぞ」

「だが、洗礼の儀式をもう......」


 王が何かを言いかけたので、ファイヤーの中級魔法【火炎(フレーム)】を壁に向けて唱えてやった。

 見事に壁は見るも無残なものとなった。


「おい、貴様、今何と?」


 王は俺の般若のような顔を見て自分のやってしまったことを後悔するかのように俺に近づいてきた。


「反省する気になったか?」

「あの、あの、ごめんだけど、もう一度ステータスを開いてもらえますでしょうか?」


 王が敬語で喋っているので、仕方なくステータスを開くと、俺のステータスにマジックで勇者の前に【自】を足した。


【名前】  セブン

【称号】  自勇者(許してください)(ごめんなさい)

【レベル】  98

【体力】   999

【魔力】   780

【力】    255

【防御】   255

【素早さ】  255

【格好良さ】 イケメン過ぎ


【使える魔法】 

 ほぼ全部


【武器】     銅の剣

【防具】     旅人の服

【盾】      木の盾

【兜】      皮の帽子

【アクセサリー】 勇者の証


 しかも! その後ろに(ごめんなさい)も付け加えられているじゃねえか!


「おい、てめえどういうことだこれは」

「もうこれでセブンは......」

「セブンだと?」


 俺は怒りが頂点に達したため、手に炎を王にぶつけるために用意した。


「貴方は勇者ではなく自勇者(じゆうもの)です」

「なんだ自勇者(じゆうもの)って発言によってはどうなるか。分かっているよな?」


 王は怯えているが、それを守らなければいけない兵士たちも怯えて一歩も動けない状態にあった。


「そのごめんなさい。本当に。洗礼の儀式は一度しか行えないんだ。あれは何度死んでも生き返ることのできる特殊な儀式だから」

「それが最後の言葉か?」


 俺は火力を増した。


「だから、その、サポートしてほしい。王子は三人で出て行った。あと一人、メンバーを入れると思う。アリナイの酒場に行けば絶対に迎え入れると思うから。それで、その、勇者と自勇者ということで」

「魔王を倒したその先は?」

「ちゃんと、ちゃんという。国民に言います。実はこの人が勇者だと」

「王は嘘を付かないよな?」

「付かない、付かない」

「......いいだろう。俺もただの住民で終わるのなんてごめんだからな」


 俺が火をしまうと王はホッとした様子。


「だが、一生覚えててやるからな」


 俺は王に睨みを効かせると、王は生きた気がしなかったのだろう。誰もがわかるように体が白く、魂が抜けたように気を失った。

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