祖父の言葉


 コジョウの剣は「海の剣」と言われている。深海魚のある魚の骨を削り作り出したもので、切れ味も良く、軽い。そのため金属でできたものよりも早く振ることができる。モウ家の伝家の宝刀の一つである。故に、目の前の敵の数はあっという間に減った、他人の血しぶきを浴びながら


「ラランのことは今は宝箱の中にしまっておこうか」

と戦いの中彼は静かに考えていた。

リュウリのような迷いはコジョウには全くなかった。キザンの戦闘能力が散色師と野生による本能とすれば、コジョウのものは「命色師の歴史」であり、自分を殺そうとする敵を倒すことは、命色自体を、自分の命また家族を守ることに違いなかった。


 そうして操り人形の弱点を突き、戦いは順調のように思っていたが、自分の体力がなくなり始めると同時に、「雰囲気の違う操り人形」が現れた。

今までの奴らよりとても冷静で、更に表情もない。だからこちらの攻撃が効いているのかがわからない。だが、彼らは「戦い続ける」のだ。それが人間の本能であると言うように。そして体も一回り大きいため力も強い。


「こいつらには弱点がないのか・・・」


頸椎を狙っているが、まったく効かない、しかもその数がじわじわと増えてきている、完全に自分を狙うように。

その時にコジョウは、泉から出てきた淡雪がラランを狙ったのを思い出した。


「命色師に対する、憎悪、一方での救いを求める気持ち・・・・・」


「うわーーーー」「ウウウ!! 」


急所を狙われた他の操り人形は痛みのために、地面をはいつくばっている。薬の切れた中毒患者のように、彼らはもう立ち上がって、戦うことはできない。

しかし、立っている自分の目の前の操り人形は、そんなことなどどうでもよい、いやそのことを考えることすらしていないように見えた。




「戦いでは自分は強いという気を纏うことが一番大事だ、相手がひるむようなものであれば、その一瞬で片が付く、だが、大勢の中ではまた違う」

病床の祖父を訪ねた時に言われた。そして


「操り人形と対峙するときは、いいか、必ず逃げ道の確保をしておくんだぞ。奴らは神の娘と同じで「動ける時間」があるものがほとんどだ」


「ほとんど? そうでないものもいるのですか? 」


「いる、若い頃に会った、そいつからだけは死ぬ気で逃げ回った・・・コジョウ、私に習いに来たのかもしれないが、私以上の人間が側にいるのだから、その人間に習え・・・私は・・・本当にうれしい、お前が優れた命色師となってくれて。だから願いは一つだ」


「何でしょう、おじい様」


「私より先に逝くことだけは・・・止めてくれ。そのために私の覚えている限りの事を今から話すが、いいか、操り人形は進化をする、世代によるものだ。だから次の世代は変わってゆくかもしれない。このことを心と頭に刻め」


その後話を聞いた。愉快な話も沢山してくれて

「気分が良くなった」と言った祖父が、やはり子供の時と同じように大好きだと思った。


「操り人形の弱点は、それを作ったものが自身が「殺されないため」に編み出したものだ、必ず存在はしているはず」自分にそうコジョウが言い聞かせていると

ウオーフォーにに乗ったリュウリがやって来た。


「危ないぞ! 真っただ中に! 」


「頸椎の二個下の骨だ! コジョウ! 」


「そうなのか! 試してみる! 」


リュウリは長い硬い棒を持った。最初に習った格闘技の先生が棒術の名手だったのは、神が与えてくれた幸運だった。


「凄いぞ! リュウリ! 確かだ!! 」コジョウももちろんそこを狙った。


同じ様に彼ら地面を転げまわった。彼らの大きなうめき声があちこちで聞こえ、他の音が明らかにしなくなった。


「中に入るぞ!!! 」

署長がそう大きな声で叫んだが、遠く離れたラランは


「何か・・・石の音がする・・・


いけない!!! 山が崩れる!!! 

皆を退避させて!!! 

此処からも、リーリーさん!みんな 危ない!!! 」


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