第22話 発表終了

「おーい、行くぞ?」


ゆっくりと立ち上がった深川が、気が抜けたように座る大石に呼び掛ける。


「ん~・・・ああ!なんだ?」


「行くぞって言ってるだろ?」


「行く?行くってどこにだよ」


「ベル博士達の所だよ 近くのホテルにいるから是非来て欲しいって言われてたんだよ」


「あーだっけか?」


「やっぱりきれいさっぱり忘れてたか・・・」


「うるせっ!ほら、行くんだろ?」


「・・・先を歩くのはいいが、場所分かってんのか?」


「・・・まず外に出るんだろ?」


「その後は?」


「深川ナビに頼る」


「・・・ったく」


二人は話ながら廊下に出る。


「で、お前話理解できたか?っていうか聞いてたか?」


「聞いてはいたぞ ただ・・・、記憶にございません」


「・・・政治家に向いてるよ」


「まーなーそんな気がしてた」


「ほんとに、政治家に怒られそうだ」


そんな事を話ながら外に出て、人数は減ったものの相変わらず記者が多くいる正面玄関を抜け、左に曲がると、1分かからずホテルのエントランスへと入った。



「で、どこで会うんだ?」


「えーっと・・・、2043号室らしいな」


「ふーん・・・じゃ、任せた」


「・・・分かったよ」


「つーかもう戻ってきてんの?」


「そりゃこんな近いし、発表終わってもう15分くらい経つぞ」


「・・・だっけか?」


「ベル博士達の発表のあとに学会長の話があったろ?もうその間にホテルに行ってたらしい」


「・・・学会長?」


「覚えてないのか?」


「一切覚えがありません」


「そればっかり言ってるなお前」


「これを言ってればいいって習った」


「教育が必要そうだな」


「もーいいよ教育は」


そんなことを言いながら二人はエレベーターで最上階である20階まで上がり、ベル博士達が泊まっている部屋の前まできた。


「お、部屋ここか?」


「・・・だな」


「じゃ、おじゃましまーす!」


そう言うと大石は何のためらいもなくドアを開けた。


「はっ・・・!おい!」


それに気づいた深川が大石を止めようとするが間に合わず、大石は部屋の中に入っていく。


「ったく、ちょっと待て!」


そう言いながら深川も大石についていく。


「おー!すげえ!でけえし豪華!」


思ったことがそのまま口から出ている。


「はは、これはどうも」


苦笑を浮かべながらベル博士が歓迎の言葉を口にする。


「はー・・・すいません、急に」


深川は大石の肩を掴みながら代わりに謝る。


「いえいえ、構いませんよ グラス、紅茶を出して差し上げてくれ」


「はい」


そう言うとグラスはてきぱきと準備をし、すぐにおいしそうな紅茶が出てきた。


「いただきまーす!」


相変わらずすぐに行動する大石に深川が注意している。


こんなに賑やかなスイートルームがあっただろうか。

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