第10話 対策本部④

「技術部からGOが出ました!明日には実験出来るそうです!」


部屋に飛び込み、そう言った男は若干、というかかなり疲れきっていた。


「おお、よくやった!」


部長は立ちあがり、その男の近くへ向かった。


「大分大変だったようだが、大丈夫か?」


「最初総ブーイングでしたよ・・・まあ今でも、しょうがなく、って感じですけど」


「本当によくやってくれた 少し休んでて良いぞ」


「じゃ、お言葉に甘えて」


そう言うと部屋を出て、仮眠室へと向かった。




その後、しばらくは平穏な時が続いた。もっとも、技術部では怒号が飛び交いつづけていたが。


そして、午前0時頃、部屋に技術部の男がゆっくりと入り、「出来ました・・・」と報告を終えるとすぐに出ていった。


そこからはまた忙しくなった。いくつも機材を積み込んだり、専門家を集めたり・・・そんな作業を2時間ほどで終わらせ、すぐに実験へと進んだ。


「実験開始します!」


その声で部屋に緊張が走る。今回の実験では全て事前にプログラムされた通り、最初のワープの0.05秒後に後ろを向いた方の艦がワープを行う予定になっている。中立を保ったことが確認されれば艦内の状況を各種センサー等で確かめ、状況に問題がないと判断されればいよいよ人が投入され、ワープ先の世界の状況確認を行う、という手はずだ。




プログラムを実行する為のボタンが押された。大きな画面には中継映像が送られてきている。


一度目のワープが行われる。その瞬間、二度目のワープが行われる。




中立が、保たれている。




どちらの艦も前半分がワープ先に入り、見えない状態で止まっている。


「中立、確認されました!センサー起動します!」


様々な数値やグラフが表示される。


画面に近いテーブルでは専門家が集まり、その数値を見ながら人が入っても問題ないかを検証している。




専門家の見解がまとめられた。


「恐らく、問題ないでしょう」


その発表を聞き、すぐに


「問題なしとの報告 人員を投入してください」


と、前線部隊に連絡を入れる。ゆっくりと小型艦が近づき、片方の艦とドッキングを行う。そうして、二人の人が入っていく。


人員を投入後、まずは通信を行ってもらうことになっている。


「通信可能艦のリストを送ります」


と報告があり、ファイルを開くと183もの艦の名前が出てきた。


しかし、部長の顔は曇っていた。


「少なすぎる・・・」


確かに、行方不明の艦は10000を越えていた。


「他にはいないか?」


「再読み込みしましたが変わらずです」


「そうか・・・分かった まずは交信を行い、救助できるか確かめてくれ」


そう言って通信を切った。まだ、謎は残っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る