第5話 朝

「ハッハッハッハッ!なんだその格好!おま・・・うおい!」


敬語が使えない奴は、深川の布団を被って寝ている様子を見てこれでもかと笑っている。ついでに言うと写真も撮っている。よほど珍しいことなんだろう。


「・・・・・・うっるせえな・・・別にどんな寝方したっていいだろうが」


大石とはうってかわって、深川はこれでもかとローテンションだ。いや、普段からテンションは低めだが、それを軽々越えるテンションの低さだ。


「いっつも無駄にきれいに寝てるからよ~珍しいこともあるもんだと そして、おれは気付いた」


「なにをだ?」


大石から出た、『気付いた』という言葉に2割の期待と8割の呆れを感じつつ、深川は話の続きを待った。


「お前、怖えんだろ?」


その言葉を聞いた途端、深川はわずかにだが驚きの表情を見せた。


「当たりか!」


大石がニヤリと笑った。


「いや、全然、怖くはない」


「んなこと言ったって無駄だ!お前の顔が図星つってたぞ!正直に吐けえ!」


深川は心の中で舌打ちをした。いや、心の中では大石を殴ってすらいた。


「全く、こういうときだけ無駄に察しがいいやつだよな お前は」


「まあな、おれの数少ない特技ってことだ」


「数少ない、じゃなく唯一の、じゃないのか?」


「ああ?全くこいつは口が減らねえなあ」


「お前に言われるのだけは納得できない」


「うるせえわ!」


すっかり深川も軽口を叩くことが出来るテンションにまでになり、終わりの知れない軽口の言い合いが続く。


大石の腹が鳴り、二人は笑いあった。それから携帯食料をそれぞれ食べ、また笑い話を続けた。


昨日の暗い雰囲気はどこへやら、今日はすっかり明るい雰囲気へとなっている。


〈ベル様から通常外線を受信しました〉


アナウンスが急に流れる。二人は一瞬身構えたが、すぐに緊張を解いた。そしてタッチパネルを操作し、通話を許可した。


「どうも、おはようございます」


「おはようございます」


ベルの挨拶に続き、深川が挨拶する。ちなみに大石はしばらく黙っていることにしたようだ。もっとも、余計なことを言うと大石だけが混乱するので非常に賢明な判断になる。


「何か、ありましたか?」


深川が聞いた。枕ことばのようなものなので特に意味も込めずに聞いたが、ベルからは興奮したような声で、


「ええ!ありました!あなた方の他にもニ艦同じようにこの世界に巻き込まれた艦を発見しました!」


「他に・・・ですか!?」


珍しく深川が声を上ずらせた。今日は珍しいことが起きる日だろうか、と大石が考え、うっすらと笑いを浮かべる。


ベルによるとそのニ艦はどちらも大石や深川、ベルとウェストが乗っている艦と同じく小型艦だということだそうだ。


「なんか関連あんのかね~」


大石が寝っころがり、なかなかページの進まない本を見上げながら呟いた。


「そこまでは分かりませんがね そもそも小型艦の割合が7割を越えてますし」


「ふーむ・・・謎しかねえ なんも見えんし なにしてりゃいいんだ」


「まずお前はその本を読み終わったらどうだ?買って何ヵ月たつ?」


「まだ2ヶ月だ!」


「よくそこで『まだ』って言えるな」


二人の話はまだまだ続く。この二人にとって本当に暇になるのは、いつになるのか。

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