ぬくみをさらうそよ風のような寓話

 SFにしては童話的で、しかし童話のあたたかさではなく哀愁が漂う作品ですね。
 ほろんだ世界の片隅をアンドロイドの少年がさ迷い歩くという、ただそれだけの話です。だから単調で退屈であってもおかしくないのですが、物悲しい空気が淡々とした行動と物思いから漂い、詩情を作品に添えて退屈にさせません。博士や少年の思いや行動を様々な角度から解釈できるのもいいですね。
 じっくりと作品の世界と文を味わう大人の童話。そんな作品だと思います。

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