記録

「タイトー! フミオに勝てー! ついでに100勝決めろー!」


 あの観客が叫ぶ。


「ダブル記録やっちまえー!」


 他の観客も叫ぶ。心なしか、フミオコールよりもタイトコールの方が多い気がする。タイトはますます緊張するが、ユーリカが察して声をかける。


『タイト、大丈夫だよ~、リラックス~』

「お、おう!」

『もっとリラックス~』

「リラックス、リラックス……」


 深呼吸ひとつ。タイトの背筋が伸びる。


 試合開始。タイトはまず単体攻撃の呪文を詠唱する。そしてケイタにめがけて放つ。そこに、フミオからの攻撃魔法が来ていたが、


『左に避けるよ~』


 とユーリカが言う。慌てて重心を左に移動するタイト。案の定、フミオはユーリカが右に避けると思い込んでいたようで、攻撃魔法はタイトの頬をかすめただけだった。


「「「タイト! タイト!」」」


 場内が一斉にタイトへの声援に包まれる。


「ユーリカ! 避けるのは任せた! 攻撃を続ける!」

『わかったぁ~』


 右に左にとフミオの攻撃をかわしながら、長い長い呪文の詠唱をするタイト。タイトが知っている、最強の攻撃魔法だ。詠唱に時間がかかりすぎるので実戦で使うのは初めてで、タイトは冷や汗をかきながら詠唱を続ける。その間もユーリカはうまくフミオの攻撃を避け続ける。


「「「タイトー!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」


 観客席からの声と同時に魔法が発動した。

 そして……フミオは、ベルモントルビーもろとも倒れた。

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