第13話:早すぎる再会

「ふう……」

「お疲れ様です、レオン様」

「ありがとう、ミリィ」


 ミリィが紅茶を入れてくれたので、口をつける。

 いい香りが鼻腔をくすぐるのが心地よ良い。


 今日は色々予定外の事が多く、どうも気疲れをしたようだ。

 ガインからもからかわれるし……

 ああ、そのガインはすでに別の離れに移動した。

 一応護衛という立場なので、ここにはいないのだ。


「なんかぁ、お疲れねぇ?」

「やあ、ノエリアさん。良かったら、一緒にお茶でもどう?」

「あらぁ、殿下のお誘いなら参加しないとぉ」


 ノエリアさんはうちの客人なので、この公宮内にいる。

 お茶に誘うと、嬉しそうに参加してくれた。


 しばらくして、ミリィがノエリアさんの分の紅茶と、お茶請けのドライフルーツを持ってきてくれた。


「そうそう。今日西通りの方に行ってね、いろいろ屋台にも行ったんだ」

「あらぁ、面白そうねぇ」

「珍しいところに行きますね、レオン様」


 普通、貴族や王族が西通りに行くのはやはり珍しいようだ。

 といっても、俺の中身は庶民的なものだからな……


 屋台で見かけた串焼きや「ドーナツ」の話をする。

 ドーナツについては流石女性陣。食いついてきた。

 結局「今度食べに行こう」と俺が言うまで、味や香り、果ては材料まで聞かれる羽目になったのだ。

 そんなことは店主にでも聞いてほしい。


 そして、その後に出くわした状況や、会った人たちについても話す。


「いやー、同じ年くらいだと思うけど強かった。短剣術だが、一撃離脱を得意としていたよ。しかし、どこの子だろう? 雰囲気としては多分貴族……それも上級だと思うけど」

「へー、そんな子がいたんですね。でもそれならいずれ会えるんじゃ?」


 確かに十歳になると、貴族家の子供たちは集められてお披露目会に参加する。

 これは基本的に強制であり、王国が主催するイベントなので、まずここで来れないのはよほど病弱か、世離れした貴族かだ。

 そして、その時期は社交界のシーズンと重なるため、同い年でなくてもパーティーとかお茶会に呼ばれて会う可能性は高い。

 上級貴族になればなるほど、呼ばれる確率も呼ぶ確率も高くなる。

 イシュタリア公家であるうちなどはなおのこと。


「確かにそうだね。まあ、しばらく王都にもいるし、今度は東通りで会おうって言っていたからな」

「あらぁ、デートのお約束ぅ? 妬けちゃうわぁ」


 いえいえ、デート違いますから!

 もちろん下心ないと言ったら嘘ですけど。


「でも、一日二日で会えるわけないですからね。それに魔導具の材料も結局買えてないし……」

「あらぁ、それはぁ残念ねぇ」


 そんな他愛ない話をしながら夕方以降の時間を過ごす。

 しばらくすると、兄も姉も帰ってきた。


「やあレオン。街はどうだった?」

「レオン、アンタ結局来なかったわね。今度は参加しなさいよ。それで?」

「実は――」


 兄や姉にも、今日の話をする。


「……アンタ、相変わらずトラブル体質ね」

「……正直、なんで弟の方がが剣を振るうことが多いのかな。しかも実戦で」

「……まったくの偶然です、って言えない感じですね」


 自分でも思う。

 まったく大人しくない五歳だなと。

 といっても、別に自分から飛び込んでいるわけではないんだが……


「しかし、ブロンドに青の瞳か……大体噂になりそうだけど」

「そうねぇ……それがアンタの空想の女の子じゃなきゃね」


 ハリー兄は記憶を辿りながら、該当する貴族の子を探しているようだ。

 セルティ姉は……酷いと思う。人を妄想癖があるみたいに言わないでほしい。


「本当に貴族なのかな? 大商人の娘とかは?」

「うーん……でも彼女、護衛の笛の意味を分かっていたんですよね……」


 いくら大商人でも、あの笛については知らない。

 何となくは知っていても、正確な意味や用途なんて知らないはずなのだ。


「うーん……意外と親族とかだったりしてね。ははは」

「親族って……王族ってことですか? まさかあんなところに姫がいるわけないじゃないですか」

「「ははははっ!!」」


 この時俺は知らなかった。

 その瞬間に、盛大にフラグを立てていて、もうすぐ回収することになるということを。



 =*= =*= =*=


 翌日。


「……いくら何でも早すぎませんか? 父上」

「そうは言ってもな……」


 馬車を前にして、二人してため息をつく。

 予想外の展開というのは、どうも続くらしい。

 何となくこれから待ち受ける出来事に、楽しみでも不安でもなく、ただ、疲れを感じてしまう二人であった。


 * * *


 さて、これは約1時間前に遡る。

 俺は朝早くミリィに叩き起こされ、というかミリィも同じだったと思われるが、とにかく急いで正装に着替えるよう言われた。

 流石に寝起きでは体もうまく動かず。

 慣れない正装のため、ボタンは掛け違えるわ、スラックスは前後ろだわ、結局普段の2倍の時間をかけて着替えることになった。

 着替えたのは緑の詰襟でユサールのような金色のモールで装飾が施された長めの上着。その上から太目の金バックルの革ベルトを着け、赤いサッシュを肩から斜め掛けにする。

 スラックスは白で、黒いブーツを着用している。

 腰のベルトにはいつも通りミスリルの細剣を差しておく。


 部屋から出て、下に降りてみるとすでに父が正装をして立っていた。

 昨日より明るめの正装になっている。


「起きたか。実は宮殿から召喚命令が出た。早急に来るようにとの仰せだ」

「……父上だけ行かれては?」


 はっきり言って眠いのだ。

 父が出かけるからと言って、なぜ俺が起こされなければいけないのか。

 正装に着替えさせられたのは仕方ないが、どうも口調に不満が出てしまう。


「何を言っているんだ。これはお前への召喚命令だ、レオン」

「……は?」


 王城へ上がるには、基本的に宮殿の許可が必要である。

 たとえ召喚であっても、実際に呼ばれるには日数が必要なのだ。

 いくら公家公爵の家族でも、当主以外は数日かかる。

 下級貴族になれば、それこそ1週間とか必要なのだ。


 それが、昨日着いての今日だと?

 いくら何でも早すぎやしないか?


 段々眠気がとれてきたのか、状況のおかしさと叩き起こされた理由を把握できるようになった。

 しかし、朝食も摂っていないのに……


「とにかく二人で行くぞ。近いとはいえ、遅れるわけにはいかんのだからな」

「……ええ、そうですね」


 そう言って馬車に乗り込む。

 しかし、俺の召喚命令である以上、他の家族は連れて行かないということか。

 ミリィも王城に上がるわけにはいかないからな。


 

 しばらく馬車で移動し、王城内の中心の建物に近づく。

 これがイシュタリアの中枢、宮殿であるのだ。

 ここに国王の一家が住んでおり、ほかにも多くの官僚たちが国のために働いている。


 王城正面の扉に差し掛かると、馬車はさらにスピードを落とし、ゆっくりと近づいてゆく。

 横についている護衛騎士たちも足並みを緩めて、近づいてゆく。


 すでに宮殿の近衛騎士たちが並ぶ中、馬車が停車する。

 すぐに護衛騎士であるガインが扉を開いてくれた。


「さあ、到着いたしました殿下」

「ああ」


 先に俺が降りようとしたら、父から阻まれてしまった。


「レオン、今回は俺は付き添いでしかない。お前が主役だから後に降りるんだ」

「は、はい」


 なんか父が先に降りるというのは変な感じだ。

 だが、父がそう言うのであれば、そういうものなのだろう。


 並ぶ近衛騎士の中を歩きながら、宮殿に入っていく。

 この段階で、父以外にはガインと、数人の近衛騎士だけが付き添いである。


 中に入ると、公宮以上に豪華で、美しく、格式の高い調度品や建築様式が目に入る。

 絨毯一つに至るまで高級で、汚れすらないように綺麗にされているのだ。


「(うーん、なんか場違い感……)」


 珍しく自分でも緊張しているのがわかる。

 父もそれに気づいたのか、優しく肩に手を置いてくれた。


「さあ、行こう。お前の叔父上が待っているぞ」

「……はは、叔父上ですか。確かにそうですけどね……」


 間違ってはいない。間違ってはいないのだが、こればかりは仕方ないだろう。

 玄関ホールから2階に上がり進んでいくと、ほかの部屋とは明らかに異なる大きな扉が見える。

 多分あれは謁見の間への扉だな。


 と思っていたら、その前に通路で曲がり、別の部屋の前で止まった。

 ここの扉も高級感がある。表面に書かれているのは竜だろうか。

 王冠を被ってはいないが、左右向かい合う双竜が浮き彫りにされている。


「さあ、ここだ。『双竜の間』と言って、王族のみの接見に用いられる」


 父がそう言うと、近衛騎士が扉に近づきノックする。


「ライプニッツ公爵殿下、ならびに第二公子殿下がお見えです」

『——通せ』


 中から返事が聞こえる。

 それに合わせて、近衛騎士が扉に手を掛け開いてくれた。


「どうぞ」

「ありがとうございます」


 そうして俺は双竜の間に立ち入る。

 父が入るとすぐに扉は重厚な音を立てて閉じた。


 双竜の間。

 それは何か豪華な壁画や天井画が書かれている部屋ではなかった。

 明らかに豪華だと思うのは、天井から下がるランプのみ。

 後は、中央に綺麗に磨かれた木製のテーブルと、それぞれの辺に幅広のソファーが置かれていて、壁面に飾られる数枚の絵画が部屋の格を保たせるくらいである。

 壁際には棚もなく、唯一暖炉と、隣の部屋に通じる扉があるくらいだ。


 とはいえ、テーブルも、ソファーも、どれもが優れた工芸品であり、所謂一品物とされるような高級品であるのだ。

 そして何よりも、その正面のソファーに座る人物。

 この部屋の主。

 その存在が問題である。


「やあ、やっと来てくれたかジークフリード公。そして……初めましてだな、レオンハルト」

「遅くなり申し訳ございません——ウィルヘルム陛下」


 そう言って父が頭を垂れる。

 だが俺は、予想はしていた相手が間違いないということを父の言葉から理解できたため、跪き頭を垂れた。


「さて、ここは個人的な場所だから普段通りで構わない。レオンハルトも。さあ、掛けてくれ」

「ああ、そうさせてもらうよウィル。さ、レオンもおいで」


 一瞬で口調が変わった父に促され、立ち上がりソファーに座る。

 しかし、まさか名前を呼び捨てにするとは……


「さて、改めてだな。第45代……なんて面倒な肩書きは放置だ。私はウィルヘルム・アダマス・カッセル・イシュタリア。君の叔父だ。ついでに国王もしている」

「ライプニッツ公爵家第二公子、レオンハルト・フォン・ライプニッツです。陛下にお目通り適いましたこと、光栄に存じます」


 初めて会う親族。

 赤みがかったブロンドの髪にグレーの瞳。

 座っているから正確には分からないが、背も高く、体系も引き締まっている。

 年齢は父と同じくらいだ。


 これがこのイシュタリアのトップ、第45代国王。

 賢君としても知られ、かつ武芸にも優れることで有名だ。

 先代国王の時代には、騎士団を率いて魔物の討伐や帝国との小競り合いでも多くの戦功を挙げたのだ。


「(この人が……俺の叔父上なのか……)」


 ぱっと見イケメンのアラサーという雰囲気だが、眼の奥にある意思の強さは、彼が大きなものを背負っている特別な存在であることを伝えてくる。


「ははっ、そんなに固くなるなレオン。それに私のことは『ウィル叔父様』と呼んでくれればいいからな」

「は、はあ……」


 なんという気さくさ。

 いや、普段はこうではないのかもしれないが。

 わざわざこういう態度や雰囲気を見せるとは、何か目的があるのだろうか。

 そう思いながら、陛下——ウィル叔父上に視線を向ける。


「おや、警戒されたかな……」

「ウィル、レオンは年齢以上の思考力や計算力を持っている。だから勘ぐられるんだよ」

「あ、いえ……失礼しました」


 流石にそこまで警戒したわけではないので、頭を下げる。


「では、今後公的な場所以外では叔父として呼んでくれるね?」

「はい、ウィル叔父様」

「うむ!」


 俺が「ウィル叔父様」と呼ぶと嬉しそうである。

 そんな事を話していたら、思わずお腹が鳴った。

 ……朝食食べてないものな。


「おや、朝食はまだだったのか、ジーク?」

「ウィル、時間も伝えずに呼ぶから急いだんだぞ。食べる暇なんてあるものか」


 父が叔父上に対してなんとも気安く……というか少し責めるような口調で話す。

 しかし、成る程時間指定が無かったからあんなに急いだのか。


「あー、それは済まなかったな……道理で早いと思ったんだ。そうだ、一緒に朝食にしないか?」

「流石にそれは問題だろう。いくら親族とはいえ、王家のプライベートにいきなり入るというのは……」


 基本的に、王家にとってのプライベートな時間というのはほぼ無い。

 あるとすれば、朝早くか、夜の時間帯のみだ。

 その中でも、確実に王家が揃って食事が出来るのが朝食の時間のみである。

 そのような時間に、まだ公式にお披露目などされていない俺を同席させるというのは問題だろうな。いくら親族といえども。


「そうか……折角家族が揃った状態だから、紹介にも良いかと思ったんだが」

「ウィル……いくら何でも型破りではないか? まずは正式に迎える必要があるだろう。それにまだ例の件を何も話していないじゃないか」


 そう言って、父が窘める。

 父が言う例の件というのは、この前の道具ギルドとの件だろう。

 本来その件を、今日話すつもりだったのではなかったか。

 ここは申し訳ないが、叔父上には我慢していただこう――


「……そういいつつ、お前は結局家族での時間が欲しいんだろう? なあ、ジーク」

「……なんだって?」

「別に正式に迎えていようがいまいが、親族であることは確かだし、大体レオンは次男とはいえ嫡子だろう? それなら立場だって何も問題ないではないか。お前もよく知っているだろう?」


 ん? どういうことだ?

 父が渋っているのは、別に常識とかではなくて、家族で朝食をとりたくて、それなのに俺がいないというのが嫌だからということか?


「そ、それは……そうだがな、ウィル?」

「大体、例の件を聞くにしたってここで話すことになるんだから、早くから宮殿にいて問題ないだろうに」

「ぐ、ぐむぅ……だが、子供で……」

「お前な、安全とかの問題って言うんじゃないだろうな。『じゃあ誰が例の件で相手を倒したんだ?』という話になるし、新しい情報も上がっているしな……」

「むぅ……已むを得んな。……レオン、ウィルのところで食べてきなさい」

「は、はい。分かりました。……ご相伴に預かります、叔父様」


 そのようなわけで、俺は宮殿内で叔父上の家族……つまりは王家と共に朝食を摂ることになったのだった。


 * * *


 うーむ、気まずい……

 いや、別に問題があるわけではないのだが、何となく場違いというか、居たたまれないというか……

 今は、王城で最も警備が厳しく、誰も立ち入ることを許されないとされるところにいる。

 つまりは王家の居室なのだ。


 広さは当然ながら、簡単にここには辿り着けないというのも警備の強さを感じる。

 先ほどの双竜の間もたいがい奥だったが……


 今居る場所は、所謂リビングみたいなところだ。

 各個室に通じる通路の手前にあり、ソファーや本、楽器などが置かれている。

 簡単に言うと、王家だけの憩いのスペースと表現できるだろう。


 そのソファーに対面で座り、俺は陛下と話していた。


「――結局、魔導具ギルドとしては多くの利益を得ましたが、元々独占する予定ではありませんでした。事実、本体の製造という点では道具ギルドに軍配が上がりますので……しかし、当のアブラモフ代表が、こちらにマジックポットの権利を渡せと恐喝まがいのことをしてきましたからね」

「そうだったのか……しかし、其奴も馬鹿だな。何も手を出さなければ利益になったものを……それで?」


 そう言って、事件のあらましを伝えていく。

 帰路についていた時に襲われ、攫われたこと。

 うまく相手から剣を奪えたこと。

 自分の魔法を利用して戦い、最終的には相手を手にかけたこと。


 そのような話をしている間、叔父上はしっかりと目を見て聞いてくれた。

 頷きながら、笑いながら、時には驚きながら。

 そうやって話を聞いてもらう中で、昨日の話にもなってきた。


「――それで屋台で買い食いをしていたんです。それで、そろそろ魔導具の材料を買いに行こうと思ったときに、奥の路地から悲鳴を聞きまして」

「買い食いか……王族らしからぬことだが、民を知り、実際に触れるのは大切なことだ。それで……また首を……」

「ええ、まあ……」


 狐人族の母娘に会ったこと。

 そして、自分より先に庇いに入った少女がいたこと。


「――短剣術の使い手で、同い年くらいかな? と思いました。雰囲気は多分貴族、それも上位だと思われます。お互いに協力しながら戦えたんですよ」

「なんとも……お転婆な子もいたものだ。まあ、レオンも同じか……しかし、貴族の可能性があると?」

「ええ。所作とか、話し方とかからして……とてもいい子でした」


 その少女が貴族かもしれないという話をしたところ、叔父上は興味をそそられたようだ。

 ……そういえば、ハリー兄が俺と同い年の王子や王女がいると言っていたな。

 同い年であれば、護衛として申し分ないし、上級貴族であれば王女付きの侍女にもできる。


「どんな特徴があったか覚えているか? 名前とか……」

「えーっと、そうですね。まず、髪はブロンドで、きれいな青い瞳でした。それと……あ、髪の一部が紅だったかな? 名前は……」


 あれ? 名前を言おうと思って叔父上の顔を見ると、なんか、何とも言えない表情になっている。

 さっきまで興味津々だったのに、どことなく苦虫を噛み潰したような……


「大丈夫ですか、ウィル叔父様?」

「あ、ああ……大丈夫だ。名前は?」

「名前はですね――」


 出会った少女の名前を言おうとした瞬間。


「おはようございますわ、お父様!」


 奥の部屋から出てきた少女。

 叔父上を「お父様」と呼ぶということは、この国の王女ということだ。


 淡いブルーのワンピースを着ており、長い髪の一部をリボンで留めている。

 深い、宝石を思わせるかのような青い瞳。


 年齢は恐らく同い年くらいだろう。背丈も俺とあまり変わらない。

 そして……金糸を思わせるブロンドの髪の一部が、燃えるような紅の少女。


「あらお父様、お話し中でしたか? ごめんなさい、そちらはもしかして……」

「ああ、ライプニッツ家の次男だ。つまりは従兄弟だな。……紹介しよう、第二王女の――」


 叔父上が立って王女のそばに行ったので、俺も立ち上がり、礼を取る。

 同じく王女がこちらに顔を向け、礼を取る。

 そして顔を見合わせた瞬間。


「あ、あら? レオンですの!?」

「エ、エリーナ!?」


 お互い、見覚えのある顔に思わず大きな声を出してしまった。



「……ああ、やっぱりか……はぁ」


 隣に立つ叔父上がなぜか頭を抱えていたが、自分たちにとってはそれどころではなかった。

 昨日背中を預けて戦った相手。

 あまりにも、あまりにも早すぎる再会である。

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