あの味を教えて

雪火

プロローグ

「ねえ、優衣ってとかいるの?」


放課後の教室での話

突然親友の梨沙にそんな事を聞かれる


「居ないよ?急にどうしたの?」

「だって、高校生だよ?恋愛とかしてみたいなって思うじゃん…」

「まあ、確かにそうかもしれないけどさ…そもそも愛とか恋とか分からないし…」

「でも優衣、彼氏いたよね…?」

「それも学生の恋愛ってだけでしょ…どうせ時間が経てば別れる方が多いって」

「そういうとこ冷めてるよねー…」


正直自分でもそう思う

愛だとか恋だとか、結局は離れてしまうのになんでそこまで盛り上がれるんだろうって考える

周りが先輩のことをかっこいいと噂していたり、誰々が好きって話をしている中で

私一人だけ愛ってなんだろうって考えてる

だって分からないでしょ、目に見えるものじゃないし触れられるものでも無い

伝え方も形も人それぞれだから分からない


「優衣?」

「あ、で、なんだっけ?」

「好きな人の話」

「そうだった、そういう梨沙は居るの?」

「んー…まぁ、ね…」

「えっ、誰!?」

「…コレ、さ…聞いても引いたりしない……?」

「なんで、…?」

「私ね…なの」


知らなかった

もう2年も一緒に居るのに全然知らなかった


「ごめんね、気持ち悪かったよね…」

「そんなことないよ?私は愛とかわからないけど…人それぞれだと思うし…昔おばあちゃんが恋に理屈はない!って言ってたから」

「優衣…」

「今どきそんなに珍しいことでもないと思うよ?私だって多分好きになった人が好きな人だから女の子の可能性もあるし」


不安げに、それでも私にちゃんと話してくれた梨沙に泣きそうになる

話してくれてありがとう。


「うん…」

「ん、そろそろ帰ろっか!」

「そうだね…」


外は少しだけ暗くなっていた

梨沙との別れ際、声をかけられた


「ねえ…」

「どうしたの?」

「ありがとう…!」

「どういうこと…?」

「気にしないで、優衣が親友でよかったなって思っただけだよ!」

「なんか急に言われると照れちゃうな〜…私も梨沙が親友でよかったなって思ってるよ、ありがとう」

「うん!じゃあね」

「また明日」


あ、結局梨沙の好きな子の話聞いてないや

誰なんだろう…カワイイ系?カッコイイ系?女子にモテる女の子結構いるからなぁ…

なんて考えていたら家に着いた


「ただいまー」


なんて声をかけるけど誰かがいる訳でもない

手洗い、うがい、着替えも終わらせたし…宿題は学校でやったし何しようかな……

あ、そうだ。この間買った小説でも読もう



『少女は愛を知ってしまった…醜い愛を、人の温もりを覚えてしまった』


恋愛小説も、恋愛漫画も読むけどこういうのは架空の話だからキュンキュンするだけで、現実で好きでもない人に何か言われたりされても何も思わないんだろうなぁ…

私もこの物語の主人公のような恋してみたいな……っていうか執事との恋は憧れるよねー

あいにくうちはそんなお金持ちでもないし私はお嬢様でもなんでもないけどね

そう言えば同じクラスの神田くんの家が豪邸だって噂流れてたなー…

よく本の話とかはするんだけど詳しいことって何も知らないものだよね

明日も本の話色々聞いてみようかな




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