第3話 悪いのは魔王の方です。

 寒い一月の朝。


 魔王はまあまあ良い気分で、長年母ちゃん任せだったが生まれて初めてのゴミ捨てをするために、運命のゴミ捨てステーションへ向かう。



 フワフワフワ〜。

 魔王のすぐ横に。

 恋のキューピッドが飛んでます。

 人間には見えません。

『この男。まったく。

 あんまり手伝いもしてこなかったな?

 はいっ減点!

 ラストロマンスにムードなしの刑』

 独身貴族の魔王に訪れた最後かもしれない(うーっ。かわいそ)恋の一生一大のチャンス!

 逃せばこの先一生独り(たぶん)。

 恋のキューピッドが厳しい審査。

 見えないけれどいるのよね〜♪

 美しく白い羽根の生えた恋の天使は魔王のすぐそばにいます。

 今、この瞬間に出会い部門に、厳しい減点マークがつけられました。



 魔王=毛利真雄もうりまおは、身長200cmでゆるマッチョのどデカい男です。

 小学校ぐらいからあだ名をまおう《魔王》と言われてまして、わりと自分でも気に入っていました。


 ただし体はデカイが小心者です。

 とくに恋には奥手で気づけば40才にして付き合ったのは……!!…来た来た〜!

 見せ場が来ましたよ〜!


 ヒロインの登場です。


 美人です。

 一言で言ったら、どえら〜い美人です。

 だけど、色々イロコイで傷つくことにあってきた模様。


 それに魔王にはもったいないので、すぐにはくっつけるのを恋のキューピッドはやめました。

 もしくはこの二人をくっつけないかも。

『この子は口は悪いが健気けなげだな。この男にはもったいない。もったいない』

 トントン拍子に進めば、魔王みたいな奴は自分がモテるなんてまさかの勘違いをして、浮気などする不届き者になったりします。


『はい。焦らしコース一丁と』

 人間には姿が見えない恋のキューピッドの厳しい審査の元で、今まさに出会う二人。


 悪いのは魔王の方です。

 きちんとゴミの分別をしてこなかった貴男まおうが悪いのです。



「なにやってんの! ちょっと! きちんとゴミの分別しろっ! おっさん!」


 はい。魔王の方が悪いんです。

 町内会副会長でスペシャル美人の、天野タエちゃんはめちゃくちゃ怒ってますよ?

 


『よしっ。出会い完了。あとは面倒くさいから自分らでなんとかして〜』

 この恋のキューピッドは、飽き性で面倒くさがり。


『あ〜。疲れた。疲れた』

 またたぶん。たまにはこの二人の担当の恋のキューピッドは二人の様子を見に来ますが、あ〜! 恋のキューピッドは天空の自分ンに帰って行ってしまいました。

 疲れて眠いらしいです。



 出会いは果たした40才独身で魔王きどりのゆるマッチョ真雄まおと口の悪い天使のような美しさのタエちゃんの物語が始まります。


 始まんのか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る