第10話 ハロウィンパーティー

 文化祭の当日、私のクラスは『アルプスの少女ハイジ』の劇をステージのそでで待っていた。そして私のクラスの順番が近づいて来たのだ。私は高まる緊張と面持ちで舞台中央に立ち、『アルプスの少女ハイジ』の主人公役で有るハイジ役の衣装で身をまとい呼吸を整えた。


 舞台の緞帳どんちょうが上がり、スポットライトが私を一斉に照らした。それと同時に会場に集まった観客から一斉に拍手がき起こったのだ。心の中で私はこうつぶやいた。

「わたしはハイジ、ハイジは強い子だから大丈夫!」


 そう自分に言い聞かせ演技へと集中したのだ。その時の私は、クラス代表の田中や担任の若林の事を当てに出来ないと思っていた。


 その為、主役で有る自分ひとりでなんとか乗り切ってやろうと、そう思って居たのだ。そして、『アルプスの少女ハイジ』の劇は始まった。


 早速、ペーター役の田中が私の所に近づき、こう言ったのだ。

「ハイジ、新鮮な山羊やぎの乳を届けに来たよ」


 こう田中が言うと、私は田中に向かってこう答えた。

「わかったわ。おじいさんに、知らせに行って来る」


 そう言うと、アルムおんじ役の担任の若林を呼びに行ったのだ。そこへ担任の若林が登場し、田中にこう言った。

「山の雲行きがあやしい。早くふもとの村に戻るがいい」


 そう言うと担任の若林は田中から山羊やぎの乳を向け取り、私に向かってこう言ったのだ。

「ハイジ、覚えておくがいい。ここは下の村と違い、自然の中で生かされている。自然こそが、ここのおきてだ!」


 台詞せりふでは有るのだが、担任の若林の言った言葉はとても意味深い内容にも感じられたのであった。


つづく…

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