第十三章 夜の街 スコーピオン


結構大きな街だ。ここに着くのに結構歩いた。ジャングルを抜けてから魔物に遭遇し、それを昼飯としてまた歩いた。街に足を踏み入れる事には日が傾き始めていた。


師長「珍しい。酒場があるんだ」

姫「カジノもありますわ!」


もの珍しそうに街をみていると、街人が話しかけてきた。


街人A「見慣れない顔だね。ここは夜の街スコーピオンだよ。夜になるともっと賑やかになる。カジノも酒場もあるし、まあゆっくりしてってよ」


民家が少ないように思ったが、それ以上に武器屋や宿屋、教会などの公共施設と、カジノや酒場といった娯楽施設が揃っていた。


勇者「今日はこの街の宿屋に泊まるか!」

アスカ「それがいいですね」

姫「カジノにも行きますわよ!」

師長「あ、私はどっちかというと酒場に行きたい」

アスカ「うーん、私も呑みたい気分」

姫「ええ!」

オカン「ウチはお酒もカジノも別にええわ」

勇者「うーん、みんなそれぞれ行きたいところがあるようだし、オカンは宿へ行って、後は二手に分かれるか!もう次会うのは朝に宿でいいかな?」

師長「ああ、それいいね」


こうしてオカンは先に宿へ、後は勇者&姫、師長&アスカのペアで行動する事になった。


***


姫「こんなところで遊べるなんて最高ですわ!早く行きましょう!」

勇者「待てよ、まだ空いてないだろ!先に武器屋に寄らせてくれ」

姫「えー、何を買いますの?どうせ買っても使えないくせに」

勇者「お前まじで殺るぞ。……新しい鎧と盾が欲しいんだよ」

姫「仕方ないから付き合いますわーあはは!」


あ、危ない危ない。剣を抜くところだった。


***


オカン「はぁー疲れた。先に風呂はいろ」


***


師長「落ち着いた雰囲気だね」

アスカ「そうですね。あまりガヤガヤしてるのは好きじゃないので、良かったです」

師長「え、私もだよ」

アスカ「え、本当ですか?良かった」

「にいちゃん、ねえちゃん、なんにするか決まった?」

酒場のおっちゃんが、会話のきりの良いところで注文を聞いてきた。

アスカ「じゃあ、生ハムと梅酒ロックで」

師長「私は枝豆とビールにしようかな」

「はいよ!待ってな」


***


勇者「うわー広いなー」


武器屋で買い物を終えカジノに着いた俺達は、その広さに驚いていた。スロット台がズラリと並び、一角には酒場スペース、そして酒場スペースから見えるように作られた踊り子のためのステージ。


姫「血管が踊ってきましたわ!こっちもいきますわよ!」


姫がより一層の勢力をあげたところで、おれは階段を見つけた。


「おい、ここから2階に行けるぞ」


うおお!と声を上げ、階段を軽快に登ってゆく。俺はついて行くのに精一杯だった。

2階はバカラやポーカーなどのトランプゲームに加え、クラップスやチャック・ア・ラックといったダイスゲーム。さらにルーレットやブックメーカーなど、豊富なラインナップだった。


「2階にもステージがあるけど、あれはブックメーカー用なのか」

「ブックメーカーってなんですの?」

「リアルなスポーツゲームの勝敗や点数を当てるゲームだよ」

「面白そうですわ!ビバ!ギャンブル!」

使い方合ってんのか、それ。

「じゃあまずはバカラからやりますわよ!」

「え、俺も?!」

「当たり前ですわ!」


***


オカンが先に着いた宿屋は、温泉旅館のような豪華な宿だった。部屋でパンナちゃんの余った燻製をボリボリ食べ、お風呂へと足を運んだ。


「お、柚子風呂があるや~ん」


本物の柚が丸々浮かんでいる柚子風呂から、ホワンッと柑橘系のいい匂いが漂う。

オカンは顔を綻ばせながら湯に浸かった。


足先から、じんわりと。


身体の奥からフツフツと。


冷えた体にまとわりついて、スーッと染み込んでゆく。


「染みるわぁ〜」


柚の匂いが、これまた良い。オカンは10分ほどつかった後、風呂から上がり、すぐに眠りについた。


***


酒場では、アスカのもとに梅が丸々一個入った黄金色に輝く梅酒ロックと、クリームチーズを包んだ生ハムがきた。生ハムの上にチャービルが添えられ、オリーブオイルがキラキラしている。

師長のもとには、これまた黄金色に輝いたビールに、皮付きの枝豆がきた。ビールはキメ細かい泡がこんもりとのっかっている。


師長「じゃあ、乾杯」

アスカ「か、乾杯」


カランッという音と、ゴクゴクと言う音。

そして2人の「ぷはーー!」という声が響く。


師長「やっぱビールは美味いよ」

アスカ「私、ビール苦手なんです…」

師長「え、なんで?美味しいのに」

アスカ「苦味があるじゃないですか……それがどうも…」

師長「あー、それで、梅酒?」

アスカ「はい、、。甘いけど少し酸味もあって、好きなんですよ」

師長「へぇ、私は飲んだことないなあ。梅酒って、アルコール度数高いでしょ?」

アスカ「あ、お酒には強い方なんですよ」

師長「え、意外だ」


平和だ。まるでここだけ時間がゆっくり流れてるように談笑しながら、2人は程々に呑んで酒場を後にした。


***


姫「ああああ!負けましたのおおおお!!!」

勇者「まだやってたのか、そろそろ帰るぞ」

姫「え、この負けた分を取り戻して」

勇者「むりだ。帰ろう」

姫「ああああああああぁぁぁ!」


姫を無理やり引っ張り出した。よかった、俺がいて。

宿に着くと既にみんなとこに付いていた。

姫はそのままぐったりして、多分もう部屋で寝ているんだろう。

なんだかんだ楽しい夜だった。

この街はいい街だ。

また来たいなと思いながら、眠りについた。


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