Re:Life-異世界転生したら全ての言語が分かるようになり仲裁役に抜擢されてしまった!-

兎神 入鹿

プロローグ

義父とうさん、義母かあさん、おやすみなさい」

 そういって俺は自分の部屋に戻る。

「お義兄にいちゃん、おやすみ~」

 後ろから1つ年下の義妹いもうと瑠璃るりが俺の両肩に手を乗っけながら挨拶をしてくる。

「瑠璃、俺めっちゃ肩こってるんだよね……。どうせなら肩揉んでくれない?」

 そういうと瑠璃は俺の背後にくっついて手のひらを俺の目の前に差し出してくる。

「何この手は?」

 俺の背中にくっついている瑠璃に声を掛けると彼女は猫撫で声で『こんなに可愛い瑠璃ちゃんに肩を揉んでもらうんだからタダって訳が無いよね♪ お義兄ちゃん』と言って手をパタパタさせている。

「お前、金取るのかよ……。じゃあいいよ、やらなくて。俺、明日部活の朝練で早いからもう寝る……。朝行く前に声かけるからちゃんと起きろよ? それじゃあ、おやすみ瑠璃」

 そういって自室に戻ろうと足を踏み出すが背中から寝息が聞こえる。

「瑠璃、もしかして寝ちゃったのか?」

 背中にくっついている瑠璃に話しかけるが反応が無い……。

「まったく、どんだけ器用に眠るんだよ」

 そういって俺はゆっくりと腰を下ろして、床に座った瑠璃をしっかりとお姫様抱っこをして瑠璃の部屋に運び込む。


 部屋に入りベッドまで連れて行き、彼女を寝かせる。

「相変わらずの汚部屋だな……。少しは片付けろよな……」

 そういって部屋に散らかっている下着や服を畳んで衣装ケースに入れておく。

「お義兄ちゃん……い……き……」

 気持ち良さそうに寝てやがる……。まったく、もう少しでいいから年頃の女の子だというのを自覚してほしい。

 ベッドで眠る、瑠璃のおでこにデコピンをして自室に戻り、寝ることにした。


 ガタッガタバサッ……。

 何処からだろう何かが倒れる音や床に散らばるような音がする。

 今、何時だよ……? そう思い枕元に置いてある時計を見ると時計の針は午前2時を示していた。

 こんな時間に何かあったのかと思い部屋のドアを開けて階段の上から1階を見ると知らない男性が二人、家を荒らしていた。

『ヤバい強盗かもしれない』そう思った俺は部屋に戻り、部活で使っている竹刀を手に握りしめて瑠璃の部屋に入る。


「瑠璃! 瑠璃、起きて!」

 そういってベッドで眠る瑠璃の掛布団を剥ぐと、そこには紫の下着姿の瑠璃が眠っていた。

「起きろ瑠璃! 起きろってば!」

 下着姿の瑠璃を揺すると『なぁ~に? お義兄ちゃん?』と目を閉じたままだが反応があった。

「たぶん強盗が下に居る、なるべく音を立てないで瑠璃は外に行って警察を呼んできてくれ。俺は義父さんと義母さんを起こしてから行くから」

 そういって衣装ケースからジャージを取り出して瑠璃に手渡す。

「嫌だ、お義兄ちゃんも一緒じゃないと嫌だ! お義兄ちゃんは無茶な事ばっかするから私が見張ってるの」

 そういって俺の腕を掴んだまま離れようとしない。

「我が儘を言うな! 時間が無いんだ! ほら今のうちに行け!」

 窓のカーテンを外して、きつく結んで窓から外に垂らす。

「早く行け、俺は二人と一緒に逃げるから心配するな、警察呼ぶの任せたぞ」

 瑠璃を無理矢理、窓際に押しやると瑠璃は涙目で頷きジャージに着替えて窓の外に降りていった。

 それじゃあ俺は義父さんと義母さんに強盗のことを知られに行くか……。

 竹刀を構えながら廊下の突き当りにある義父達の寝室に向かう。


「義父さん、義母さん起きてください」

 眠っている二人の身体を揺すり、声を掛けると眠そうな声で二人は起き上がる。

「どうしたんだい? 一人で眠れない年齢じゃないだろ?」

「瑠璃ちゃんとヤっちゃたの? 学生結婚はお勧めできないけど、お母さんはいつでも二人の味方よ♪」

 義父さんは良いとして、義母さんはどんな勘違いをしてるんだ……。

「そんなんじゃないよ! 強盗かもしれない、下に銃かな? 持ってる人がリビングを荒らしてる。2階に来るのも時間の問題だと思うから義父さん達も窓から逃げて! 瑠璃はもう逃げて警察を呼びに行ってもらってるから安心して!」

 そういって瑠璃の部屋と同じ様にカーテンを結んで外に垂らす。

「ほらっ、早く行って! 俺もすぐに行くから」

 二人を窓から逃がしていると階段を上がってくる音が聞こえる。

「ほかの家族はどうしたんだ?」

 声のした方を振り向くと、小太りの男が銃を向けていた。


「今頃、警察を呼びに行っているんじゃないかな? 諦めて捕まれば?」

 そういって竹刀を構える。

「そんなんで抵抗できると思ってるのか? おめでたい奴だな、こっちはレンコンなんだぞ?」

 そういって小太りの男はリボルバーをチラつかせてくる。

「おもちゃだろ? そんなのビビるかよ!」

 少し考えれば分かっていたかもしれない……。この銃が本物だったということを……。

 乾いた銃声と太股に走る激痛と流れる血で、そのことに気づいた時には遅かった……。俺はあまりの痛さで床に倒れてしまう。

「クソッ、警察のサイレンが近づいてきやがる……。しょうがねぇ今日は引き上げるぞ」

 俺を撃った小太りの男の声が聞こえる。

「誰が逃がすかよ、治療費と慰謝料、それと壊した物や扉の修理代……。絶対払ってもらうからな」

 身体が痛いと悲鳴をあげているが何としてでもコイツらを警察に突き出してやる。そう決意し強盗の足にしがみつく。

「めんどくせーな、撃っちまったし捕まったら強盗と殺人未遂になるのか? 何でも良いけど捕まったら最後、出てくるのは当分先になっちまう……。ここまで来たら一人殺すのも変わらねえ! おいっ、コイツ殺るぞ」

 そこで俺の記憶は激痛と共に暗転していった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る