25  浅葉⑤

 腕の中で眠ってしまった千尋の向こう側のやみに視線を泳がせると、目ではないどこかにくっきりと映ったこの部屋が浮かび上がってくる。


 先ほど千尋が合鍵を取り出したのは、白木のデスクの一番上の引き出し。その下に同じ厚みの引き出しがもう一つと、一番下に大きな引き出しが一つ。その取っ手にはマンガチックなこけしのストラップが引っかけてあるはずだ。


 デスクの上にはブルーのノートパソコンと白いマウス。マウスパッドには去年のカレンダーがプリントされている。和紙を巻いたような手作り風のペンスタンドのそばに、食べかけのお菓子。


 キッチンもよく片付いているし、掃除も得意な方だろう。こてこてと飾り立てるようなことはしていないが、それでいてところどころに女子大生らしさが覗く、千尋らしい部屋だ。

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