コズミックトラベラー

星野 ラベンダー

第1部…Part1:出会い編

Chapter0「プロローグ」

phase0「宇宙の片隅での出来事」

「うっ……!」


 船内に多数の警告音が鳴り響く。アラームは重なり、一つの煩わしい音と化す。

 至る所にある液晶画面に、【ERROR】の文字が表示されせわしなく点滅する。

 操縦室が赤色の光に包まれる。


 砲音が響いた。重い操縦桿を、左へ目一杯傾ける。

 衝撃は来なかった。放たれた砲弾は、間一髪のところで機体すれすれを通り去って行った。


 しかし操縦桿を元に戻す暇などなかった。

 直後、再びの砲音。大きな音と共に、船内が縦に横に揺れた。


 大きな音が混ざり合い、不協和音と化す。

 ガタンガタンと揺れる船内で、“彼”は不安定な視線を隣に送った。


 隣の座席には置かれている小さなカプセル。中にいる存在は、外がこんなことになっているなど全く知らず、眠っているだろう。


 “彼”は、自分の頭を小さく上下させた。


 左右に上下に、絶えず不規則に大きく動く船内の中、操作卓の幾つかのパネルを叩いた。


 目の前にある、一番大きなモニターが設置された操作卓から、何本かのコードが伸びる。


 纏めて掴んだコードの先端部分を掴むと、“彼”は自身の頭部へと繋いだ。


 目の前のモニターに表示されているメモリーゲージは点滅を繰り返している。表示されている数字は、今にも0に達しそうだった。


 ワープに使用するためのエネルギー。その数字が徐々に上昇していく。


 反対に、“彼”の腕は徐々に垂れ下がっていく。力という力が、全身から抜けていく。


 だが、今ここでシャットダウンすれば、全てが無駄になる。

 小刻みに震える手で、“彼”はエンターキーを押し、ワープを決行した。


 ワープ時特有の音色が流れ出し、不協和音と揺れが徐々に小さくなっていく。

 船の窓に映る自分の姿を、“彼”は捉えた。


 そしてその向こうに、たとえ一日かかっても数え切れない程の、たくさんの星が一瞬だけ見えた。

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