息子と正義の味方の拳

 玉座の間、式典の時とはまた違った緊張感に包まれているこの場所、力なく玉座に座られているモモンガ様と、未だモモンガ様の怒りに触れてしまい、地に頭を落としているアルベドの姿、それと、この事態を解決するべく動いているパンドラズ・アクターと私だけ。

 さて、この状況どうするのですか?正直私にも手に余る状況なのですが。

「さて、父上・・・私は今非常に怒っています。」

 ふむ、これは直接生み出されたものだけに許された方法だね。そう感心していた次の瞬間、パンドラズ・アクターはたっち・みー様のお姿にその身を替え、そのご尊顔に拳を放ったのだ。

「な!何をしている!パンドラズ・アクター!いくら貴方でもそれは許される行為ではありませんよ!」

「少々お待ちを、デミウルゴス殿。」

 そう言いつつ、至高の四十一人で在らせられるたっち・みー様の姿のまま、こちらに手のひらを向け静止してくる。

「父上、今この状況がお見えになっていますか?あなたはこのナザリックの支配者なのですよ?」


 周囲を見る・・・、目の前には純銀の聖騎士、俺が座っている場所の近くにはいまだに怯えているアルベド、そして、こんな不甲斐ない俺を心から心配しているデミウルゴス。

 あー、こんなにも、俺の事を思ってくれているのか。

 たっち・みーさん・・・、昔もこんな強引な手で私を引き上げてくれましたね。


 私の心は今地獄の業火で埋め尽くされている、ここまでお力落としをされているモモンガ様に・・・、ん?

「パンドラよ、ありがとう。大丈夫だ。」

 そこには、このナザリックの、ギルドアインズ・ウール・ゴウンの絶対支配者の姿があった。

 ・・・これが、親子ですか。

 一体どうすればあの方法でこの様な状況になるのか。

 私がここにいる意味あったんでしょうかね?

「デミウルゴス、ありがとう。私の事を思ってくれて。」

 しかし、モモンガ様は私にもお声を掛けてくださり、何もしていない私に対しても、感謝の言葉を投げかけてくださった。

「いえ、私はなにも・・・。」

「ふむ、後で少し話をしよう。まずは・・・、アルベド。」

 アルベドは声を掛けられ、身体を震えさせてますね。精神に相当な負荷が掛かってしまっている。これでは、立ち直るのは・・・。


 私は愚かな女だ・・・、モモンガ様が私たちを大事にして下さっているのは知っていたのにも関わらずあのような、悲しませる言葉を言ってしまった。

 私は、モモンガ様をご不快にしてしまった・・・。

 あー、もう、ダメなのですね。

 遠くの方で、何か言ってるようだけど、もうこのまま頭を下げ、後はモモンガ様にこの首を撥ねてもらえるのを待つだけ。

「アルベド。」

 ひっ、だめ、耐えるのよ、これ以上無様な真似はこの守護者統括アルベド見せられません。

えっ?なぜ、私を抱いていただけているのですか?

「すまん、許せなどと言ってもダメなのだろうな。」

あ、あああああ!

「俺の為に横に居続けろ、これは命令だ。」

「モモンガ様ー!!」


 モモンガ様は、アルベドを抱きしめられている・・・、アルベド?何をどさくさに紛れてやっているのですか?

 はーー、さっきまでのは何だったのですかね。


「クフー!クフー!」

「ちょ、まてアルベド!」

「いやはや、罪作りな方ですね、父上は。」

「パンドラ見てないで!どうにかして!」

「いい機会です、父上、アルベド殿の気持ちをちゃんと受け止めてください。それと、ご自分の言葉の重みも自覚してください。」

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