第17話 北風チョコレート

「はい、これ!!」

 友美がチョコをくれた。

「それね~チョコの香りのするバスソルトだから」

『えっ、食べられないのかよ』

 そう返事しつつも、内心は嬉しくてたまらなかった。


 その夜、風呂に浸かりながら早速バスソルトを溶かした。

『楽しみだなぁ~♪アイツもなかなかオツなことするな~』

……が、40度のお湯なのに溶けねぇ!


 はじめは、まだ包みが全部外せてないのかと凝視したがどう見てもそうではない。

『くっそ~投げつけて割ってやろうか!友美~これ何なんだよ!!』

 そう口にした途端バスソルトはみるみる溶け始めた。

『ん?どういうことだ?』

 ゴミ箱に捨てた北風チョコレートソルトのパッケージを拾ってよく読んでみると、なるべく冷たい言葉を投げ掛けて下さいと書かれている。

『くっそ!!なんだこれ、あいつ明日はタダじゃおかねぇからな』


 俺の暴言で溶け始めたそれはみるみる俺を包み込み、気がつくと身動きが出来ないくらい俺にねっとりとまとわりついてきた。


 急いで薄めようと蛇口に手を伸ばそうとするも、そこまで届かない……。


終に身動きが取れなくなった俺は湯が冷めてくると同時にチョコと共に固まっていき、完全に動けなくなった。

 コンクリートのように固まったチョコの表面の凸凹は、まるで歪んだ友美の笑顔のようだった──。


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