第6話


(ホント、目立つんだよなぁ、咲子って)


「咲子は時間、大丈夫?」

「うん。平気。

お風呂入った後だったから、メイクもしないままで来ちゃったけど、ごめんね。

でも優菜チャンなら大目に見てくれるかなって」

「ぁ、うん、良いよ、そんなの。私も化粧なんかしないし、」


 化粧してない咲子は、昼間より余計に若く見えた。

咲子は自分の価値を解かってやってるんだろうなぁ、ホントに抜け目ない。

女はそうゆうの敏感に気づくけど、男には通用しちゃうんだよね。


(独身の子無しって、こんなに年取らないもんなのかな……)


 ママ友としか関わってないから、同年代の独身がどうなのか、サッパリ分からない。

咲子は楽しげにメニューをめくって言う。


「今日は本当にビックリした。まさか、優菜チャンと会えるなんて」

「ソレ言ったら、こっちもだって」

「優菜チャン、変わってないんだもの。老いたの私だけかって、何か恥ずかしくなった」

「そんな事ないでしょぉ、」

「バレてると思うけど、私はね、毎日 若作りに必死」


 私の考え、見透かされてる!?


「ゎ、私だって……結構ヤバイよ? 太ったし、肌も荒れたし」

「そうかなぁ?」


 ……何だよ、ソレじゃまるで、若い頃から老けてたみたいじゃん、私が。


「優菜チャンはゴハン食べて来た?」

「うん。娘達の残飯処理だけどね。だから太っちゃうんだけど」

「幸せ太りか~~羨ましい~~」

「いやいや、そんな良いもんじゃないって。咲子はどうなの?」

「私はまだ。食べて良い?」


 食べたか・食べてないか、を聞いたんじゃなくて、

咲子は どうゆう生活してんのかって意味で聞いたんだけど、上手く伝わらなかったみたいだ。


「咲子は痩せっぽっち何だから、ちゃんと食べなきゃ駄目だよ?」

「うふふふ! はーい!」


 子供みたい。何か、嬉しそう。


(そう言えば、咲子には こうゆう子供っぽい所があったっけ)


 小学生の頃から、咲子は度々 私に甘えた。

『髪の毛 結って』とか、『コートのボタン留めて』とか、些細な事。

自分でも簡単に出来そうな事を私に頼んだ。

大人になってからは、出かける時のスケジュールは全部 私任せ。

咲子は私について歩く子犬のようだった。


「フライドポテトと、エッグタルトにしよ」

「そんだけ?」

「うん。いつもコレくらいで お腹いっぱいになっちゃう」

「はぁ……羨ましぃ、太らないワケだぁ」


 私はドリンクバーだけで良いや。

食べられるけど、食べた分だけ太るから。


 オーダーを済ませて2人でドリンクバーに行くと、咲子は若い頃と変わらずの欲張りを見せて、トレーの上に何種類ものドリンクを並べた。

本人曰く、何度も取りに行くのが面倒だし、同じ物を飲んでいると飽きちゃうんだって言ってたかな。


「あれ? 咲子、コーヒー飲むんだっけ?」

「うん。最近のエスプレッソマシーンは、結構 美味しいコーヒーを入れてくれる」

「ふーん」


 コレって、エスプレッソマシーンって言うんだぁ……

名前は聞いた事あったけど、ソレがコレとは思わなかった。

でも、コーヒー何て何処で飲んでも同じ。いちいち気取らないで欲しいな。


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