飴をうる人



水銀灯の蒼い光を 濡れた煉瓦が反射する

飴を貰った可愛い子 路地の向こうへ消えてった


飴売り 飴売り こちらへおいで



秋を孕んだ冷たい風が 楓の並木を揺らしてく

飴を貰った賢い子 路地の向こうへ消えてった


飴売り 飴売り こちらへおいで



正子を告げる錫青銅が 黒い硝子に呑まれてく

飴を貰った器用な子 路地の向こうへ消えてった


飴売り 飴売り こちらへおいで



可愛くもなく 聡くもなく

間抜けな あの子はどうなった


可愛く賢く生きられず

取り柄もないが ひたすらに

真面目に 正しく 勤勉に

生きてたあの子はどうなった どうなった


飴を得る人 知らん顔

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