マグナムブレイカー

サカキマンZET

覇気使い戦争

第1話 リーゼント降臨

 真夜中の非日常的な光景にて……


「何故、お前が俺に立ち向かう! お前は巻き込まれた側なんだぞ!?」


 港の倉庫で爆発か戦争でも起きたのか、周りの荷物が炎上し煙や塵が覆われている中で睨み合う二人の男がいた。


 埃を被った紺色のワイシャツに黒いスラックスに高級そうな革靴を身につけた美男の青年で、外見は十八歳ほどだろうか。日本人の黒い瞳に服の上から分かる程に、鍛え上げられた細マッチョ、高身長の神崎忍かんざきしのぶは額から出血をして、驚きを隠せない表情で戦う相手に問う。


 神崎忍が戦っている相手は、かなり大柄で筋肉質の男だった。学ランとスニーカーを身につけ、所々服が破けボロボロになり、生々しく全身から出血している。彼は真っ赤に燃えるような赤髪リーゼントをトレードマークとした、不良の代表格のような十六歳の高校生だった。


 既に満身創痍で膝から体が崩れかけ、辛うじて立つのが背一杯の状態、肩で荒い息づかいのボロボロの赤い男、品川修二しながわしゅうじは息を整えながら苦悶の表情で、傷だらけの体を気力だけで奮い起こし、神崎忍へ鋭い眼光で睨み付けて指を差して反論する。


「はあ? ふざけんじゃねえよ! 友達の体に風穴空けといて、テメェを許す俺じゃねえ! それによ、巻き込まれた、巻き込まれなかったの話じゃねえんだよ! テメェが…個人的に、気に入らねぇからだ!」


「――くだらんな! お前に構っている暇は無い! 消し炭にする!」


 神崎忍の両手に“黒い靄”が纏まる。そして襲撃の体制が整えると修二へ向かい走る。


(――ヤベェ、目の前が霞んできた。アイツに攻撃はできたが、こっちがボロボロだ…仕方ねぇ、能力を最大限まで引き上げるしかねぇ!)


 修二は、雄叫びを上げる。修二の四肢から真っ赤な炎が燃え上がる。

 炎を確認した後、構えを取り忍を迎え撃つ体制に入る。


「品川あぁぁぁぁッ!」


「神崎いぃぃぃぃッ!」


 二人は叫びながら激突する、赤と黒、2つの色が交わる瞬間に力を持つ者の運命が決まる。

 この物語は“馬鹿”で“最高”の男と“天才”で“最強”の男の物語である!



 この戦いの始まりは数ヶ月前、三月一日まで遠く遡る。


 午前十時の飛行機の中は静粛そのもので着陸するまで何も起きないと誰も思っていなかった。


「お客様、シートベルトを…お客様?」


 飛行機の中で、座席に座っている、リーゼント頭でスカジャンにジーンズ、スニーカーを身に付けた修二が顔をうずめ、腕を組み、汗を滝の様に流していた。

 キャビンアテンダントはそんな修二を心配して見て声をかけた。


「あ、あの……ふ、袋か、何かを……うぷっ!」


 修二は眉をひそめて口を抑え、顔が青ざめ今にも吐こうとしていた。


「お客様!?」


 修二は限界に達したのか、心配するキャビンアテンダントを無視して、白目を向いて大急ぎでトイレへと駆け込んだ。


 こ、これは二人の戦いの物語…のはず…。



 暫くして関西国際空港に到着した。

 まだ乗り物酔いが覚めてない修二は一般人の二人に担がれ飛行機を降りた。

 暫くして休み、修二は担いでくれた2人に感謝をした。担いだ彼等は日わく修二は結構重かったらしい。

 飛行機関係者や乗客の人に謝罪をし、空港を後にする。


「あー気持ち悪かった。父ちゃんいるかな?」


「おーい、修二。こっちだ!」


 空港から出てきた修二に黒い髪の男が向かって手を振る。


「父ちゃん!」


 それに反応して、笑顔で修二も品川宗春しながわむねはるへ向かって手を振る。


「久し振りに帰って来たな、こんなに大きくなって…。師匠さんに、みっちり仕込まれたか?」


「あぁ! こんなにも筋肉が付いたぜ、見てくれよ! これって上腕二頭筋だって、師匠が言ってた!」


 修二は腕に力を入れて、太くたくましく盛り上がった筋肉を宗春に見せる。


「そうか、じゃあその上腕二頭筋を活かして荷物を車に乗せてくれないか?」


「OK!」


 修二は宗春の願いに応えるようにサムズアップを見せて、自分の荷物を車に積み込む作業に入る。


「ありがとう…。(大きくなったな、純粋でわんぱくで優しい子になった。 これも師匠さんのお陰かな?)」


「……それで、荷物どこに乗せんの?」


 修二はバンの上に荷物を積み込もうとしていた。


(頭の回転だけは、無理だったか。)と宗春は軽く後悔しながら、空港の目の前に停めていた車のバックドアを開けて、「ここに荷物を入れてくれ」と指示をする。


 修二が宗春と一緒に荷物を積み込んでいると、黒いスーツを着た男が空港から出てきた。

 モデルみたいに全身がスラッとした美男子だ。顔にはサングラスを身に付けていた。

 修二はふと振り返る。修二は気になって美貌に見とれ呆けていた。

 そして不注意で荷物を落としてしまった。

 だが、それを見かねたのか黒い彼は荷物を優雅に拾い修二に渡した。


「ありがとう、すまねぇ!」


 ニッコリと笑みを浮かべた修二が、礼を言うとモデルみたいな男はサングラス越しで目線は分からないが、顔の角度は修二の方に向けていた。

 荷物を受けとる間の一瞬だけ、流動雲が日を隠し修二はサングラスの下が垣間見えた。彼は修二を見ておらず車のナンバープレートを見ていた。


「――海道(かいどう)は初めてか?」


(――初対面なのに結構、上からだな。まあ、荷物を拾ってくれたから別にいいか。)


 無表情で初対面で失礼な態度を取られた修二だったが嫌な顔をせずに笑みを浮かべて、返答した。


「いや、昔に住んでた。色々とあって俺だけ田舎に引っ越して、今ここに戻ってきたんだ。」


「そうか……何事もなく平和に暮らせたらいいな。」


 そう言った直後にモデルみたいな男は一人の正装を着た老人に話しかける。

 そして、近くに止まっていた高級そうな車の後部座席のドアを自分で開けて乗りどこかへと走り去って行った。


「変な奴だな…。」



 車の中で、神崎忍は窓の景色を眺めながら座席の窓際に頬杖をつき寛いでいた。

 その時、不意に執事から声をかけられた。


「――今日の夕飯は久し振りにカレーにしますか?」


 執事から今日の夕飯の話をされた。

 久し振りに食べたいと思ってたカレーの話題が出てきたので、忍はサングラスを外し内ポケットに仕舞い、返答をする。


「そうだな、今日は簡単な物でも構わないだろ。」


「かしこまりました。――他に忍様が欲しい物はありませんか?」


「特にないが、戦闘準備運動はしたい。」


「では、そのように連絡しておきます。」


「あぁ。いつも、すまないな。」


 忍は執事へ素直な気持ちで感謝をする。

 旅行から帰って来ての疲れなのか少し話しただけで眠気が襲った。

 眠るのに座席を少し倒して、ゆっくりと目を閉じる。

 忍は思った。家につく間だけの車の中での仮眠は、たまにはいいと思った。



 ここは海道、大きいパイプで大阪湾の中心にできた人工の島。

 人工の島は関西地区の全てから橋で繋がっており、海の道という事で“海道”と呼ばれている。

 ここの7割は関西人が住んでいる、後の3割は色んな住民が住んでいる。一応、地名は大阪市海道区になっている。

 理由は簡単で、大阪湾で作られているため、大阪市になったそうだ。



 それから一ヶ月後、四月一日に海道高校の入学式が始まった。


 海道高校の校門の前で、修二は両腕を伸ばし海風を感じていた。ボタン全開の学ラン、中に赤シャツを着てスニーカーを履いた。

 燃える様に真っ赤なリーゼント頭の彼という存在を象徴しているようだった。


「ここが海道高校か――流れてくる海風が気持ちいいぜ……」


 ――修二が校門をくぐろうとすると後ろから声をかけられた。修二は振り返って声をかけた人物を見た。


「これ落とし物だよ?」


 そこには海道高校指定のセーラー服を身に纏いニーソックにローファーを履いた。

 背中まで伸びた銀髪のセミロング、雪のように白く美しい肌で蒼い瞳が特徴だった。

 その人物が生徒手帳を修二に差し出していた。

 修二は一目見た瞬間に頭の中が真っ白で空っぽになった。

 その子の優しい瞳しか釘付けで差し出された生徒手帳なんか眼中になかった。


「どうしたの?」


「あ、いや…その天使がさ…。」


「え?」


 彼女は困惑した顔で修二を見ていた。

 修二はハッ!と気付き、少し照れながら、手渡された生徒手帳を受け取る。


「ごめん、生徒手帳ありがとう。」


「ふふっ。」


 彼女は修二が照れたのを見てなのか、顔を隠して微笑んだ。


「え?」


「ごめんなさい、あまりにも見た目と違ったから…気を悪くしたなら、ごめんね?」


「いや、気にしてない。俺は品川修二、一ヶ月前に引っ越してきたばかりだ。」


「私は天海美鈴あまみみすず、早く入らないと先生に怒られるよ?」


「あぁ! そうだな。」


 二人は修二だけウキウキ気分で学校に入り、無事に入学式を終えた。

 修二たちは振り分けられた教室に入り席へと座った。席順は名前順だったので修二は後ろで美鈴は前になった。

 美鈴は後ろを振り向いて修二に小さく手を振る、修二も手を振り返す。


「美鈴ちゃん、可愛いやろ?」


 不意に横から声をかけられた。

 横に向くとパーマをかけ、修二と同じく学ラン全開、下は紫のシャツを着た二枚目の男がいた。


「あぁ、あんな可愛い子を見たのは久し振りだな! 今までむさ苦しい奴しか見てこなかったからな!」


「せやった! 自己紹介が忘れてたな。吹雪雅人ふぶきまさと、海道中学からや。」


「品川修二、一ヶ月前に海道に帰って来たんだ。中学校の名前は……忘れちまった」


「外から来たんか?」


「まあな。」


「外の暮らしって、ここと変わらんか?」


「あんま変わりないと思うぜ?」


「へぇー なんで、関西弁喋らんの?」


「関東に長く住むと勝手に標準語になるんだわ、違和感あるかもしれねぇがよろしく頼むぜ。」と修二は握手を求めて雅人はそれに答えて握手をする。


「品川って呼んでええか? それとお前と合わせて話したいから、俺も標準語でええか?」


「あぁ、構わねぇよ。そんな気にすることじゃないからよ」


「そうか……」


(――吹雪か、俺はコイツとは仲良くなれそうだな。)


 気軽に喋りかけてきてくれて修二は本当に嬉しかった。

 それだけで修二の心は満たされたが、遠目から心配した目で見ている美鈴がいた。


(あれ? 美鈴ちゃん、俺の事を心配してる? もしかして俺が隣の吹雪をカツアゲしてるって思われてる? まあ、確かに見た目が不良に間違われる事があるからな、後で説明しておこう。)


 修二がそう思っていたが、隣の吹雪は修二を横目で見て、不気味な笑みを浮かべていた。



 帰宅時間に修二は吹雪に校舎裏まで呼び出された。


「なんだよ話しって?」


 ポケットに手を突っ込み、笑顔で吹雪の話しを聞く姿勢になっていた。


「お前、取るのに興味ある?」


 吹雪は腕を組み、壁にもたれて伝えた。


 その発言で、修二は吹雪の意図の分からない質問に少し困惑したが修二が天下と聞いて思いついた答えは…


(――なるほど、吹雪は添加物が欲しいからスーパーまで付いて来てほしいって事か! それなら校舎裏とかで呼び出して聞かなくてもいいのによ、もしかしたらコレが噂に聞くアレだな…カンテレだ!)


 そう残念な事に修二の知能数はあまりにも低すぎるチンパンジー並の漢字の間違いと勘違いが激しい、頭が可哀想なリーゼントくんなのだ。

 

「なんか、色々と考えこんでる顔をしてるけどよ、たぶんお前が考えてる八割は合ってないと思うぞ?」


「え? マジで! 俺の考えを読めて間違いを指摘できるとなると…そうに違いない、吹雪、お前は超能力者だ!」


「…ギャグで言ってんのか? 漫才にしたって、なおさら面白くないし受けねぇよ、俺が言いたいのは協力して頂上てっぺんを目指さないかって話しだよ。」


「それだったら屋上に行けば…」と吹雪は一瞬で修二の顔の目の前で片足の飛び蹴りを放つが、修二はバックステップで素早く下がり体制を崩さず吹雪を睨み付ける。


「今の反射神経と間合いの取り方で確信したぜ、『品川修二はただ者じゃない』って俺の推理と勘が当たったぜ。」と吹雪は嬉しそうに修二に自分の正しかった事を伝える。


 修二はなんだか呆れた感じで少し嫌気がさしていた。

 それもその筈、大事な話しがあると聞いて付き合ってみれば訳の分からない事を言って攻撃を仕掛け挙げ句に俺の推理やら勘やら言われて滅茶苦茶な事を言っているからだ。


「もう帰っていいか? 家でプリン冷やして食べるのを楽しみにしてんだよ。」


「それも冗談か? まあいい、協力する気があるかないかだけ聞かせろ…テメェと漫才する時間はない。」と真剣な顔で殺気をむき出しにしながら修二に向けて言葉を放った。


「協力ってなんだよ? 先ずは目的を言ってくれねぇと分からねえだろ?」


「まさか、『覇気使い』じゃないのか?」と修二はその言葉を聞いて、さっきまでヤル気の無かった顔が一変して強張った表情になった。


「分かりやすいな。『覇気使い』を知っているって事は持ってるんだろ? 『覇気』を?」


「喧嘩では絶対に使わない…それだけだ。」


「喧嘩? これは喧嘩じゃねぇバトルだ。どっちが倒れるかのデスマッチだろ?」


「これは喧嘩だ。話しが拗れた時点で喧嘩になったんだ! 俺も人の話しを理解できなかったから吹雪がイラついて攻撃したそれだけだ。」


「お利口さんになった気か? だったら喧嘩じゃないのを教えてやるよ…お前が俺を倒さないと美鈴ちゃんを犯してやるよ。」


「?」


 修二は吹雪の発言にポカーンとするしかなかった、理解していない様だ。


「…美鈴ちゃんを食べてやる!」


「?」


「…美鈴ちゃんとニャンニャンするぞ!」


「?」


「理解しろよ! どんだけ理解できてねぇんだよ!? 言ってる俺が恥ずかしいだろ!」


 理解できてない修二に、何度も言いたくない事を言わされた吹雪は赤面しながら、修二にツッコむ。


「だったら言わなきゃいいじゃないか。」


「ふざけやがって…美鈴ちゃんを酷い目に合わせる!」


「テメェ!」


 普通は気になる子を犯すというだけで何かしらのアクション、反応、を示さなければならないのだが品川修二には、性の比喩を一切知らないので理解できなければ話が伝わらないのだ。

 吹雪はなんと面倒くさい奴なんだと思いながらも次の話に進める。


「美鈴ちゃんの…お尻をペンペンしたり、顔を舐めたりしてやるぞ!(何言ってんだろ、俺。)」


 修二の力を確認するだけの作業が、あらぬ方向に進み、自分の言葉に頭を抱える始末。


「お尻をペンペンだと! しばらく便座に座れなくなるだろうし、顔を舐めたら雑菌だらけになるだろ!」


 ツッコミするのも面倒くさくなり、そのまま話を進めたい所だが、また余計な一言を放ってしまうと勘違いしそうなので吹雪は考えた。修二が言葉で通じないならば人差し指で来いよ。『挑発』のモーションで誘う。


 修二はそれに反応し、左の拳で大振りのパンチを吹雪の頬にめがけて放つ。が、吹雪は余裕の表情で避ける。

 空振りに終わった修二の隙をつき左ストレートで鼻を殴りつける。


 修二は両手で鼻を押さえながら苦悶の表情を浮かべる。吹雪はチャンスだと学ランの襟を掴み、修二に渾身のヘッドバットを喰らわせる。

 意識が飛びそうになるが、なんとか保ちながら吹雪てを振りほどき距離を取る。

 左手で鼻を押さえ、右手でヘッドバットされた額に触れると滲み出た血がぬるりと感触が伝わった。


「大したことねぇな?」


 さっきと違い、吹雪は余裕の表情を見せ、修二は右鼻を押さえて左鼻から鼻息で血を出す。額の流血はそのままにした。


「へへっ、分かった事がある。お前、『覇気』を使いなれてるな?」


「やっとマトモな話になった…説明できるか?」


「あのヘッドバットで攻撃した時に感じた。鋭く冷たく硬い物を…つまりは『氷』。」


「正解、俺は『氷の覇気使い』。この能力は中学の時から使えるようになってた。」


 吹雪は前髪を上げて、額に鋭く尖った氷の氷柱つららを見せびらかした。


「発動スピードも早い、そーとー鍛えたな?」


「そうだな、この中学三年間―――!」


 吹雪は修二の発言に違和感を感じ、修二と同じく強張った表情になった。そして考える。


(――今、コイツ何て言ったんだ? そーとー鍛えた? なんで鍛えたって分かったんだ? いくら奴が『覇気使い』でも、俺が発動スピードまでに気づくのは半年はかかったぞ? それを鍛えたって…。)


「はあ~ 俺でも発動スピードに五秒かかるのに吹雪は二秒で発動しちまうもんな…参ったぜ、これ絶対に師匠に四秒縮めろって言われるぜ。」


「師匠?」


「あぁ、ヤバイ師匠だ。間違えると間接技をやられるし、キレた時は筋トレを倍以上と勉強を同時にさせられる始末だしよ、参ったぜ。」


 修二は思出話にヤレヤレという表情を浮かべる。


「……。」


「まあ、そんなこんなで、最弱だった俺を強くしてくれたのは紛れもなく師匠だからよ。そこは感謝しないとな?」


 吹雪は聞かれてもと言わんばかりで、修二に余裕の表情が戻ってきた。


「そんじゃあ下校時間過ぎたら先生に何言われるか分かんねぇし――とっとと決めて帰ろうぜ?」


 その時、吹雪は感じた。目の前の普通の人間が一瞬で猛獣に見えた。それは本能的なのかそれとも脳が見せた幻覚なのか…でも確信できることは一つだった、コイツは俺より強いという事に。


 それは一瞬の出来事だった、吹雪が油断していたかも知れないが、一瞬にして修二は吹雪の懐に入り、拳を突き上げてアッパーを放った。

 その綺麗なパンチは吹雪の脳を揺さぶり、その一撃で吹雪は綺麗な放物線を描き、地面に背中から着地し気絶したのだ。


「…そう言えば、なんでコイツと戦ってたんだっけ?まあいいか。」と前半までの記憶を覚えていない修二は吹雪を担ぎ上げ、欠伸あくびをしながら鞄を忘れずに自宅に帰る。



「ここは!」


 吹雪が目覚めると薄暗い部屋だった。そこには机しかない部屋だった。吹雪は起き上がり襖の部屋を開けると二人の人物がいた。


「おう、目覚めたか!」


「さあ、君の分もあるから座って食べよう。」


 そこには肉を大量に頬張り吹雪を見た時に一瞬で肉を飲み込んだ修二と宗春がいた。


「あ、これはどうも。」


 吹雪は席に座り器を受け取り、肉を一口食べる。それは美味かった。その一言でしか言い表せなく普通の味付けで普通の美味さだった。



 そして食事を終えて、修二が吹雪を送りに行くと言って、二人は路地に出た。


「あー久し振りに美味いの食ったな。」


 修二は爪楊枝つまようじで歯につまった食べ物をほじくりながら吹雪と並んで歩く、吹雪は立ち止まり修二も立ち止まり振り返り、吹雪は修二が振り返ったのを確認して言った。


「なんで、俺を助けたんだ?」


「?」


「敵なんだぞ? 敵なら、あのまま放置しておけば…。」


「助けたのは、俺がそのまま放置するのが嫌いだったからだ。これは俺の信念だからだ。友達が嫌なら共闘でいいんじゃねぇのか? それなら何時でも敵になれるし、その間に友情はねぇんだからよ?」


「アホくせ…。」


「俺たちは『覇気使い』で引かれあったんだ。だったらお前が俺を利用して俺もお前を利用する。『覇気使い』同士よろしくな!」


 修二は爽やかな顔で握手を求めた、吹雪も呆れた。けれどコイツと組めば天下を取れると思い始めた吹雪は握手に応じる。


「それとさ、お前の家どこ? 迷った。」


 修二の驚愕発言にズッコケるしかなかった。

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