ドラゴンブリード

ムネミツ

15歳のヒーローデビュー編

第1話 はじめてのたたかい その1

 「ひ~ひっひっひ、この高さから落ちたらどうなるかな~♪」

 六本の腕、黄色い毛むくじゃらな筋肉質の体、赤い複眼に牙の生えた口。


 まごう事なき蜘蛛の怪人が、建設中の工事現場の最上階にあるクレーンに

二十代とみられる白衣の女性を吊るしていた。


 月明りに糸がきらめき、女性の命は生か死かで振り子のように揺れていた。


 カンカンカンカン!!


 階段を駆け上がる金属音が響く!!


 「何者だっ?」

 女性をクレーンに吊り下げて、愉悦に浸っていた蜘蛛男が背後を振り返ると同時に

口から糸玉を吐き出すっ!!


 「おっとっ!」

 若い少年の声が風に乗って流れてくると同時にべチャッと糸玉が柱に張り付く。


 「あ~ん? どこのガキだ、人の楽しみを邪魔しやがってよ~?」

 蜘蛛男が全ての指から太く鋭い鶴嘴サイズの爪を出す。


 捕らわれた女性は、自分の運命に絶望して新たな侵入者の存在に気付いていない。


 「お前が攫った人を助けに来たヒーローだよっ!」

 ソフトシェルジャケットにストレッチパンツを着た、精悍な顔つきの少年が現れる。


 「ちぃ! 誰だろうと邪魔者は死ねっ!」

 プププッ!


 蜘蛛男から連続で糸玉が発射され、少年はそれを避け続けるも最後の糸玉を避けた

瞬間に足を滑らせ闇へと落ちて行ってしまう!


 「ひゃ~っひゃっひゃっ♪ 馬鹿なガキだ、落ちやがった♪」

 邪魔者を始末したと思い邪悪な笑いを上げる蜘蛛男。


 だが突然、鉄骨の足場の隙間の闇から巨大な青い炎の龍が昇って来た時の

衝撃で尻餅をつく!


 そして、蜘蛛男が見上げた空に浮かぶのは満月のスポットライトを受け龍の

ような強化外骨格を全身に身に纏った青いヒーローであった。


 そのヒーローは、蜘蛛男を無視して空を蹴り弾丸の如く吊るされた女性へ突っ込み

抱きしめて勢いで拘束の糸を突っ切り現場から離れた地上へと着地して拘束を解く。


 「……うう? ここは何処、あなたは?」

女性が意識を取り戻し、自分がひとまず助かった事に気が付く。


 「助けに来ました、俺はヴィラン対策室から派遣されたドラゴンブリードと言う

ヒーローです。ここからは急いで警察へ駆け込んでください!」

 女性に手短に情報を話すドラゴンブリード。


 「はい、ありがとうございました!」

 説明を受けた女性は、立ち上ると急ぎで大通りに向けて走り去っていった。


 「さて、まずは人質の救出クリアと次はあの蜘蛛男だな」

 ドラゴンブリード、今度は大地を蹴って怪人を討つべく空へと舞い上がった!!





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