花見とコンテストとお団子お姫 2

ということでお祭り当日である。

冒険者ギルドも出店を出すことになり、子供たちに手伝ってもらって、団子屋を出すことになった。

お団子というのは、今まで聞いたことがなかった。小麦粉をよく突いて、砂糖と混ぜたものを丸めて、串に刺したお菓子であった。お姫発案のお姫そっくりなお菓子であったが……


「あんまり売れないね」


リリーちゃんが暇そうにつぶやいた。

売れ行きはいまいちだった。


お団子、白くて丸くてきれいなお菓子だが、なんというか売りがないのである。ほのかに甘くて、もちもちした食感であるし、串にささっているから食べ歩きもしやすい。でもうん、なんとなく地味なんだよね。その辺はお姫とちょっと違った。


「ねえ、団子、売れないんだけど」

「うーん、花見といったらお団子だと思ったんだけどねぇ」

「なんで?」

「なんとなく」

「ふーむ」


まあ、出がいいくせに商売っ気強い団子でも失敗はあるのだろう。私は結構気に入ったので、適当にその辺に座りながらもっしゃもっしゃとお団子を食べていた。

色とりどりに咲く花をぼんやりと見ながら団子を食べる。隣ではルーちゃんがチョコバナナを一心不乱に食べていた。

なんとなく、団子が花見に合う、というのが分かった気がした。チョコバナナは確かにおいしいけど、チョコバナナを食べている最中はもう頭の中はチョコバナナオンリーだ。おいしすぎるからしょうがない。でも、団子ぐらいほのかな甘さだと、周りに目が行く。ぼんやりした甘さだからこそ、自然体でいることができて、花に目をやることができる。花見に団子は確かに真理なのかもしれない。


そんな感じで店の前に用意された赤いフェルトの布……緋毛氈というらしいが、それが掛けてあるベンチに座りながらのんびりしていると、エメラルダさんが寄ってきた。


「おいしそうに食べていますのね。それ、なんですの?」

「団子。うちで売ってるんだけどいまいち売れ行き良くないんだよね」

「そうですの。すいません、一皿くださいな」

「売ってる方が言うのもなんだけど、特別美味しいものじゃないよ。チョコバナナのほうがおいしいと思う」

「でも、エリスさんが食べているのを見ますと、楽しそうでしたわ」

「んー、花を見るにはちょうどいいぐらいのおいしさの食べ物なのは確かだね」

「何とも面白いですわね」

「そうかな?」


二人で団子を食べながらぼーっと花を見る。黄色い花。ピンクの花。白い花。赤い花。青い花。本当に色とりどりである。


「確かに特別美味しいものじゃないですが、お花を観賞しながら食べるには、ちょうどいいですわね」

「ねー、ほどよいおいしさ」


少しずつちびちびと食べていると、団子がこちらに寄ってきて、当然のように私の膝に頭を乗せてきた。


「仲、よいのですわね」

「んー、まあ、それなりに?」

「エリスさんがそこまで心ゆるす方を初めてみましたわ」

「そうかな」


団子と他の人で態度を変えているつもりはないのだけれども、まあ確かにちょっとかかわり方が違うかもしれない。私の方の問題ではなく、団子の問題だ。こいつが無駄になれなれしくて図々しいのだ。止めるのも面倒だから好きなようにさせてるところはあり、そういうところで親しく見えるのかもしれない。

私の膝でくつろぐ団子のほっぺをむにむにとこねる。「むみゅー」と謎の声をあげる団子。お団子よりも触り心地の良い団子の頬っぺたであった。

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