第13話 自分の言葉

 過去に書いたものをみて悶絶する気持ち

 稚拙と切り捨ててしまうものと、懐かしい思いが込み上げてくるもの


 あの時に何を考えていたのか、あの時にどうしてそう思ったのか

 音楽を聴いていればその旋律に乗せて、景色を見ていたのならその背景が記憶の引き出しを開ける手助けをしている


 恥ずかしくて

 思わず目をつむってしまうことも

 どうしてこんなことを考えていたんだろうと

 哀しくなることも

 

 全部自分で

 全部自分だから

 なんていうのかしっくり心に入ってきたりする


 それは自分だから許せるのか

 自分だから許せないのか


 その時から自分が何も変わっていない

 成長してもいないし、退化もしていない


 自分は自分のまま

 そのままだから、その言葉を受け入れられるのだろうか


 自分の思う気持ち

 誰かを想う気持ち

 あふれ出した感情が言葉になり

 ずっとそこに残っている


 言霊信仰という

 日本の姿があったとして

 自分の言葉に何か力があるのだとしたら

 それは自分の中に語り掛けてくる虚像


 自分が自分であった証拠で

 自分が偽りを演じていた証拠で

 自分自身がそこにいて、ありのままの自分だと

 思えるようなそんな文字たちがそこに並んでいたんだ


 嫌悪するような

 人が見れば目を塞ぎたくなるような言葉だとしても

 キモイと言われて別れを切り出される言葉でも

 それは自分の言葉で

 自分が言葉にして切り離したとしても

 それは自分から出た言葉であることをやめることは無い


 いつまでもまとわりつく亡霊のように

 いつまでも自分の心の中にあり続ける

 だから

 どれだけ時を経たとしても

 自分の書いた文章の読者から

 自分が消えることは無く

 火にくべて焼いたとしても

 自分という存在がある限り

 消えることは無い


 呪いのようで

 自分を解放できる唯一の時間

 自分の言葉だから自分の気持ちが乗せやすいのかな

 ありきたりの言葉を重ねてそう見えるだけなのか


 私は私の言葉を紡ぐ

 それは私のために

 それが誰かに届くとしたら

 それは誰かのためでもあって

 私の言葉に

 新しい火が灯った瞬間なのかもしれないと

 浮かぶ言葉に重ねる自分の

 亡霊に話しかけていた

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