第11話 ドライブスルーのバーガー事件

 あたくしがガンバって書いている小説「アナーキー・イン・ザ・テニスコート」。それにピッタリな自主企画があったので参加したんだけど、なんかきゃぴきゃぴ、キラキラした中学生の集まりだったみたいで、場違いこの上なく、なんかこっぱずかしいので速攻削除も考えたが、それもいやらしいなあと思い、そのまま置いている。やっぱ文面からにじみ出る加齢臭はお肌のくすみより隠せない。若い子は敏感だからことごとくスルーされていることだろう。


 まあいい。その子たちもいずれあたくしの気持ちが分かる時が来る。


 えっ、スルーされる? スルーだって? じゃ、ドライブスルーで起きたバーガー事件をここでお話しようではないか。


 ヘゲレス生活も、結構長いあたくし。来た頃はロンドンマジックにかかっており、見るもの聞くもの全てがワンダフォーだった。不便なことも、ちょっぴり(かなり)汚いところも、洗い物食器を水ですすぎをしないアワアワのままなことも、家の中土足も、むっちゃブリティッシュ♥とメロメロしてた。

 住み始めて、理不尽なことに遭遇するも、「おっちょこちょいだなあ、この国の人は」と清き心の持ち主だった当時のあたくしはそう信じて疑わなかった。


 それが、英語力もちょい上がり、スラングもわかるようになると、むむ、あたくしの身の上に起こる理不尽は、あたくしがアジア人だから? これはもしや、人種差別? そう考えるとすべてが腑に落ちる。そう思うようになると、いちいち反応してしまう。疑心暗鬼。ひねた性格にどんどん変わっていくも、ある日、到達したよ、カタルシス。悟ったよ。はいはい、どうぞ、どうぞ。チンチョンチャンっていわれても全然平気。そもそもチャイニーズ違うし、目をつり上げるジェスチャーとかされると、イエスっ、やったぜ。ともはや快感さえ覚える。どうぞどうぞ言ってくださいやってください。はいはい、皆さんに神のご加護がありますように。と聖人もどきになるも、最近では、一周して、この国の人はマジ、おバカな人たち、天然な人たちが結構な数いてるんじゃないかと思ってきた。


 それを裏付ける信じられない事件が起きた。


 先日、娘とその友達を街まで迎えに行ったかえり、腹が減ったとぬかしやがるのでドライブスルーに行った。鳥系のヤツ。

 あたくし、この国長いが、未だに電話で話すとか苦手。大概、この国の電話オペレーターは外国人なので、ものすごっい訛りのきっつい英語。電話とか面と向かわないで話すのは苦手。このドライブスルーのオペレーターの声が超訛りの英語だった。


 とりあえずフィレットバーガーセットを三つ買って帰宅。



 そしてバーガーのパッケージの蓋を開けてびっくりこいた。そこにあるはずのバーガーのバンズが無いのである。オープンサンド状態。三つが三つとも、バンズの上部がない。袋のどこを探してもない。



 こんなミスする? バーガーの上のバンズ忘れるって、パッケージのふたする時に気付くやろ。どうやったらこんなミスが出来る? 


 いやがらせ? ああ、コレはあたくしの英語がネイティブではなかったから? とひねた心が蘇る。いやいや、そんなのお互い様じゃねーか。それに、そんなことはないだろ、作る人と渡す人は違うはず。これはフツーにそこで働いている人がヤバいでしょ。


 普通にこんなミスが日常に起こっているのだろう。ザ・UKスタンダード。


 ありえへん。


 なんか、もう、ウケる。怒りを通り越して爆笑。


そんな最中、


バーガー食べない、うちのイギリス人のベジの人は憤慨し、速攻コンプレインの電話をしていた。


「つか、これ笑うところだろ?」


「いや、キミはいいだろうが、僕は許せない」


と変にマジになっていて、なんかイギリスの深い闇を垣間見た瞬間だった。


 










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