第4話

 朝、奥野家のインターホンが鳴る。


「おっす」


 玄関を出てきた奥野武志。

 家の前には数人の同級生が居た。

 学校に行く時間だ。

 数人の生徒は周りの警戒を怠らない。


「おはよう。武志」

 制帽をかぶった男子生徒が言った。


「おう、キャップ」

 奥野武志が答える。

 制帽をかぶった男子生徒のあだ名はキャップという。


 奥野武志がガチャリと門扉を閉じると一同は学校の方向に歩き出した。

 そして五軒横の家の前で立ち止まる。

 ピンボーンとインターホンを鳴らす。


「おはよう」

 三つ編み、眼鏡の女子生徒が家から出てきた。


「おはよう、メガネ」

 武志が言った。

 この三つ編みメガネの女子生徒のあだ名はメガネだ。


 再び一同は学校に向かって歩き出した。

 彼らは集団登校をしている。

 住んでいる地域が同じなので、みんな幼馴染である。

 またしばらく歩いた所にある家でインターホンを鳴らした。

 

「あれ?もうあの子、家を出て行ったけど?」

 マキの母親はビックリして言った。

 

「え?そうなんですか。わかりました」

 かるくマキの母親に会釈してからメガネが言った。


 マキは男子からマキマキとあだ名されていて、髪の毛がマキマキの女の子である。

 集団登校をしないで一人で先に行くなんて危ないな。

 男に会いに行ったのかしら?

 とメガネは考える。

 この世界では命が軽い分、恋愛感情は強い。

 恋愛も命がけである。


 また学校に向かって一同は歩きだした。

 直ぐに嫌な物を見た。

 遠目にもやばいとわかる。

 同じ学校の制服を着た女子生徒の死体だ。


「マキ」

 メガネが女子生徒の死体に駆け寄る。

 その周りを囲んで生徒一同は周囲を警戒した。


「おい、死んでいるのか?」

 奥野武志が言った。 


「わかんない」

 メガネが言った。

 

「マサカズ、加藤。マキマキを運んでくれ。いったんマキマキの家まで退こう」


「おお、判った」


 マサカズの背中におぶさったマキマキの口から血が吹き出た。


「おっと、まだ生きてるぞ、おい。こりゃ急がないと」

 加藤が言った。


「おう、行くぞ」


 マキマキを背負ったマサカズを背にして、みんなは今来た道を後退する。



 一同はマキマキの家まで引き返してきた。 


「マキちゃん、マキちゃんどうしたの、何があったの!」

 狂乱する母親。

 

「おばさん、救急車、救急車呼んで。早く」

 メガネがマキの母親に叫んだ。


 学生一同は救急車が来るまでマキマキを見守った。

 今日は遅刻だ。


 一人で行動すると殺されやすいのに、マキの馬鹿。

 とメガネは思った。

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