黄忠 漢升

黄忠 漢升       

黄忠こうちゅう、字は漢升かんしょう南陽なんようの人だ。


はじめ荊州けいしゅう南部の長沙ちょうさ郡で

劉表りゅうひょうの配下として働いていたが、

劉表の死亡に伴った曹操そうそうの侵攻を受け、

荊州が揺らぐと、赤壁せきへきののちに

長沙を支配した劉備りゅうびのもとに転属。

劉備がしょく入りするのにも付き従った。


葭萌かぼう関、成都せいとなど、

蜀平定の戦いにあっては常に先陣を切り、

特一級の戦功をあげていた。

その戦功が讃えられ、討虜とうりょ將軍となった。


更には、夏侯淵かこうえんが守っていた

漢中かんちゅう定軍山ていぐんさん

夏侯淵軍は精強だったが、黄忠、

兵を引き連れ進軍、よく兵らを鼓舞し、

進撃の銅鑼は天を、鬨の声は谷を震わせ、

一戦のもとに夏侯淵を斬った。


このため軍は漢中を

手放さざるを得なくなった。

つまり、劉備が漢中王になるにあたっての

第一等功績だ。

なので官位も一気にジャンプアップ、

征西将軍にまで引き上げられた。


さて劉備、漢中王になるにあたって、

四方を重要な将軍で固めたい。

すると、すぐに黄忠が思い浮かぶ。


ここで諸葛亮しょかつりょう、懸念を劉備に漏らす。


「黄忠は元々関羽かんう馬超ばちょうのようには、

 武名が知れ渡っておりませんでした。


 なのに主上は、いきなりかれを

 両名と同列になさろうとお考え。


 張飛ちょうひや馬超は、かれの武勇を

 間近にて確認しております。

 賛同もやぶさかではないでしょう。


 問題はヒゲです。ヒゲ。

 荊州けいしゅうからこの報せを聞けば、

 まーた馬超の時みたいに

 あーだこーだ言ってきそうです。


 あれ面倒だったんですよなだめるの!

 あんなの二度とごめんですからね!」


わーったわーった、劉備も答える。


「あいつのこた、俺がなんとかすっからよ」


こうして黄忠の官位は

関羽たちと同列に引き上げられた。

爵位も關內侯にまで昇格。


だが、翌年に死亡。

剛侯ごうこうと諡された。


子の黄敘こうじょがあとを継いだが、夭折。

後継ぎはいなかったため、家門は絶えた。




黃忠字漢升,南陽人也。荊州牧劉表以為中郎將,與表從子磐共守長沙攸縣。及曹公克荊州,假行裨將軍,仍就故任,統屬長沙守韓玄。

先主南定諸郡,忠遂委質,隨從入蜀。自葭萌受任,還攻劉璋,忠常先登陷陣,勇毅冠三軍。益州既定,拜為討虜將軍。

建安二十四年,於漢中定軍山擊夏侯淵。淵眾甚精,忠推鋒必進,勸率士卒,金鼓振天,歡聲動谷,一戰斬淵,淵軍大敗。遷征西將軍。

是歲,先主為漢中王,欲用忠為後將軍,諸葛亮說先主曰:「忠之名望,素非關、馬之倫也。而今便令同列。馬、張在近,親見其功,尚可喻指;關遙聞之,恐必不悅,得無不可乎!」先主曰:「吾自當解之。」遂與羽等齊位,賜爵關內侯。明年卒,追諡剛侯。子敘,早沒,無後。


黃忠が字は漢升、南陽人なり。荊州牧の劉表は以て中郎將と為し、表の從子の磐と共に長沙の攸縣を守らしむ。曹公の荊州を克せるに及び、假に裨將軍を行せられ、仍ち故の任に就き、長沙守の韓玄に統屬さる。

先主の南に諸郡を定むるに、忠は遂にして質を委ね、隨從し蜀に入る。自ら葭萌を受任し、還りて劉璋を攻め、忠は常に先に登りて陣を陷し、勇毅なること三軍に冠す。益州の既に定むるに、拜して討虜將軍と為る。

建安二十四年、漢中の定軍山にて夏侯淵を擊つ。淵が眾は甚だ精なれど、忠は鋒を推し必進し、勸めて士卒を率い、金鼓は天に振るわせ、歡聲は谷を動かし、一戰にして淵を斬り、淵が軍を大いに敗る。征西將軍に遷る。

是の歲、先主の漢中王に為れるに、忠を後將軍と為して用いんと欲し、諸葛亮は先主に說きて曰く:「忠の名望、素より關、馬の倫に非ざるなり。而して今、便ち列を同じうせしめんとす。馬、張は近きに在りて、親しく其の功を見、尚お喻指すべし。關は遙かにて之を聞きたるれば、恐るらくは必ずや悅ばざるも、得べからざる無きや!」と。先主は曰く:「吾れ、自ら當に之を解さんとす」と。遂には羽らと位を齊しうし、關內侯の爵を賜る。明くる年に卒し、追って剛侯と諡す。子の敘は早きに沒し、後は無し。




考えてみりゃ黄忠の武勲、曹操軍のデカい山の一角を落したって意味では蜀軍内でもだいぶ突き抜けてるんだよね。訳す前までは「黄忠の扱い雑だな!」って思ってたんですが、これ改めて読んでみりゃ陳寿が、余分な表現を嫌う、あの陳寿が、わざわざ定軍山攻略のパートに小説ねじ込んでくるぐらいのことしてるんですね。そうか、誤解しててごめんよ陳寿……むしろあなたは頑張ったんだね……蜀の奴らが黄忠に関する記録残そうとしなかったんだね……つっても早くに家門が絶えちゃってるから残しようがなかったのかもだけど……


あるいは外様の躍進を快く思わない関張の子供たt(それいじょうはいけない)

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