敗者の街 ― Happy Halloween Ⅲ ―

 さて……今年もハロウィンがやってきたぜ。

 時系列? 設定? そんなモン気にしなさんな。面白けりゃそれでいいんだよ。

 ……と、念の為だが、「敗者の街」第一部までのネタバレにゃ気を付けな。なんならURLでも貼っといてやるよ。



https://kakuyomu.jp/works/1177354054889605493



 てなわけで、楽しんでいってくれや!




 ***




「今回は新入りが来る」


 俺の発言に、集まった面々に緊張が走った。とりあえず集まれそうなメンバーをとっ捕まえて「今年もハロウィンやんぞ」って言った時点で、既に数人は怪訝けげんそうな顔をしてたが、俺の一言でそいつらはさらに青ざめた。

 ただでさえカオスなヤツらだ。「今度は何が起こるんだ」って考えるのも仕方ねぇだろう。ま、俺は楽しくて結構だがね。


「質問いいかい? 第二部のネタバレは大丈夫かな」


 サワが早速メタ発言をしてくる。質問いいかい? って言っておきながら返事を待たねぇのはさすがだぜ。


「そこら辺は、どうにか大事な部分を隠しておいてくれや」

「ふむ、なるほど。分かったかいノエル、カミーユ」

「なんで僕らに言うの?」

「ボクは引きこもりたい気分だからね!!」


 堂々と胸を張りながら、サワは引きこもり宣言をする。

 ま、想定内だわな。人嫌いな連中がいるのも仕方ねぇし、無理強いするつもりは元よりねぇ。


「面倒臭いわ。間違えた時にそっちで伏字にしてくれるかしら」

「しゃーねぇな。何とかしておいてやるよ」


 ハロウィンもこれで3回目だし、どうにかなるだろ。……さぁて、仮装の方はどうすっか……。


「よーし、まずオールドメイド(ババ抜き)大会でもやるか。そんで、勝った奴から仮装の決定権が得られるってルールだ」


 もうそれだけで一本番外編が書ける気もしたが、こまけぇことは気にすんな。面白けりゃそれでいいんだよ。


 さて……オールドメイド(ババ抜き)は心理戦よりも運の要素がかなりでかい。人数が多けりゃ多いほど、相手の手札を読むのも苦戦するしな。……とはいえ、顔に出やすかったり正直すぎるヤツほど苦戦するってのは事実かもしれねぇが。


 ルールがシンプルであればあるほど、勝負の奥深さは増す。……しかも、ここには腹に一物抱えたメンバーがそれなりにいると来た。こりゃ、なかなか見応えがありそうだ。


「それ、あみだくじで良くなぁい?」

「僕もそう思う」

「そうだな。公平さと効率を考えればくじで決めるのがベストだろう」


 シレイの言葉に、キースやレヴィも同意する。……まったく、ロマンの分からねぇヤツらだぜ……




 ***




 今回の会場はキースが作った幻影の中ってことになった。

 意思によって姿を変える空間ってんで、色々便利だからな。問題は、理屈がよくわからねぇことだが……ま、どうにかなんだろ。


「これ、恒例行事なの?」


 着替える前のオリーヴが聞いてくる。

 第二部からの新入り勢だからな。わからねぇのも無理はねぇ。


「ハロウィンだからな。世界観からしてもピッタリだろ?」


 とはいえ、今回はエリザベスとアダムズの方のレオが別の予定につき不参加だ。……息子のことで、話し合いたいことがあるとか何とか言っていた。

 夫婦とはいえ微妙な距離感の二人だが……大事な話があるってんなら仕方ねぇ。首を突っ込むのも野暮だしな。


「そうなんだ……。楽しそうだし、私は全然アリかな!」


 ノリの良い性格で良かったぜ。

 こういう時は、細かいことは気にせず楽しんだ方がいい。……そうだろ?


「何? どういうこと? ここはどこ? 何、仮装って。全然分からないんだけど」


 真面目すぎると、背後のヤツみたいに混乱するだけになるしな。

 ……あいつはマノン、だったか。確かにこう言う場は苦手そうだ。


「慣れないなら引きこもりゾーン作ったから、おいで! なんなら仕切りでブースも作れるよ!」


 衝立の裏からひょこっとサワが顔を出し、マノンを手招く。開催が多くなってくると、便利になってくるもんだな。


「とりあえず衣装に着替えて来い。着替えはあそこに『着替え用暗闇ゾーン』が5つくらいあるから、カーテン閉めて好きにやってくれ。他のヤツらも使うから、早めにな。着替えが難しかったら言えよ。ひろげるから」

「ねぇそれどういう仕組み?」

「俺もよく知らねぇが、闇は持て余すくらい溢れてるからな。ちったぁ有効活用しねぇとだろ」


 怪訝そうなオリーヴに、衣装を渡しつつ説明する。ほとんど説明にゃなってなかったが、オリーヴは首をひねりつつ着替えに行った。


 ……さてと、実はまだ、話しておくべきことがある。あれはくじで衣装を決めるってなった後のこと……また一悶着が起こった。

 レヴィがホワイトボードに書いた「乗り越えるべき課題」の欄で強調されていたのは(あいつほんと真面目だな)……


 マンネリ化

 および

 くじは果たして公平なのか?


 この二つだ。


 前者は実にシンプルな話で、毎回同じことをやってちゃ飽きが来るってこったな。

 後者はもう少し複雑な話になる。違う衣装を着ることになる以上、そこには一定の偏りが生まれる。そして、一見公平に思える「くじ」……ここにも一つ、罠がある。


 それは、「運」だ。


 人によっちゃ一笑に付す論説かもしれねぇが、「運」は存在する。天の意思か、はたまた作者の意図か、そういうのは置いておいて……「ツキ」の流れは事実として存在する。俺にゃわかる。

 それを掴めるか掴めないか、感じるか感じないか、そこには間違いなく天賦の才と鍛えた感覚が関係する。俺は、そう信じている。


 ……おっと、話が脱線したな。

 つまり、アレだ。「運任せ」は考え方によりゃあ全く公平じゃねぇってことさ。


 じゃあどうするか?

 問題はそこだ。仮装パーティーのマンネリ化、および「運」という名の不公平……それらをどう解決するか……考えた結果、シレイが面倒くさそうに言った。


「もうさぁ、全員スーツで良くない?」


 それだ。

 全員を黒スーツで統一させるという、ある種不気味な黒ミサもしくは葬式みてぇな光景……まさしくハロウィンらしい。ローザの職場もそんな感じだったが、あそこは確か同じ服であることで連帯感を高め下僕としての意識を……やっぱそこら辺は理解できないので置いておくか。世の中は広いし、俺にもわからねぇことは山ほどある。


 とにかく、スーツならややこしいセンシティブなアレコレもそれなりにクリアしやすい。なかなか悪くねぇアイデアだ。

 ……ってことで、さっきオリーヴに渡したのもスーツだ。サイズについては事前に申告してもらって、申告が嫌なやつは仮装しなくてもOKってことになった。サワとかマノンがそっちだな。ほら、今も引きこもりゾーンでスナック菓子を食ってやがる。


「ロブ、ネクタイ緩んでるぞ」

「えっ、ほんとに!? ありがとう、姉さん」


 ハリス家んとこの姉弟は、相変わらず仲良しだな。……っていうか、ローランドが過保護なだけか。……いや、アンドレアって呼んだ方が良いんだっけか?


「アン、ボタンかけ違えてんぞ」

「えっ」


 ……と、今度はアンドレアがロデリックに指摘されてやがる。

 ハリス家は長男もうっかりしてやがるし、たぶん遺伝だろう。


「ロー、私の肋骨を知らないかね」


 そこにロジャーが歩いてくる。顔面の骨を隠す気はねぇらしい……って、ほらな。言ったそばから骨を落としてやがる。

 つか、やっぱりローランドって呼んだ方がいいのか……? どっちでも良いんだっけか……?


「わかる。そこ、よく落とすんだよな」


 わかる、じゃねぇよローランド。なんでわかっちまうんだよ。

 まあ、同じ「死者」でも俺にゃ肉体がねぇからな。そこら辺はカミーユとかのが共感できるのかもしれねぇ。

 ……と、噂をすればカミーユの声がした。


「ねぇレヴィくん、ネクタイってどう付けるんだっけ?」

「……今まで付けたことがなかったのか……?」

「いや、ノエルにやって貰ってたんだけどさ……あいつ、引きこもりゾーンの方行っちゃって……」


 どうやら、カミーユはネクタイに手間取っているらしい。

 つったって、俺も付けたことねぇけどな。付けるような歳になる前に死んじまったしよ。


「待って首の断面に挟まった。あれ、変なとこにくい込んで取れない……?」

「大丈夫か?」


 おっと、嫌な予感がしてきたな。ロデリックあたりのために、グロ警報を出す必要がありそうか……?


「レヴィくん、ちょっと僕の頭持ってて」

「は?」


 カミーユは自分の頭をガパッと外し、レヴィに渡した。

 ほーら、そう来ると思ったよ……。

 レヴィは突然知人の生首を持たされて固まっている。そりゃそうなる。


「あ、取れた!」


 ……で、レヴィの腕の中の首が喋る。シュールすぎんだろ。

 アンドレアはそっとロデリックの目を隠し、自分も顔を背けた。通りすがりのグリゴリーはビビって叫んだりしつつも、そそくさと去っていった。

 レヴィはどうすればいいのかわからず、立ち尽くしている。


「取れた……とは、首がか」

「え? ネクタイだけど?」

「あ、ああ、そうだったな。……俺はどうすればいい」

「もっかい乗っけて。角度は自分でどうにかするから」


 レヴィは混乱したまま、カミーユの首をぎこちない手つきで胴体の上に乗せた。


「へぇ、すごい仮装だね。どうやったんだい?」


 ……と、そこでもう一人の新入りが横から口を出す。

 名前はポールだったか。まだここのカオスさに想像力がついてってないらしい。ま、それも仕方ねぇか。


「どう……なって、いるのだろうな……確か『街』に巣食う怨念……いや、あれは怨念なのか……?」


 レヴィが複雑に考えすぎてショートしかけている。不憫なので、助け船を出してやることにした。


「真面目過ぎんだよ、お前さんはよ。こういう時は『種も仕掛けもねぇぜ』でいいんだよ」

「……なるほど、一理ある」

「実際種も仕掛けもないしね」


 よっこいせ、と首の角度を調節し、カミーユはなぜかすっきりした表情だ。

 ポールは「おおー」と目を輝かせ、興味ありげにその様子を見つめる。


「それ、ぼくにもできるかな?」

「できるだろうが、おすすめはしねぇな」


 それだけ伝え、俺はやれやれと首を振りつつその場を立ち去った。

 収拾つけるの大変そうだしな。




 ……で、ほっつき歩いてると、普段と代わり映えのしねぇアドルフを見つける。

 片腕のないスーツ姿って、いつもそんな感じの服装だったよな、アイツ。

 タバコを吸うアドルフの隣には、ブライアンが座っている。話は全く広がっていない。……っていうより、沈黙に場が支配されている。


「ごめんごめーん、二人とも待った? オッサンと尾崎さん探してたー」

「飲み物取ってきたけど、ブライアンはお茶でよかったっけ? アドルフは水な。カフェイン控えろ」


 イオリとグリゴリーが走ってきて、一気にその場が賑やかになる。つったって、ブライアンは「ん……ありがと」しか言ってねぇし、アドルフも「くそ……コーヒー……」しか言ってねぇけど。

 オザキは横で半透明のまま突っ立っているが、その手はしっかりイオリと繋がっている。仲良くできてるみたいで何よりだぜ。

 つか、グリゴリー……なんか、あんまりスーツ似合わねぇな……着られてるって感じがすげぇ……。

 とか言ったら「顔のせいか!!! 顔が悪ぃってか!!!」みたいにキレられそうだから、黙っておく。


 何はともあれ、イオリ達は相変わらず仲良くしてるみたいだな。

 アドルフはちっとばかし疲れてるみたいだが……ま、この会場、トラウマの場所を改築したようなモンだしな。仕方ねぇさ。

 ……しかしレオの野郎、遅ぇな。つっても、アイツは昔から時間にルーズなヤツだが……。


「あの……」


 ……と、背後から青い髪の青年に話しかけられる。よく見たら髪には赤いメッシュもあり、耳だけでなく唇にもピアスがついている。……で、服装はもちろんスーツ。良いセンスしてんじゃねぇか。こいつも新入りだったか?


「ここは……どこ、なのでしょうか……?」


 パンクな外見に似合わず、青年はオドオドと話す。

 人は見かけによらねぇってこったな。


「その、この人形……が……サワ……? という方の元に、行きたいと……」


 恐る恐る見せてきたのは、サワの友人とか何とか呼ばれてる人形だった。

 声が聞こえるやつには聞こえるらしいが……俺にはさっぱり何を言ってるのやらわからねぇ。


「引きこもりゾーンでエンジョイ中だろうな。レヴィかカミーユにでも声かけな。アイツらなら案内してくれると思うぜ」

「カミーユ……聞き覚えのある名ですね……。わ、分かりました。それでは……」


 やけにびくびくと肩を震わせ、男はそそくさとその場を立ち去った。こりゃまた、変わった野郎が来やがったモンだ。


「サーラ、やっぱり……僕は、君のことが好きらしい」


 ……と、気になる声がしたから振り返ってみる。

 うんざりしているサーラと、真剣な表情のキースが目に入った。


「だから、何度も断っただろ。あんたもしつこいね」


 …………。

 正直、ここは傍観者じゃいられねぇな。

 サーラは未だに俺を好きでいるらしいし、俺も……まあ、死んでなかったら……とは、少しばかり思わなくもない。

 サーラがキースの告白を断っているのはまた別の話なんだがな。単に好きじゃねぇんだと。キースの野郎、嫌がられてんだから諦めろよな……。


「……分かってるんだ。どうしたら、諦めがつくんだろう」

「……ま、その気持ちはわかるよ。あたしもどこぞの薄情モンに、ずーっと心を奪われてんだから」


 ぐっ、こりゃ、聞いてるのわかってて言ってやがるな……!?

 ああ、クソ、視線が刺さる。……兄弟に話しかけて誤魔化し……そういや、まだいねぇんだったか。


「二人ともいい加減諦めな。踏ん切りつけて、先に進むのが一番だぜ」


 なーんて、カッコつけてみたはいいが……そうさな。こればっかりは、弱い話題だ。

 死者であることを、最近は楽しんでいる節もある。……だけど、俺だって昔はそれなりに悲しんだし悔やんでたよ。


 サーラが俺を置いて成長していくことも、気にしてなかったといやぁ嘘になる。


「お前さん、生き返らせたいのはアンジェロなんだろ」

「そうだよ。生き返らせたいのはアンジェロだ。……そんでもって、ケリをつけたいのはレニー、あんたとの恋だ」

「……ま、そこはお預けにしとこうや。今考えたって仕方ねぇことだろ?」

「そうだな。第二部で掘り下げられるかもしれないし」


 キース。そこでぶち込んで来やがったか……。

 ぶすっとした顔しやがって……。そりゃあ、俺も悪かったと思ってるよ。てめぇもサーラのこと好きなのに、目の前で良い雰囲気出すのは嫌がらせかって話だよな。そこはすまねぇ。……だがな、サーラが嫌がってんのにしつこくしてるってことはどうしても釈然しゃくぜんとしねぇ。本当に好きなら、相手の気持ちを考えろってんだ。


 ま、そこらの決着はおいおいってことかね。……それはそうとして、サーラのスーツ姿はなかなかいいもんだ。


「……ここはいつから、君の職場になったのかな」

「ここまで着こなし自由じゃないわよぉ。うちはネクタイの色やベルトに至るまで統一しているもの」

「いっそのこと、首輪を付けてしまえばいい。君も、好みの人間を飼い慣らしているんだろう?」

「あらぁ、そういうものに頼っているうちは二流よぉ」


 どっかから変態兄妹の物騒な会話が聞こえてきたが、無視しておくか。俺にはそういう、アブノーマルな趣味はないんでね。

 そういや、こういう時のロナルドは上手く人型に擬態ぎたいでき……あ。…………指先溶けてるのは見なかったことにするか。




「仮装もいいけど、みんなで同じ服着るのも悪くないね」


 歩き回ってると、ロバートがレヴィに話しかけてるのが見えた。


「……喪に服しているようにしか見えんのだが……」


 それもわかる。……ま、間違ってねぇ気もするがな。

 ここにいるヤツの何人が生者で何人が死者か、俺はもう忘れちまったし。


「叔父さん、何ここ。マフィアかなんかの集会?」


 ……と、アンジェロが話しかけてきた。こいつ、そういやレヴィに失恋してたんだっけか。……そりゃあ、声もかけにくいだろうな。

 それはそうとして、マフィアと言われりゃそうも見えるな。盲点だったぜ。


「なぁに、新たな試みってヤツだよ。マンネリ化だの不公平感だのの課題をクリアしたくてな……あと、ハナから同じ格好なら描写のコストも下がる」

「描写? 何の話?」

「細けぇことは気にしなさんな……って、アンジェロだけか? レオはどうした」

「んー……なんか、来る途中でどっか行っちまった。先行ってろって言われたけど……」


 首を捻るアンジェロ。……ったく、相変わらずマイペースな野郎だ。

 ひょっとして、もう一人の「レオ」達と鉢合わせた……とかか? エリザベスの誤解はとっくに解いたはずだが……まだ揉めてんのかねぇ。


 ノエルが飲み物を取るついでにキョロキョロと周りを見渡し、ため息をついて引きこもりゾーンに帰っていく。


「あー……あの人……。ちょっとオレ、行ってくる!」


アンジェロが走ってノエルの方に向かっていく。……そういやノエルのヤツ、レオが人間離れしてるから気になってるんだったか?


「レニー!」


 ……と、このアホそうな声は間違いねぇ。ようやく来やがったな。

 いったい、どこで何してたんだか。


「よぉ、遅かったな兄弟。どこで油を売ってやがった?」


 ま、どうせ女口説いてたとか、メシ食ってたとか、そういうのだろうけどな。


「んー、いや、ちょうどおめーが死んだあたりのとこ通ったからよ。骨とか残ってねぇかなって」


 ……。

 ああ、そうか。こいつはバカなりに分かってんだな。

 俺が死んでもなお、「存在し続ける」ためにあらゆる工夫を重ねてる……ってことを。


「やっぱ、肉体? あるとやりやすいんだろ? んじゃあ、探しといてやろうかなってよ。オレ、一応兄貴だし?」

「……。あんがとよ、兄弟。……でも、兄貴は俺だぜ」

「えー、オレだろ」


 ったく、しんみりするのは性にあわないんだっつの。馬鹿野郎が。


「それにしても、よく覚えてたな。30年も前のことなんざ、記憶から吹っ飛んだもんかと思ったぜ」

「そーそー。ほぼ吹っ飛んじまったんだわ。もしかしたら違った場所だったかもしんねぇ」

「……だろうなぁ」


 俺は今でもよく覚えてるが、ま、仕方ねぇさな。

 記憶力は人それぞれだし、レオはその中でも更に鳥頭だ。


「……で、今日何すんだっけ。ババ抜き大会?」

「お、惜しいな。もう少しでそうなってた」

「マジか。オレ、ババ抜き超強いぜ。カンでどうにかすっから」

「相変わらず野生で生きてやがんな」


 他愛のない話をしていると、時間はあっという間に過ぎる。

 俺がいつまで存在できるか。レオといつまでつるんでいられるか……わかんねぇことだらけだが、別に構いやしねぇ。

 すぐそこに終わりが見えるからこそ、今の楽しみを噛み締められる。俺みたいなのには、それぐらいでちょうど良い。


「来年、また会えっかな」

「さぁな」

「そういや、墓とか作っといた方が良い?」

「らしくねぇことはやめとけ。野ざらしに任せんのでじゅうぶんさ」

「へーい。……で、結局ババ抜きは?」

「だからやらねぇことに……。……いや、別にやっても構わねぇか。俺と勝負してみるかい?」

「おっ、マジ? んじゃ負けた方罰ゲームな!」


 今日も楽しかった。それだけで結構なことさ。

 そうは思わねぇかい?


「おいおい、トランプで俺に勝つ気かよ」

「おーおー、スカしてっと痛い目見んぞ相棒!」


 ……おっと。騒いでるうちに、そろそろお別れの時間かね。

 んじゃ、また会える日を楽しみにしてるぜ。

 Buon Halloween!

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