2021年 9月

「秋が嫌いだった理由」を思い出しました

 と、過去形で題名を付けておきながらですが、現在でも「嫌いな部分>好きな部分」の季節であります。

 理由とすれば、まず、なんといっても、大好きな夏が終わってからの季節である、ということ。そして、二つ目の理由は、晩秋には大嫌いな氷雨が降る日が続くこと。そして、三つ目の理由は、冬至まで日が短い日が続くこと。四つ目の理由は、熊が里に出没してランするのがままならなくなること、です。

 これだけ嫌いな理由があれば、紅葉がきれい、だとか、食事が美味しい季節だとかという秋の好きな部分も簡単に凌駕してしまいます。


 しかし、もっと過去にさかのぼって、私が子どもの頃から秋が嫌いだった理由を先日、ひょんなことから発見しました。

 それは、先月末に4人組男声コーラスグループ「ボニージャックス」でトップテナーを務めた西脇久夫さんがお亡くなりになったニュースを見て思い出したからです。

 ボニージャックスといえば、「一週間」「手のひらを太陽に」などを歌ったコーラスグループですが、代表曲はなんといっても「ちいさい秋みつけた」だと思います。


 この誰もが知っている童謡を保育園の頃も、小学校低学年の頃にも先生に歌わせられました。

 「こんな暗い感じの歌をなぜ先生は歌わせるんだろう?」と子ども心ながら思いながら「ちいさい秋 み~つけ、た~」と最後の歌詞の音程を高くしながら歌ったものです。


 作詞はサトウハチロー氏。調べてみると、やはり、作詞者の(暗い)過去を投影しているのでは…という解釈がされていました。

 ハチロー氏は、3歳ごろ熱湯で脇腹に大やけどを負い、数年間病床に伏せっていたそうです。やけどは大きな後遺症となり、ハチロー氏は母親の背中に背負われて小学校に通ったそうです。

 体の不自由さもあり、ハチロー氏は家にこもりがちだったそうですが、引きこもっていた部屋の中で、外で遊んでいる他の子どもたちがうらやましく、その様子をじっと耳を澄まして聴いていたことを歌詞にしたのではないか、という解釈です。


 一番の歌詞に出てくる「めかくし鬼さん」は、外で元気に遊ぶ子供たちの様子を、百舌鳥もずは、縄張り争いをするために甲高い声で鳴く秋の季語になっています。

 二番の歌詞からは、その子の部屋の様子を垣間見れますが、此処に書きたくないくらいの暗さと寂しさです。

 三番の歌詞に出てくる風見の鳥は、クリスチャンだったハチロー氏の母がハチローをよく連れ出した教会の屋根にあった風見鶏だそうです。


 まあ、そこまで調べ上げなくても、子ども心ながら、この名曲が醸し出す暗さ(大人風に言うと秋の風情、抒情)を感じ取っていたわけですが、今回、西脇久夫さんのお亡くなりになったニュースで、大人になって再確認できた、というお話でした。


 あゝしかし、秋という季節はまだ始まったばかり、です。

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