第26話 関ヶ原の戦乙女2

 戦いは東軍家康方有利に進んでいた。


「このまま終っちゃいそうだな」


 そう気楽に言う弥一だったが。徐福は違った。


「いや待て弥一。何か聴こえないか?」


「なんにも聞こえねぇぞ徐福?」


「弥一。もっと耳を清ませ。具体的には聴覚神経に魔力を集中して音感を研ぎ澄ませ」


「俺普通の高校生なんでそんななろう主人公みたいなこと出来ないんすけどーー?」


「ちっ。そうだったな。仕方ない」


 徐福は弥一の耳たぶを軽く引っ張った。


「強化系魔術を施した。具体的には聴力の上がる奴だ。どうだ。これで聞こえるか?」


「やっぱり何も・・・」


 タラッタタッタタタタタ・・・・・


「うん?なんだ笛の音?」


「笛なら聴こえて当然ですぞ。弥一殿徐福殿。何しろここは合戦場。突進の合図の法螺貝くらい聴こえて当然かと」


「いや。そういうじゃなくて政宗さん」


「じゃなくて。と、申しますと?」


「なんかこう、西洋の管楽器みたいな音が」


「南蛮の笛でございますかな?」


「そう。それがあっちの空の上の方から」


「あははは。なかなか御冗談を。洒落者(しゃれもの)の武将が南蛮の楽器を鳴らす事はありましょうが、流石に空を飛ぶ兵などこの世にありますま」


 タラッタ♪タラッタタラタ♪ タラッタ♪タラッタタラタ♪


 積雲の空をつらぬいて 地面を撃ったいかづちは

 天下分け目の戦場を  目指して飛んだ運命の矢


「な、なんじゃあありゃああああああああ!!!!」


 輝き満ちる蒼い日差しの中、雲を切り裂き飛び行く兵士の集団があった。

 恐らく人間?なのか??


「強化系魔術!!弥一、あの連中のステータスをチェックしろっ!!!」


 徐福が視力が上昇する魔法をかけてくれた。そらを飛ぶ人間の姿が急速に拡大し、容易に視認できるようになる。

 飛んでいるのは全員女性。着ているのは西洋風の白いローブで。

 なんか全員マシンガンっぽいの持っている。


「なんぞあれえええええええ!!!!????????」


本名  バルキリー

属性  秩序・善 

クラス アーチャー

時代  神話時代

地域  北欧

筋力  C(A+)

耐久  C(A+)

敏捷  C(A-)

魔力  C(A-)

幸運  D(A)

奥義  多連装魔力誘導弾(マジックミサイル)


「おい!なんで北欧のバルキリーが日本の関ケ原にいるんだよっ!!」


「いや。何もおかしくはない。バルキリーは戦場において戦士の魂をかき集めるのが仕事だ。関ケ原には徳川豊臣合わせて二十万近い兵士がぶつかり合っている。それに今は時空歪曲によって次元が歪んでいる。神代から戦乙女がすっ飛んできても何もおかしくはないっ!!!!」


「我が名は島津豊久!!徳川家康、首をオイテイケエエエエエエエエエ!!!」


「デスサイズ3よりデスサイズリーダーへ。運命の機織りに反応。Aランクの戦士魂と思われます」


「了解。デスサイズリーダーから大神(コマンドポスト)へ。作戦領域に到達。これより魂の回収作業に入る。各機後れを取るな」


「デスサイズ2了解」


「3了解」


「多連装魔力誘導弾使用を許可。戦士の魂を捕獲せよ」


「各機了解」


 ダガガガガガガガガガガガ!!!!!!


 上空から降り注ぐ無数の球体が豊臣方の武将の一人を吹き飛ばした。


「なんぞあれええええ!!!!」


「魔力誘導弾、マジックミサイル。っても弥一は本業の魔法使いじゃないから見るのは初めてか。戦闘機に積んである誘導ミサイルと同じで、魔力造った誘導ミサイルを相手にぶち込む。一発一発はカスみたいな威力だがこうして団体さんで撃つとご覧の有り様だ」


「あの天女の軍勢は味方か?好機っ!!!家康様の一番槍本田忠勝押して参る!!!」


「デスサイズリーダー。Bランク戦士の魂を確認」


「誘導弾チャージ中。各機魔力機銃にて対処せよ」


「デスサイズ2了解」


「デスサイズ3了解」


 ズダダダダダダダダダダダ!!!!!!!!


「のおおおおおおおおおおおお!!!!!!」


「本田忠勝様!討ち死に!!」


「こっちも攻撃されてんですけど!!!」


「当たり前だ。連中は戦場で戦士の魂を集めているだけ。別にこっちの味方ってわけじゃないっ!!!」


「んああああああ!!!!忠勝がやられたあああああ!!!!もうだめじゃあああ!!!!!!儂も死ぬうううううう!!!!!殺されりゅうううぅぅうう!!!!」


 ぶりゅぶりゅりゅゆううううりゅりゅりゅる!!!!!


「うあっ!汚ねぇ!!このジジィ糞漏らしやがったぞ!!まるでなろう主人公にお城ごと吹き飛ばされるやられ役の異世界人の王様みたいだぞっ!!!!」


「落ち着け弥一。家康が負けそうになった時ウンコを漏らしたのは史実だ」


「マジかよ糞ったれ!!」


「糞でもホーリーシットでもない。家康が敗走時にウンコを漏らしたのは歴史的事実だ。大人しく受け止めろ」


 空から迫りくる軍勢に対し、弥一と共に狼狽する兵士。しかし一人の女侍が主君を守るべく指揮を執り続ける。


「くっ、皆の者家康様をお守りしろっ!!!」


「しかしお勝様、空飛ぶ天女の軍勢など我らでは太刀打ちできませぬ!!」


 モブ兵士達が悲壮な声をあげる。


「そうです!馬で地を走る事はできても空を飛ぶ事など・・・」


「火縄銃を使えばよい!!!」


「あ、そういえばこの時代にはもう火縄銃あったな」


「直江兼続、討ち死に!」


「小西行長、討ち死に!」


 通りすがりに空から魔力機銃を撃ち込まれ次々と武将が葬られていく。


「まだ撃つな。まだ撃つんじゃない。もう少し待て。もう少し。よし、放て!」


 お勝の合図で上空に一斉に火縄銃が放たれる。


「メーデー!メーデー!やられたああ!!!!」


「デスサイズ5が被弾!飛行不能となった模様!!」


「デスサイズリーダー、救助の許可を!」


「了解、戦士の魂の回収作業を中止。各員デスサイズ5の救助に向かえ」


 バルキリー達は撃墜された仲間の救援に向かった。しかし飛行ルート中に展開している地上部隊、即ち徳川豊臣軍なのだが、救助の妨げにならないよう魔力機銃を撃ち込んで『排除』しておくことも忘れない。


「なんなんじゃあ奴らは・・・」


「今のうちです家康様。軍をお引きください」


「う、うむ。皆のもの、撤退じゃ!!!」


 なおもこちらに追いすがるバルキリーもいたが、誰かが狙撃したのだろう。銃弾に撃墜され、墜落していく。こうして、関ヶ原の戦いは引き分けに近い状態で終ってしまった。

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