第1話 準備をしよう

 よし、それじゃ早速、出発の準備に取り掛かろう――――


 まず森を出るためには食糧は欠かせない。魔物を狩るたび作っては溜めてきた干し肉を大量に紐で括って一纏めにして小さな袋へ梱包する。


 だけど飲み水はいらない。何せ魔法が使えるから。魔法で出せば問題ない。魔力量には自信があるから、愛用の水筒を腰に提げていれば問題ない。


 あと怪我したときのためにポーションも持っていこう。嵩張るといけないからホルスターに引っ掛けられる分だけ持っていくことにした。


 錠剤タイプのものは遅延性で液体タイプのものと比べて即効性が皆無だけど1粒で液体タイプの3倍もの効力がある。だからこれは小袋1つ分にこれでもかと詰め込んだ。けど、穴が空いてたら笑えないから頑丈な袋で二重に管理。


 スプレータイプのものは擦り傷などの小さな傷に対してポーションを吹きかけるときに便利。節約にもなる。だけどぶっちゃけ、ポーション瓶の蓋をスプレーノズルに変えるだけで済むからノズルの予備も含めて数個持ち運ぶだけで大丈夫。


 それから服装は革製の丈夫なものを一式、そしてマントを背中へと取り付けた。マントは重要。雨が降ったときの雨具代わりにもなるし、野宿するときには毛布や敷物の代わりにもなる。他にもいろいろと用途があって欠かせない。


 あとはお婆ちゃんから受け継いだ木杖も持っていこう。先端についた翡翠の宝石に接続するよう持ち手へと伸びる魔導線を通して宝石へ魔力を貯められるすごい杖だ。


 もちろん、魔力を取り出すことだってできる。お婆ちゃんとの思い出の品だから持っていかないなんて選択肢はない。


 お婆ちゃんとの思い出の詰まった道具と言えば他にもいろいろあるけれど、他にもたくさん準備しているうちに既に遠出用の特大リュックはパンパンに膨れ上がってしまった。


 目の前に置かれたわたしの体重の倍は優に超える特大リュックを背負ってみる……意外と動ける。重いけど、動けないほどではない。自分でも不思議なくらいわたしの体は見た目に反して筋力があったりする。本当、不思議だ。常々思う。


 そんなわたしでもこれ以上は荷物を増やすわけにはいかない。


 体重自体はあまりないため、アンバランスとなり足元は覚束なくなるだろうし、無闇に両手を塞いでしまえば何かあったときの対応に遅れが出るからだ。ましては、魔物との戦闘では致命的となるだろう。


 魔物避けの匂い袋があるとはいえ、油断は禁物だ。ヘビや吸血虫といった魔物以外の危険な生物も潜んでいるからだ。


 そう―――森は危険がいっぱい。甘く見てはいけないのだ。だから、なるべく必要最低限の物資で行動するべきだとわたしは思う。


 だから本当は錬金釜も分解してバッグに詰め込んで持っていきたかったのだけど、諦めるしか無かった――――


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