第12話 咲の悲しみ

 しかし、その夢も束の間だった。


不意に、咲が立っている舞台の照明が落下してきたのだ。


「危ない!!」


フィリップは助けに行こうとしたが、間にあわなかった。



…咲は気を失っていた。


咲が気がつくと、目の前には忘保が立っていた。


「…だから言ったでしょう?あの男は信用できないと。」


「え…?」


「あの男は先輩の事なんてどうでも良かったんです。だから助けに来なかった。」


「まさか、そんな事無い!だって彼は…!」


「彼がなんだと言うんですか?彼はただの泥棒ですよ?」


「…」


「帰りましょう。二人で。大した傷も無さそうですし。」


頷くしかなかった。しかし心の中では泣いていた。やっとお互いの事を信用できたと思ったのに…


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