第9話  脱出

その時、サイレンの音がして、警察が入って来た。


「野々村 大介はいるか?」


しかし、誰も返事をしない。


数秒後、やっと一人の従業員が答えた。その従業員は、先程、メニューを渡して来た従業員だった。


「そのような方はいらしていませんが…。ましてやこの人数ですからね、いたとしてもわかりませんよ。」


「おかしいな。通報があったのは確かにここなんだが…」


「あまり疑うのはよして下さいよ。というか、店に悪い評判がたったらどうするんですか?こちらこそ名誉毀損で訴えますよ?」


従業員が急に語気を強めたので、警察とは口論になってしまった。


不意に、誰かがフィリップの肩を叩いてこっそり言った。


「さあ、薫さんが時間を稼いでるうちに逃げて下さい。裏口に御案内します。」


「あ、貴方は…?」


「夢は大事にすべきですわ。私も薫さんから教わりました。」


それだけ言うと、彼女は裏口のドアを開けた。


3人は裏口を出て、別の場所へ向かった。



店内では、口論を終えて警察を追っ払った薫が待っていた。


「あの3人、ただ者では無さそうだな…美世子。」


「ええ…。むしろなにか同じものを感じましたわ。」







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