映画語り倒し部

電源

2010年代最強の実況型お祭りSF映画……「バトルシップ」

――2012年の環太平洋合同演習下のハワイ。世界中の海軍が集まり合同演習を行うこの海に、NASAの信号を探知して侵略してきたエイリアンと宇宙船が落下、バリアを張ってハワイを占領する。成す術がない人類の最後の希望は、バリア圏内に取り残された1隻のイージス艦と、ナンパのために不法侵入してブリトー持って来るボンクラ海軍士官、そして伝説の戦艦に託された!――


 お祭り映画というジャンルがある。多数で見ると面白い、コメント盛り盛りで見ると楽しい、1人で見てもワクワクが止まらず映画のラストで「Yeah!!!!!!!!!!!!!」と雄叫びを上げたくなるような映画だ。主にテレビの洋画劇場の実況が盛り上がる映画と思って差し支えないだろう。「バトルシップ」はそういった意味でも「コマンドー」に匹敵する最強のお祭り映画だ。


 映画はかなり大味だ。主人公がナンパのためコンビニに不法侵入!「どうだブリトーだ!」「この馬鹿野郎!お前海軍入れ!」のコンボからいきなり「 バ ト ル シ ッ プ 」とタイトルロゴが現れるシーンで「こんなノリでユニバーサル100周年記念映画……?」と首をかしげる人もいるだろう。実際アレな映画だと思うし、批評家ウケが悪いのも事実だろうと思う。

 だがこれはそういう映画だ。80年代のアクション映画でもやんないような大らかなノリが「肩の力抜けよ、お祭り映画だぜ楽しめよHAHAHA」と言ってきている。祭りの始まりだ。


 ただし、エイリアンが攻めてくると話は180度変わってくる。電子機器を失い有視界戦闘に頼らざるを得なくなったイージス艦が、ハイテク装備を持つエイリアンの宇宙船と対峙するバトル描写は圧巻だし、CGで表現できる最高の戦闘描写を実艦を交えて表現しているし、ボンクラ海軍士官だった主人公がリーダーシップと素質に目覚めてエイリアン相手に奮闘していく姿は心地よいし、ライバル視している海自の艦長ともタッグを組んで戦う様は王道少年漫画のノリだ。

 登場人物のすべてが、このエイリアン侵攻という非常事態に団結し、各々が持てる全ての能力を出し切って事態にあたるという様はそれこそ「シン・ゴジラ」でオタクたちを熱狂させてあのノリにも通じるだろう。


 そして「バトルシップ」というタイトル通り、映画の終盤に頼れる最強の「戦艦」が眠りから目覚め、アナログ機器と大火力という強み、そして強固な装甲を武器にエイリアンの宇宙船相手に正面から衝突するマライマックスに心の中の10歳児が拳を掲げて大興奮する映像体験を目にする事が出来るだろう。

 実際、映画館で見た時は感動のあまり泣いた。


 今作はゴールデンラズベリー賞(その年の最低映画を決める賞)の受賞、散々な興行収入など映画自体は世間一般で割りと残念な扱いを受けているが、カルト的な人気がこの映画のポテンシャルの高さを物語っていると言えよう。個人的にはオールタイムベストの中に入る最高の映画だ。

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