なんと妖艶にして清らな、異形の花であることか

 酒呑童子が退治される昔話のその後、ということで読んでみました。
 まず、文章が美しい。それだけでなく、美しいものと醜いものが混じる都の様子、人心の荒みを見ているがゆえの暗澹とした心情が容易く目に浮かびます。
 特に、羅生門の桜を見る場面が私は好きです。かがり火に照らされた夜桜に、美少年。想像するだに、なんとあでやかなことか。容姿に違わぬ金時の心のなんと清らなことか。源氏物語の紅葉賀で弘徽殿女御が、過ぎたものは魔に魅入られると光源氏に毒づいたものですが、その場面も思い浮かびます。

 短編小説というよりは、古典を読んでいるような気にさせられる作品でした。

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