逆境の拳

一齣 其日

逆境の拳

赤く腫れた頰を晒し

なおも男は立っている。

全身に響く痛みも、

時折り沁みる血の味も、

彼にとっちゃ目を向けるほどじゃ無い。

その眼が向く先は、

未だ眼前で立つ敵さ。

高揚、興奮、全てが渦巻きあって、

やはり顔は笑みを浮かべる。

その目に敵が映る限り、

己は負けちゃいないと、

拳を握れるからさ。

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