初恋のゆうこさん

小川貴央

第1話 何十年ぶりの再会

街はずれの並木通りを独りトボトボ歩いていた。

夕映えに銀杏の葉が眩しいくらい金色に輝いている。

まるでドラマの1シーンのように色鮮やかに秋耽る印象的な情景に佇んだ。


すると向こうから自分より少し若そうな女性が歩いて来るのが見えた。


段々に近づいてくるとその女性の姿も夕日の光のシャワーに包まれてる様に

輝いて見えた。

何故か妙に気に掛かり、目の前まで来た時に、女性の顔を見上げた。


肩になびく栗毛色の軽くウェーブのかかった柔らかな髪と二重瞼で少しだけ

ブラウンがかった優しい眼差しのアーモンドアイ、口角が少し上がってて、

いつも微笑んでいた上品な顔立ち・・・忘れもしない初恋の裕子さん?


「えっ?」驚きと恥じらいが同時に起こり、一瞬でタイムスリップが起きた

 様な気がした。


「あ、あの、すいません、裕子さんですか・・・?」思わず聞いてしまった。


「えっ?あ・はい・・」と女性は少し不思議そうな表情で答えたが空かさず

「あれ?小川さん・・・?同級生だった、あの小川君?」と彼女も聞いてきた。


「あっ、ハイ!そうですよ」恥ずかしながらも安堵した気持ちになった。


「え~?何で~?ここに居るのぉ?懐かしいね~」彼女は笑いながら言った。


「そうだね、だって卒業以来に一度も会えなかったのに、今日いきなり会う

 なんて思ってもみなかったよ」


「うんうん、40年以上も前だよね、ほんと懐かしいわね~!」


 二人とも偶然の出会いに感動していたのが解り合えた。


こんな時“おう、裕子じゃねえか、懐かしいなあ”などと言える様な親しさ

が無かったのが自分でも歯がゆかった。


「ねえ、喫茶店でお茶でも飲まない?」僕は勇気を振り絞って言ってみた。


「う・うん・・・」彼女は少しためらい戸惑いながら「ちょっとくらいなら」

とうなづいてくれた。


僕はすごく嬉しい気持ちと同時に何かその場を救われた様な気もした。


早速、二人で近くに停めてあったクルマに乗り、街へ行って喫茶店を探した。

お洒落な小ぢんまりとしたカフェを見つけた。

中へ入ると他にお客さんは誰も居なかった。


夕日が優しくカーテン越しに漏れている窓側に二人は座った。


「何にする?」と聞くと彼女は「カフェオレにしよっかな、疲れ気味だし」

そう答えながら彼女は優しく笑みを浮かべていた。


「じゃあ、ぼくも同じものにしようっと」


少しばかり沈黙の時間が流れた・・・


お互いに、やっぱりどこか照れくさいのと恥ずかしさを隠しきれなかった。


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