第4話 第三は静かに逝く

「第二の戦力は今や半壊していますが、なかなか有用な情報を送ってきています」


 ユリウスの目の前で、水晶球をのぞき込みながら、黒いローブを纏う壮年の男、『全知の軍師』ルキウスが抑揚の無い声で言った。

 

「ネルファも彼女が体内に封印していた魔王と融合していますね。制御はできているようですが、彼女の体が持つのがあとどれくらいか……もっとも相手が魔神だけに、潰されるのが早いとは思いますが」


 彼の抑揚が無いのは、絶望しているからではない、感情が無いからだ。

 感情は思考の毒であるため、幼少期に消し去ったのだと、ユリウスは彼から過去に聞いたことがある。


 今彼は、その全知を以て、第二から魔力通信で送られている魔神の情報を解析しているのだ。


「む……全反応が消えました。通信途絶。でもよく頑張ってくれたものです。おかげで、解析は完了しました」


 こともなげに言う。

 ユリウスは、儚く散ったネルファのことを思い、胸を痛めた。


「あの魔神の属性は、無ですね。十年前の魔神が全属性だったのとは対照的です。これは面白い」


「結局有効な攻撃方法は無いってことじゃないのか?」


「ええ、ですので『消滅魔法』を使います。ユリウス殿は第四に退去されよ」


「ルキウス、あんたはどうするんだ?」


「第三の結界は厚く作られています。消滅魔法の指示はここからでないとできません。それも効かなかった場合の対応もありますので、お気になさらぬよう。これもお役目というもの」

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