第8話 スミレ

8.スミレ


店長のやり方を真似しながらキャストと色んな話をした。



自分 「この前の新規の客は感触どう?」

キャスト「今はイマイチだけど粘ってみる」



自分「今日はいつもの指名客はどう?」

キャスト「今日他で飲んでるけど少ししたら来ると思う。枝が3人だって」


自分「枝三人は熱いな!ほかのキャストにも情報回しとくね」



こんな形の会話なら割と難なくいけるのだが、困った会話もある。


キャスト「彼氏と喧嘩した。絶対私は悪くないのに!」

自分「まぁ悪くないけど、今怒ってそんな顔でお客さんに接客したらお客さんみんな逃げちゃうよ」


キャスト「知り合いにお金かしたらトンズラされた」

自分「トンズラされた分、きっちり稼いで忘れよう」


など、全く仕事と関係ないプライベートの話は中々返すのが難しく、下手をするとキャストのモチベーションが下がってしまい、接客に支障をきたしてしまう。


キャバクラは物を売る商売ではないので、いかにお客さんを楽しませるかと言う所、接客は最も重要な仕事の一つになる。


ある程度、経験があるキャストはどんなことがあってもお客さんの前では戦闘モードに切り替えることができるが、幼いキャストや経験が足りないキャストはその切り替えがイマイチできない。


最悪なのは、その相談をお客さんにしてしまったりするのケースもある。


これは、お客さんからしたらそんなこと聞きにお金払って飲みに来てるわけじゃない!と怒ってしまうことにつながる。


だから、ボーイの自分がそのうっぷんをうまく晴らして、キャストが接客に前向きになれるようにしていかなくてはいけない。


難しい仕事だが、パンチパーマの店長のやり方は、間違っていないと確認した時があった。


新規が入ってきたら自信があるキャストをつけたり、やる気のあるキャストを優先的につけて、そして、場内指名が大いに喜んでいた。


その時のキャストの笑顔にやる意味があると感じた。


仕事に結果とやる気と達成感、全てがその笑顔にあったからだ。



そんな仕事をしていた時に、プライベートで落ち込んでるスミレというキャストがいた。


飼っていた猫が死んでしまったらしく、凹んでいる。


自分も実家で猫飼っていて家族だから落ち込む気持ちがかなり理解できた。


それからスミレとよく話をするようになった。


ある時、スミレがオープンラストで来た指名客の接客をがんばりすぎて、ベロベロでお店が終わった後、寝てしまったことがあった。


スミレの家はさほど離れてなかったので、店泊させないために起こした。


だが、スミレは一人で帰れましぇんと言ってフラフラだったので、家まで送ることにした。


家まで送りベットまで連れて行き、帰ろうとすると、スミレは自分の手を引っ張りいきなりキスをしてきた。


自分はこの酔っ払いがとはねのけたが、スミレは自分の体を抱き寄せて離れない。


それからまたキスをしてきて、結局、起きたらベットの上で二人は裸。


それからスミレと付き合うことなった。



普通に付き合うのはどうとでもいいが、キャバクラのキャストとボーイが出来てしまうのはいわゆる爆弾にあたる。


爆弾とは、お店に対して、不利益こと全てを爆弾と言う。


同然、キャストとボーイの恋仲は爆弾になり、罰金を科せられるのが普通。


だが、正直そこまで深くかんがえていなかった。


ある時、仕事中にスミレが名刺にラブレターを書いて自分に渡そうとした。


だが、そのラブレターがパンチパーマの店長に見つかってしまう。


自分とスミレはお店が終わると呼び出しをくらい、怒られた。


そして、恋仲のボーイを店舗に置くことはできないと言って、自分は違う店舗に飛ばされてしまう。



それから社長にも怒られたが、仕事に対してのやる気が感じられるから新しい店の副店長としてやってみないか?と言われて即答でやります!といって新店舗に行くことなった。


普通はやらかしたら新店舗なんて行かせないのだが、パンチパーマの店長が自分を押してくれたらしい。


それから新店舗の店長と自分とボーイの三人で店を回すことになった。



新店舗を立ち上げるまでには色んなことをしたが、基本的にはお店がオープンできる状態にするのが自分の仕事になった。



まずは、店内の準備と在庫などのチェック、頭の中でお店をオープンさせて、何が足りないかを想定しながら準備した。


お店の準備が終わると時間を持て余すので、オープン1週間前に色んな宣伝をした。


まずは、ビラ配りから始めた。


この場合のビラ配りは、オープンした初日の店舗前でのビラ配りとは違う方法で、車のワイパーにビラを挟んでいく。


車のワイパーにビラを挟む理由として、ターゲット層がマッチすることが一番の理由になる。


車を持っていることで、その人に対して年齢とお金にラインがひける。


あと、車種などに区別をつけて出来る限り来店してくる可能性が高い車などに配りまくった。


ただ、このビラ配りは注意点がある。


0ナンバーやゾロ目、並び目など、変わったナンバー、イカツイ車や黒いスモーク、ベンツ、などにはビラ配りは絶対に配らない。


この辺りに配ってしまい、やばい系がきてしまうとお店オープン初日から大変なことになりかねない。


出来る限り問題が出ないように避けるために、こちらから客層を避ける努力も必要になる。



あと、昔からよくあった捨て看板というものも発注した。


捨て看板は、電柱などに置く高さ1mぐらいの看板で、今の時代ほとんど見たことはない。


今回の新店舗は、とにかく最初から客を入れることをメインに考えていた店長の案で、最初の30分を1000円にした。


その価格を前面に出して客が来ないわけがない。


そして、万全の準備をしていざオープンしたが、問題だらけだった。

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