第2話 地震

自分は中学に入った。


親父は好きなことを好きにすればいいと言ってくれた。


小学校の頃、マラソン大会で一学年6クラス30人約180人のマラソン大会で2位なったことがあった。


その2位の理由は、友達と5時半まで遊んで30分で家に帰るために2キロほど、いつも全力ダッシュで家に帰っていた。


それで持久力がついて結果が出た。


1位になったサッカーやってる同級生に


「お前すごいな!なんかスポーツやってるの?」


と、聞かれた。


ベルトでお尻を叩かれたくないから体力がついたなんてとてもじゃないけど言えなかった。


その結果があったので、親父に何も相談せず、自分は陸上部に入ることにした。


部活は楽しくやっていたが、小学生の時、全く勉強をしてなかったので、中学のテストは赤点ばっかりだった。


「今の時期から赤点取ってると高校受験は絶対受からないぞ」


全校集会で学年主任の先生がそう言っていたので、少し勉強しようと感じていた頃にとても大きな災害がおこった。



阪神大震災だった。



朝5時頃に揺れた地震はかなり大きく、マンション5階に住んでた自分の家は半壊になった。


親父が大丈夫か!?と自分の部屋に入ろうとしていたが、ドアが開かなかったので蹴破って入ってきた。


自分は大丈夫と言ってベットから周りを見渡すと、何もかもが地面に落ちていた。


ひかそかに勉強机に挟んで隠していたエロ本も落ちていたので、すかさずそれだけはベットの下に隠した。


家族の安否を確認すると、みんなでベランダに出た。



朝6時の綺麗な朝日とは真逆の光景が飛び込んできた。


地面が割れ、目の前の倉庫は半分潰れていて、かなり離れた方で火事なのか煙が出ている。


あたふたしている人や足を怪我して引きずってる人、座り込んでいる人、色んな人が外に出ていた。



親父がとりあえず家を片付けようと言った。


そして、全員で家の中に戻り、家の片付けを始めた。


荷物は散乱して食器は割れて何もかもが落ちている状態だった。


水道は壊れ、トイレも使えない。


電気も止まっていてテレビも冷蔵庫も使えない。


ガスもないから火もつけられない。


携帯電話もラジオもないから情報も入らない。


何もできない状態だった。



ただ、幸運だったのは前日に食料を買い込んでいたことだった。


すき焼きをする予定だったので、ガスコンロがあり、肉や野菜などたっぷり冷蔵庫に入っていた。


親父は腐りやすいものから食べていこうと言って、地震当日の晩飯はすき焼きになった。


こんな地震があったのに贅沢な晩飯が食べられるのはうちだけだなと、ロウソクの火で闇鍋みたいになってるすき焼きを笑顔で食ってる親父の顔をよく覚えてる。


次の日、自分は外に出て町の方に自転車で向かうことを親父に伝えた。


親父に止められたが友達に会いに行くだけだからといって家を飛び出した。




自分の家は海の埋立地にあるので、橋を渡るのだが、橋が2メートルぐらい高低差ができていて、車が通れない状態だった。


自転車を降り、無理やり橋を渡った。



そして、渡った先は別世界だった。




駅の近くの商店街はほぼ潰れていて、屋根しか無い状態で、火事があったせいか町の半分は黒い墨になっていた。


消防隊が走り回って大声を出して屋根を五人ほどで持ち上げている。


その近くで血だらけの人が救急隊に手当てされていた。


泣き叫ぶ人や潰れた家に大声で呼びかける人たちを見て、自分達家族がどれだけ幸運だったことに気がついた。


それから仲の良い友達の家に向かう途中だった。


一本足のかなり大きな高速道路が300メートルぐらい横に倒れていた。


上を見ると、倒れるギリギリのところにバスが半分飛び出た状態で止まっていた。


その近くで車が一階のお店に突っ込んでたり、フロントガラスに黒い血がこべりついた車、ひっくり返った車があった。


友達のマンションはその近くだったが、友達はなんとか無事だった。


家に帰ろうとコンビニの前を通ったら人が群がっていた。


飲み物やお菓子やパンなどを配っていた。


自分の家は食べ物があるから何ももらわず、そのまま家にかえった。



家に帰ったら親戚のおじちゃんが家に来ていた。


左足を怪我したらしくて包帯で巻いていた。


おじちゃんの家は二階建ての木造アパートで階段が壊れて仕方なく、2階から飛び降りたが、その時に怪我したらしい。


独り身のおじちゃんはとりあえず一番近いうちの家に足を引きずりながら一日かけて歩いて来た。


親父と兄弟のおじちゃんは


「良かった!無事でよかった!」


と肩を叩き合っていた。

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