21.いざ外の世界へ!?

 以前も述べたとおり、スネークヘッドは飛び出しの名人である。優れた視力でわずかな隙間でも見つけたが最後、持ち前のジャンプ力で水槽から脱出してしまう。プラスチック製のチャチな蓋程度なら軽々と吹き飛ばすパワーがあるので、対策は必須と言える。


 しかし実のところ、わたしがスネークヘッドの飛び出しを経験したことはあまりなかった。


 ブルームーンギャラクシースネークヘッドはそもそもジャンプを繰り返すほど活発な性格ではなかったし、アイスファイヤースネークヘッドとコウタイは元気ではあったが、上部フィルターとガラス蓋(夏期は洗濯ネットを使った自作蓋)と照明器具で水槽上部をしっかり塞いでいたので飛び出される心配はなかったのである。


 ところが、現在の部屋に移ってからはそういうわけにもいかなくなった。


 バイオレットスネークヘッド、めっちゃ跳ぶ。


 さすがに90cm水槽の前面を覆うガラス蓋は重く、吹き飛ばされることはない。しかし、水換えや掃除のときなどは蓋を外すことになるのだから注意が必要だ。


 水槽を飛び出された回数は、記憶が正しければ4回。


 1度目は、蓋のカドの切り欠き部分を埋めていたウールを押し出して脱走。一回のジャンプで吹き飛ばせないと見るや、小刻みにウールにアタックして取り除いてしまってから飛び出すのだから感心した。頭がいいなと唸る反面、そうまでして飛び出したい情熱は何なのかと気になってしまう。水質は悪くなかったはずなのだが。


 2度目は、餌をあげようと蓋のカドのウールを外したところを狙い澄ましてジャンプ。人工餌ならなにもウールを外すまでもなく隙間から落としてやれるのだが、このときは冷凍コオロギを与えようとしていたのだった。がっつきすぎだろ。


 3度目と4度目は水換えの最中。サイフォンの原理(※注1)を利用するため加水時は脚立にのぼって行うのだが、水面近くの動きに敏感な習性が反応したのか、わたしの顔めがけて飛びかかってきた。わたしは食べ物じゃねーぞ。


 ……とまあこんな調子で、今飼っているバイオレットスネークヘッドはけっこうな暴れん坊だったりする。間違いなくわたしが飼ってきた生体の中でもぶっちぎり一番のじゃじゃ馬だ。


 もちろん「手のかかるヤツほど可愛い」という言葉もまた然り、なのだけど。



     ◇ ◇ ◇



 ※注1:『アクア・デイズ』第36話参照。高い位置の出発地点と低い位置の目的地点とを管で繋ぎ、液体を流す。このとき管内が液体で満たされていれば、途中に出発地点より高い場所があっても、液体は圧力差によって流れ続ける。

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