不条理編4 好きでも二杯しか飲めぬ

 紅茶派かコーヒー派かと問われれば私は断然後者である。お茶は好きだが、どういうわけか紅茶はストレート以外受け付けない。ルイボスティーもフレーバー付きは飲めなかったから、私は基本的にお茶をストレートでしか飲めないのだろう。

 そして「紅茶とコーヒー、どちらかと言われれば後者」というより「断然コーヒー」と考える程度にはコーヒー好きである。いつものごとく、「しかし味オンチなので味はわかりませんでしたとさ」というオチつきになってしまうのだが。

 コーヒーといえば外で飲むとき、今まではスターバックスなどのコーヒースタンド系列の店以外では缶コーヒーが精々だったのが、今やどのコンビニにも淹れたてコーヒーが売っている。マック(西側ではマクドと略すらしい。【東西編】とかのネタになりそうだ)だってバリスタのこだわりとか散々宣伝を打ち、Sサイズ無料キャンペーンまで張る始末だ。ラーメン一杯730円が高いと感じるように、コーヒー一杯に300円400円が高いと感じる日も来るのだろうか。それこそ喫茶店にとっては不条理だ。


 しかし今回の不条理は個人的な経験に根付く。不況にあえぐコーヒー屋諸子には残念だがこの話題はまた今度である。

 そういうわけで、なんのかんのとドリンクを選択する場面に遭遇したらコーヒーを選択しつづけていた私だったが、ある日からそんなコーヒーライフにも陰りが見えだした。カフェイン摂取者の末路、尿路結石、ではなく、もっと別の理由で。

 ある日、私は胃痙攣を起こした。それ以来胃が弱くなり、カフェインを摂取しすぎると胃が荒れるようになってしまったのだ。その日から、コーヒーは一日二杯まで、一杯毎に六時間程度時間を空けるという暗黙のルールを課した。

 このコーヒーには無論、コーヒー飲料系も含まれる。というかこういうルールを定めた場合の最大の敵ががぶ飲みできてしまうカフェオレ系だろう。まあ、もとより外であまり飲み食いしない気質だから(味オンチだし)、そっちは困らないのだが。

 六時間、というとかなり長く時間を空けているようにも思えるかもしれないが、私は朝の食事がパン派で、その時にコーヒーを一杯飲むので六時間後というと午後のちょうどブレイクタイムにあたる。実は都合がいいルールだ。

 しかし面倒なのが外で何か用事があるとき、外食となってしかもそこが喫茶店だったり、明らかにコーヒーと合わせる系の食事を出すところだったりすると困るわけである。場合によっては四時間も時間が空かない時がある。そうでなくても午前中の予定をこなす過程で、飲み物をサーブされる場合もあり、その際、「紅茶かコーヒーか」という難問にぶつかるということもある。

 そうしてルールを破らざるをえない状態に陥ると、大抵やっぱり胃が荒れる。そんな次第で胃薬は常に持ち歩く習慣ができてしまった。

 じゃあ紅茶を飲めよという話だが、前述の通り紅茶はストレート以外飲めない。しかも飲めるようになったのが、実はこうした上述の事情があってのことだった。コーヒーを連続で飲むリスクを回避したい。しかし朝食はパンというのは動かない。そこでパンに合う別の飲み物を求めてストレートティーに落ち着いたのだ。


 現在ではそのルールも必要がないほど回復している――と思いきや、最近はまたそうではない。あの胃痙攣以来、胃が弱くなって困る。好きでも二杯しか飲めない。好きだからこそ二杯に抑えているとポジティブに考えられればいいのだが。

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