第20話 守り刀

町に戻った僕は、工房を借りてありったけの材料を使い新しい武器を作っていた。短銃杖は片手で撃てる程小さく、速射する性能に優れるが威力が大幅に落ちている。そこで、これにパワーを上昇させた上で反動を打ち消す魔術を施し、それに剣を付ける。


魔弾も特別なものにする。相手の体を突き抜けることはなく、弾が減速し、対象を激しく損傷させる。


今の武器では仮にアリンちゃんが倒れても、守りにはいけない。だから、彼女の近くで戦える武器を作ろうと思ったのだ。


ある程度パーツが出来上がった所で、僕は服を着替えてアリンちゃんの寮に行く事にした。彼女の事が不安だったし、何より大事な工程がある為だ。彼女の家につく頃には日はすっかり落ちていた。


「アリンちゃん、いるかな?」


ノックして呼び掛けると、彼女はすぐにドアを開いた。


「こんばんは。何処かに行きたいの?」


アリンちゃんは髪を結ばない寝間着姿で玄関に現れた。


「いや…今日はちょっとした話があって家に来たんだよ。部屋に入っても良いかな?」

「大丈夫だよ。」


アリンちゃんはすんなりと部屋に入れてくれた。部屋はあまり広くはないが、逆に彼女を近くに感じられた。


「今、僕は新しい武器を作ってるんだ。これだよ。」


そう言って、作りかけの一対の武器を取り出した。


「明日にはできるはずだよ。アリンちゃんを守るために、僕は出来る事なら何でもやりたいんだ。この間みたいに……君がボロボロになるのを見るのはもうイヤなんだ…!」

「ありがとう…だけど、私だってハンナの事は心配になるわ。だから…約束して。自分の命は守って。

そうじゃなきゃ、私を守る権利は無い。私も、もう死に急ぐような事はしないから。」


「分かったよ。君が言うなら、そうする。」

「良かった…」


彼女の顔に久々に笑顔が戻った。


「でも、ハンナが来てくれて嬉しいわ。今日の剣の練習も捗りそう。」


まだ、僕はアリンちゃんに対してここに来た理由を打ち明けられずにいた。そこで、まずは彼女に僕の生い立ちについて話してみる。


「それでさ、僕は…魂術を使えるんだ…」


僕は彼女に過去の事を洗いざらい話す。ディアスの孫である事…かつて僕も魂術で数多くの人を虐げ殺した事…より良い魂術使いを孕む為にディアスに犯された事…僕の話の度に彼女の顔はどんどん雲っていった。


「そう…教えてくれて、ありがとう。」

「それでも、君は僕の事…好き…かな。」

「当たり前じゃない。それくらいで嫌いになんかならないわ。」


ここで、僕は本題を切り出す。


「それでさ…魂術には相手の魂に干渉して、体の状態を変化させるものがあるんだ。まぁ、魂の架け橋を作るという感じかな。これは回復や痛覚を弱めるのにも使える。」

「それを…私にかけるって事?」

「そんなに安易に考えないで欲しい。そもそもこれは禁じられた術なんだ。もっと言えば、君の兄さんにかけられた術もこれと同じさ。だから一度これを行えば、僕が君の魂を支配する事だって、破壊する事だって出来るんだ。君は僕をそこまで信じているか…よく考えて。」


アリンちゃんは、迷う事無く答えた。


「勿論、ハンナなら許せるわ。あんたが私を悪いようにするとは思えないもの。」


僕はその言葉に涙が零れそうになった。


「でも、その術はどうやってかけるの?」

「正式には特殊なマジックアイテムを使ってやるんだ。でも…手元には無いから効果は少し弱いけど違う方法を使うしかない。」


この後はどうやって言えば良いだろうか。性行為なんて直接的な事を言うのはかなり恥ずかしい。


「えっと……ベッドで…いやベッドじゃなくても良いんだけど…まぁ、二人が一緒にならないと…いけないんだ。」


アリンちゃんは耳の先まで真っ赤にしてこちらを見ている。


「……ま、まぁ…良いんだけど…さ…それ…女の子同士でも大丈夫なの…?」

「まぁね…一応……」


やっぱり、かなり気まずい。お互いに目を合わせないまましばらく沈黙が続く。


先に静寂を破ったのはアリンちゃんだった。彼女はベッドで横になると、寝間着を少しはだけた。


「は、早くしてよ…」


それから僕達は、ベッドの上で混じりあってから一夜を過ごした。


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