第21話 魔弾の射手は天賦の才を持つ

 ドトリナスは窮地に追い込まれていた。

 どこに身を潜めようとも、空を自在に飛翔できる《ポイニクス》から逃れる術はない。死角を作るために 無人の建物を楯代わりにしても、放射されるマグマによってあっという間に溶解してしまう。

 逆にこちらの攻撃手段は、全て強力な風のカーテンによって阻まれる。風の威力が最も少ない接近戦を挑めば、まだ可能性はなくはない。だが、あちらもそれを警戒しているのか、地上に舞い降りる素振りを見せない。

 これでは八方塞がりもいいところだ。

 まともに戦うことはおろか、尻尾を巻いて退却することすらままならない。

 こちらに勝機があるとするならば、たった一つだけ。

 コレクベルト自身を倒す。

 《ポイニクス》と戦っても敵わないのなら、逆転の発想――戦わなければいい。《使役者》本人を気絶させれば、《精霊獣》とのリンクも切れる。指示する者がいなくなった《ポイニクス》は、もう何もすることなどできない。

 だが、そんなことは百も承知だろうコレクベルは、その姿を決して現そうとはしない。

 先程から《ポイニクス》の猛攻を躱しながら、忙しなく瞳を蠢かしている。だが、コレクベルトの影すら捕捉できない。

《ポイニクス》に指示を出せるだけの距離にいることだけは確実。

 そうそうに決着をつけなければならないというのに。

 このまま体力を消耗し続ければ 、いつかは捕まってしまう。

 できることならばその前に、探し出したいところ。

 だが、コレクベルトの影も仮に見つけられたとしても、まさか独りきりというわけではないだろう。石橋を念入りに叩いて渡る性格であるコレクベルトは、恐らくご自慢の私兵達に警護されているはずだ。

 だからこそ、ドトリナスはひた走る。

 走ることによって集団としてのバラつきが多少は生まれるはずだ。警護の人間が少 なる隙を狙って、死中に活を見出すしかない。もしくは――


「健気ですね、ドトリナスさん」


 嘲笑混じりのコレクベルトの声が どこからか聞こえる。

 高みの見物だけでは飽き足らず、 言葉で嬲ろうとしている。

 《ポイニクス》の終息するどころか苛烈になっていく猛攻を避けながら、

「だったら、素直に姿を現してくれねぇかなあ。そうしてくれると、手間が省けるんだが」

「お断りします。ドブ鼠に噛まれたとあれば、『F.U.G』の沽券に関わります。私も消されたくはないので、用済みになった実験動物はさっさと破棄するとしましょう」

「……実験……動物?」

 風の太刀が頭上から土砂降りのように降ってくる。その一つ、一つが、地面をクッキーのようにパックリと裂くほどの威力。

 少し掠ってしまい、ブシュッと肩口から血が噴き出す。

 ぐっ、と蹈鞴を踏む。

 いい加減、限界が近づいてきているようだ。

「そうです。こんな辺鄙な場所に飛ばされた私に今必要なのは、上の人間に支配者としの実力を見せること。そのために、ラクサマラの領民を使って実験した。そしてそれは成功しつつあります」

「自分が『F.U.G』でのし上がるために……ラクサマラを使い捨てにしたのか」

「ええ。だからこそ感謝しているんですよ。変わろうとしないラクサマラに」

 コレクベルトは言葉に嘲笑を孕ませながら、   

「ですがあなた達だって、私に管理されることが心地よかったのではないですか? そうして私を悪者だと罵っている時は、自分たちの無力さを噛み締めないでいいんですから」

「そんなわけないだろ! みんな本当は変わりたいって――立ち上がりたいって――」

「その思い上がりのせいで、犠牲の山を築いてきたと思っているんですか?」

「……それ……は……」

「最初から何もしなければ、こんなことにはならなかった。迷惑なんですよ。ラクサマラにとって本当の敵は、『灰かぶり』。正確にはドトリナスさん……あなたですよ。あなたが輪を乱したせいで、より領民達が苦しんだ。違いますか?」

 今のラクサマラの領民は陰口を叩くことだけで満足し、ただ行儀よくしている。そうすることによって、確かに均衡が保たれていた。

 平穏そのものだった。

 ドトリナスが――テロ行為をする前までは。

 だが、前のほうが良かったなんて思えるわけがない。様々な犠牲を払ってきたのだから。

 だが、犠牲を免罪符にしていたのではないのか。

 過ちを言い訳にして、全てをただの思い出にしていたんじゃないのか。

 昔だけじゃない。

 今も、ラクサマラの領民達は苦しんでいる。

 その元凶は、コレクベルトの政治がほとんどだろう。

 それでは、一部は。

 確かに存在する一部の犠牲の元凶を担っているのは、他ならぬドトリナス自身だった。それを否定することなどできない。

 ドトリナスのせいで、ラクサマラの領民の生活が凄惨なものになっている。

「だけど、それでも俺様はお前を――」

「――倒すですか? ですけどね、私を倒しても何も変わりませんよ。新たな領主を選出しても、粗を見つけて否定するに決まってます。下の人間は頂点に立つ人間をやっかみの対象としか見れない。そしてより多くの犠牲を出すことになる。それならば、今の状態が最善だとは思いませんか?」

 隕石にも似た火球が、破滅の音を立てながら加速しながら落下してくる。

 紙一重で避けていてはダメだ。

 まだ爆弾を生成しきれていない。

 こんなチャチャなものでは、あれほどの巨大な火球を相殺することなどできるはずもない。咄嗟の反応で、生成しきれていない不完全な爆弾を、放擲せずにそのまま爆発させる。

「……がっ!」

 痛みを覚悟したはずだったが、食いしばっていた歯の間から声が漏れる。爆弾の反動を利用して避けたはいいが、確実に寿命は削れている。

 ドトリナスが先程までいた場所には、グツグツと燃え滾っているマグマという死の河ができていた。

 《ポイニクス》が建物を壊してくれるおかげで、皮肉にも爆弾の材料が手に入りやすい。だが、それでも精製する速度は追いついていかない。

 そもそも事前に大量の爆弾を用意しておかなければ、ドトリナスはまともに戦闘すらできない。

 だからこそ、こうしてここまでおびき寄せた。

 逃げ続けているだけに見せかけ、『灰かぶり』の頭領として最後のドでかい花火をかましてやろうとした。

 だが――。

 悲しいかな、火力が圧倒的に足りない。

 上空を飛翔する《ポイニクス》相手に、有効打を浴びせられる生身の人間などいない。もしもドトリナスが爆弾を手ずから投擲し、風の壁を突き破ることができたとしても意味がない。

 遥か高くにいる《ポイニクス》に届くまでに、爆弾の威力は削ぎ落とされる。

 もう、どうしようもない。

「だから私は敢えて泥を被っている。偽悪者になりきっている。あなたのように綺麗な身でありながら、革命しようだなんて虫が良すぎると思いませんか」

 こいつは――コレクベルトは、ラクサマラの領民のことを実験動物だと称した。

 コレクベルトにとって、他人のことなんて使えるか、使えないか。利用できるか、できないか。

 その程度の認識しかないのだろう。

 そんな人間に、フロンティアの頂点に立つ権限なんてあるはずがない。

「私のように完璧に人間を支配下に置ける人間だからこそ、平穏なフロンティアを創造できるんです。そうですねぇ。……例えば、逃げ続けるあなたを捕まえる時に使った人質の効果も絶大だったでしょ?」

 『灰かぶり』構成メンバーの、屈託のない笑顔が次々に浮かんでくる。

 少数精鋭だったからこそ、一人一人に人間の顔を鮮明に脳裏に描くことができる。

 一抹の不安が胸を掠める。

 コレクベルトが、何かを企んでいるような声色を木霊させたからだ。

 だが、訊かずにはいられなかった。

 最悪のことを予想してしまっている。

 コレクベルトが、敵である『灰かぶり』に寛容な処置をするはずがない。

 動こうとする舌を捩じ伏せようとしたのだが、ずっとずっと、疑問に思っていたことが口から衝いて出てしまった。

「お前……あいつらをどうしたんだ 」

「分かりきったことを聞きますね。私は差別するのが嫌いなので――全員仲良く殺してあげましたよ」

 視界が明滅する。

 ガクガクと膝が震えて、立っているのですら困難。

 鉄の味がすると思っていたら、血が流れていた。無意識に唇を噛み締めていたらしい。だが、痛みなんて感じなくて、ただ全身の血が凍結したいるかのように寒い。

「ほら。どんな物語の結末だって、最後に悪は滅びて正義は勝ちますよね。だから、最後に残ったあなたという悪の芽も、ちゃんと摘み取ってあげますよ」

「お前……お前ぇえええっっっ!!」


「ようやく――心に決定的な隙が生まれましたね」


 無数の真空波がその身に刻まれる 。

 冷静に攻撃を避けることだけに徹していても、あれだけダメージは蓄積されていたのだ。

 捨て身の覚悟で挑めば、満身創痍になることはわかりきっていた。

「……そういえば。さっき夢がどうとか言ってましたよね。バカバカしい。夢や理想や野望は相手を選びます。夢は、私のような絶対的な支配者にこそふさわしい。あなた達ごときが夢を見て何かできましたか?」

 翼をもがれた羽虫のように、ドトリナスはジタバタともがく。

 もう、逃げることはおろか、立ち上がることもできない。

 悔しくて、悔しくて何度も土埃が巻き上がるが、ただそれだけ。

「叶える力もない人間が、夢なんて大層なものを持っていたって虚しいだけなんですよ」

 両方の瞳が涙で滲む。

 何も言い返せない。

 言い返せるだけの力なんて、ドトリナスにはない。

「結果なんて分かりきっているなら 、最初から何も考えずに上の人間に支配された方がいいですよ。そうすれば、長寿を全うできたはずなのに――ね」

 慈悲なきマグマの奔流が、雪崩れのように頭上で拡散する。

 避けられるかもしれない。

 もしかしたら、避けられないにしても致命傷を受けるだけで、即死しないで済むかも知れない。

 だが、そんな気力すらすっかり無くしてしまったドトリナスは、うつ伏せになったまま、鉛のように重くなってしまった肉体を動かそうとして――止めた。そして疲弊しきってように、静かに瞳を閉じる。

 完全に折れ切ってしまった心に浮かんだのは、一人の男。

 ウーゼニア――


「……お前に俺様の夢を託したぞ」


 閉じきった眼蓋の裏に広がるのは、完全なる闇。

 そんな果てない深淵の中、ドトリナス穏やかな表情のままでいた。だが――鼓膜を破らんばかりに、轟音が下から上へと何かがいきなり聳えるように響き渡る。

 なんだ、と瞳を開く。

 眼前にあったのは壁だ。

 草木を何重にも編みこんだかのような壁は、マグマを塞ぐ盾となって立ちはだかる。せき止められたマグマはドロドロとドトリナスとは別方向に流れていく。

 可燃性の高い草木は火の手が回りやすい。木は、マグマに対して本来は絶対に太刀打ちできない。だがそれを避雷針のように使って、ドトリナスの身へ降り注ぐのを防いだ。

 こんなことができるのは。

 こんなことを思いつくのは。

「なっ――――」

 まさか――と思いつつ首だけで振り向くと 、そこには最も今見たくない人間の顔があった。

 どうしてここまでドトリナスがボロボロになっているのか。

 それが分からないはずがない。

 もうとっくに駅までの包囲網は敷かれているだろう。だからもうあいつはこのラクサマラから逃げることなどできない。

 できることといったら、抗うことだけ。

 ここに来た奴を、コレクベルトが逃がすはずがない。

 もう、ここからはは決して敵わない強敵に対して、立ち向かうことしか許されない。

 丸っきり考えが読めない。

 底なしなバカの名前を、ドトリナスは咆哮する。


「ウーゼニア!!」


 ウーゼニアは低い声で呻くみたいに、

「ドトリナス。よくも俺を騙してくれたな……」

 遠いところから、悠然と歩いてくる。

 手に持っているのは、草木で創造したであろう弓矢だ。

 そうか。

 近づいてから防ぐのでは間に合わないと判断したウーゼニアは 、弓矢で種子を地面に打ち込んで壁を創造したのか。

 だが、剣や槍などと違って弓矢は素人に扱えるものではない。

 熟練者とは雲泥の差があるだろうが、剣や槍は初心者でも振るうことができる。だ が、弓矢に関しては素人が扱うことなんはできない。真っ直ぐな軌跡を描くことすら困難。しかも狙った地点に射出するなんて、初めて弓矢を持った人間にできるはずもない。

 少しでも種子の地点がズレていたら、今頃ドトリナスはお陀仏だったろう。きっとマグマに木の壁ごと溶かされていた。

 その全てを計算づくでやっていたのだとしても、弓矢を存分に扱えるだけの長時間の訓練が必要となるはずなのだ。

 だが、実際にウーゼニアは狙った場所を的確に射ることができている。

 戦闘に関してウーゼニアは、ずぶの素人どころじゃない。どうやら認識を改める必要がある。

 今時時代遅れな弓矢の使い手などいるはずもない。だからこそ、一歩敵も対応が遅れるだろう。一体、どういう意図で、どんな環境で、どんな指導者を持って、それほどまでの技術を会得したというのだろうか。

 だが、ウーゼニアはドトリナスが関心していることなど意に介さなかった。どうでもいいことを、堂々と言い放つ。

「よくよく考えたらお前に財布取られてるままだから、俺は海中電車に乗れないだろうがあああああ」

 一瞬、間が空く。

 ドトリナスは、惚けた顔をする。そして恐らくはフロンティア全土でナンバーワンバカを凝視する。

 だが、《ポイニクス》は追撃の手を休めてくれるわけもなく、攻撃の予備動作に入った。

 そしてそれは、ウーゼニアも同じ。

 立ち止まり、弓矢を射る格好になる。

 だが、何故わざわざ弓矢で戦うことを選んだのかが、分からない。

 走りながら弓矢を射ることもできるが、 弓矢なんてものはもともとは体を停止したまま射ることに特化した技術だ。命中精度が極端に下がるため、ウーゼニアも立ち止まったのだろうが、それだと《ポイニクス》の格好の餌食と成り果てる。

 だからこそ、弓矢の攻撃に固執するべきではない。

 一度うまくいったから、ウーゼニアは有頂天になって自らの武器の性質を忘れているのだ。

 やはり、素人に毛が生えた程度。戦い方がまるでなっていない。指摘してやろうとするが 、言葉をウーゼニアの心からの絶叫で遮断される。

「よく聞けよ、ドトリナス。お前が些細なことで絶望して色々口走ったみたいだから言っておきたいことがある。勝手に俺に夢を託すな誰かに夢を託して、何になるんだよ。それでお前は満足なのかよ。そんなの自分が諦めたい言い訳のために、この俺を利用してるだけなんじゃないのか」

「それは……」

 弓矢を構えて射る。

 《アルラウネ》によって構築された矢は、《ポイニクス》の風によって簡単に撃ち落とされる。

 やはり――と、顔を伏せようとした。

 が。

 地面に墜落した弓矢の矢には、付属していた種子があった。その種子は恐るべき速度で上空を昇っていく。

「ざっけんじゃねぇ!! 誰かに夢を託すなんてのはなあ、負け犬のやることななんだよ。どうせだったらなら、自分の夢は死ぬまで諦めるなよっっっ!!」

 いいか、と付け加えると、


「自分の夢を叶えられるのは――自分しかいないんだよ」


 突き上げるように伸びていく蔓。

 タイミングは完璧で、避けれないだけの不意打ちになった。いや、なるはずだった。だがそれは、ドトリナスを助ける前の話だ。一度見た技。防ぐのはそう難しくない。

 《ポイニクス》は羽を畳んで、蔓の衝撃を分散させる。

 自分のせいだ。

 ドトリナスを助けるために手札を見せなければ、せめて一太刀を浴びせることができた。勝てないにしても、手傷を負わせることぐらいはできたのだ。

「だから俺も……絶対にもう逃げ出さない」

「そうしてわざわざ死にに来たんですか。ご苦労なことですね」

 コレクベルトがククク、と鳩のような笑みを遠慮なく響かせる。

「いいや、違うな」

 だがウーゼニアは、そんなものものに動じない。


「――勝つためにきた」


 どうして直接地中を這うようにして蔓を展開しなかったのか、今更になって理解した。

 弓矢を使うより、そっちの方が自然だと思っていたから、どうしてかと内心首をひねっていた。

 何故かと言うと、地中を這っている間、多大なタイムラグが発生するから。それから《ポイニクス》との距離が離れれば離れているほど、どうしても技の威力が弱まってしまうからだろう。

 だから、種子を地面に打ち込んだ。そして遠隔操作で、蔓を星空に向かって昇らせたのだ。そこまで緻密なロジックを構築していたというのに 、全ては無駄になってしまった。

 だが、ウーゼニアを見やると、まだふてぶてしい笑みを噛み殺していなかった。

「悪いな、コレクベルト。そいつには種も仕掛けもあるんだよ」

 突き上げた蔓には、爆弾がセットされていた。

 油断しきっていた《ポイニクス》が羽を広げた瞬間、爆破の光が四散する。網膜を焼くような光に呑み込まれた《ポイニクス》は、甲高い悲鳴を上げる。

「馬鹿な、《ポイニクス》がッ―― 」

 コレクベルトが信じられないとい った声音で叫ぶ。

 絶対的な力を誇っていた《ポイニ クス》が、制空権を喪失する。下克上を果たしたかのように、闇の空を滑空していた霊鳥は、ドトリナス達と同じ土俵である地に落ちる。

「切り抜けられると思っているのか?」

 インターバルを終えたドトリナスは、ゆっくりと立ち上がるがふらつく。支えるようにして、横からウーゼニアが肩を貸してくれる。

「まあな。だけど……コレクベルト邸に忍び込んだ盗人が、運良くお前の爆弾まで盗んでくれていて助かったぜ」

 ウーゼニアが持っていた手提げには、確かにドトリナスの爆弾が詰め込まれていた。

 これで、ドトリナスも戦闘に参加できる。

 だが、それにしても、ウーゼニアは《精霊獣》を使役した対人戦の経験は、今までほとんどないはずだ。それは、技の粗さからも判断できる。

 にも関わらず、戦いの中での成長スピードは計り知れない。

 ウーゼニアは、今まで何かしらと戦っていたに違いない。その場所では才覚を発揮できなかった人間が、ある日何かのきっかけで始めたものが急激に上達することが稀にある。

 驚異的な罠察知能力。

 素人故に、動きが読みづらい。

 希少な弓矢の使い手。

 これらの要素が絡み合って、ある結論が導き出された。

 認めたくない。

 口が裂けても、本人には言えない。

 だが、確かにある事実が浮かび上がる。

「いや……やっぱり切り抜けるだけじゃ物足りないな……」

 こと、《精霊獣》戦に関してだけ言えば。

 紛れもなくウーゼニアは――


「この俺の気が済むまで――ボッコボコにしてやるよっ!」


 天才だ。

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