第16話 本田茜の心情

 私は、修学旅行の時に、石橋君を使わせてもらうことにした。

 使うといっても、色々手伝ってもらうだけ。そんなに悪いことをしているつもりはない。まぁ、少し計算くらいはしているけれど。

 石橋君とは昔に少し話したことがあるし、今回の修学旅行の準備で結構話したから、断られるなんてありえないと思っていた。そして実際断られなかった。

 ディズニーランドの時に私は「ごめんね。恥ずかしかったでしょ?」みたいなことを言ったけど、多分一番勘違いしてたのは石橋君なんだろうなあと思う。真っ赤になっちゃって、本当に面白い。

 私は颯のことが好きというより、ただ隣にいたいだけだ。でも、いつもひまりと一緒にいるから、この修学旅行はチャンスだと感じた。

 六本木ヒルズで2人になれて、本当にうれしかった。舞い上がった私は、何を血迷ったのか、告白をしてしまった。まあ、断られたわけだけど。きっと颯の言う好きな人は、ひまりの事だろう。

 分かっていたことだけど、やっぱりショックだった。そしてその後、やや強引に、石橋君にこれからの協力も要請した。


 問題はこれからだ。

 修学旅行が終わっていつもの学校生活が戻ってきた。

 私の策略はこうだった。

 きっと颯は少なからず気まずそうにする。私も少し気まずそうにして、いつも颯たちと一緒にいた時間を石橋君と一緒に過ごす。そしたら、一度自分に告白してきた人が何でほかの男と一緒にいるんだ! てなって、自分から私のところに来てくれるはず。そのあとにいっぱい話して、最終的に颯は私のもの! みたいな感じ。

 でも実際は違う。まず、颯は全く気まずそうにしてくれない。

 朝私が教室に入ったら、「おう本田、おはよう」だって! まさか朝挨拶をしてくれるとは思っていなかった少し、いやううん、すごくびっくりした。

 これは作戦変更の必要がある。この日の昼休み、颯と石橋君に会話をしてもらいたい。私はその間石橋君にくっついて会話に参加する。最近よく話しているみたいだし、石橋君に少しけしかければ、話してくれるはず。しかしどういうことか、この日石橋君は私につかまってくれなかった。昼休みは足立君と一緒にどこかに行ってしまった。

 作戦は失敗。

 もしかしたら修学旅行で石橋君を利用した罰かも、なんて思う。

 じゃあ、私が今一番すべきことって何?

 答えは簡単。石橋君との関係を修復することだ。

 修学旅行はいろいろお願いしちゃってごめんね、改めて、友達になろうってね。

 私は可愛いし性格もいいし、あの石橋君ならまた頬を赤らめていいよって言ってくれるはず。

 今回の作戦は明日決行。絶対に石橋君を捕まえて颯を私のものにして見せる……!

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